犬にアボカドを与えてはいけない!
犬にとってアボカドは非常に危険な食べ物であり、絶対に与えてはいけません。栄養価が高いことで知られるアボカドですが、犬には中毒症状や深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。その理由は、アボカドに含まれる成分や形状にあります。
ペルシンによる毒性
アボカドには「ペルシン」という殺菌作用のある毒素が含まれています。これは人間には無害ですが、犬にとっては有毒です。
ペルシンはアボカドの実だけでなく、種、皮、葉、茎などすべての部分に含まれており、犬が摂取すると嘔吐、下痢、呼吸困難といった中毒症状を引き起こす恐れがあります。
特に心臓や乳腺にダメージを与える可能性が指摘されており、命に関わる事態に発展しかねません。
高脂肪・高カロリーによる健康への影響
アボカドは「森のバター」と称されるほど脂肪分が非常に多い果物です。犬が高脂肪の食事を摂取すると、急性膵炎を引き起こすリスクが著しく高まります。
急性膵炎とは、膵臓から分泌される消化酵素が何らかの原因で活性化し、膵臓自体を消化し始めてしまう、激しい腹痛を伴う危険な病気です。
また、高カロリーであるため、習慣的に摂取すれば肥満の原因となり、関節疾患や心臓病など、さまざまな病気のリスクを高めます。
種や皮による物理的な危険性
アボカドの危険性は、成分だけではありません。その形状も犬にとって大きな脅威となります。
消化管閉塞
アボカドの中にある大きな種は、犬が誤って飲み込んでしまうと、食道や腸に詰まって消化管閉塞(腸閉塞)を引き起こす原因となります。特に、体が小さいトイ・プードルやチワワ、柴犬などの犬種では、種が詰まりやすく、命に関わる緊急事態に直結します。
腸閉塞を起こした場合、緊急の外科手術が必要になるケースも少なくありません。
窒息
大きな種を慌てて飲み込もうとして、喉に詰まらせてしまう危険性もあります。種が気道を塞いでしまえば、呼吸ができなくなり、短時間で命を落とすことになりかねません。
犬がアボカドを食べたときに現れる症状
犬がアボカドを食べてしまった場合、その症状は食べた量や部位、犬の個体差によって異なります。症状はすぐには現れないこともありますが、飼い主はどのような変化が起こりうるかを知っておくことが重要です。
軽度な症状
中毒の初期段階や、ごく少量を摂取した場合に見られる可能性がある症状です。しかし、これらの症状が見られた時点で、すでに体内で異常が起きているサインと捉えるべきです。
嘔吐・下痢
消化器系への刺激や中毒反応として、最も一般的に見られる症状が嘔吐や下痢です。食べたものを吐き出したり、普段と違う軟便や水様便をしたりします。
食欲不振・元気消失
いつもは食欲旺盛な愛犬がフードを食べなくなったり、ぐったりして動かなくなったります。おもちゃで誘っても遊ばないなど、普段との様子の違いに注意してください。
重度な症状
中毒が進行した場合や、感受性の高い犬が食べた場合には、命に関わる重篤な症状が現れることがあります。これらの症状が見られた場合は、一刻を争う緊急事態です。
呼吸困難
ペルシンの影響で心臓や肺に水が溜まる(胸水)ことで、呼吸が速くなったり、浅くなったり、苦しそうな様子を見せたりします。舌の色が紫色になるチアノーゼが見られることもあります。
痙攣(けいれん)
神経系に毒素が影響を及ぼした場合、体が硬直したり、ガクガクと震えたりする痙攣発作を起こすことがあります。
心不全に関連する症状
ペルシンは心筋にダメージを与える可能性があり、心不全を引き起こすことがあります。咳が出る、運動を嫌がる、お腹が膨らんできた(腹水)などの症状は、心機能が低下しているサインかもしれません。
症状が出るまでの時間
アボカドを食べてから症状が現れるまでの時間は、通常、数時間から24時間以内とされています。しかし、これはあくまで目安であり、犬の体重や年齢、健康状態によって大きく異なります。
症状が出ていなくても安心せず、食べた可能性がある時点ですぐに行動することが重要です。
犬がアボカドをどれくらい食べると危険?
「犬がアボカドをどれくらい食べたら危険なのか」という問いに対して、残念ながら「これくらいの量までなら安全」という明確な基準は存在しません。犬におけるペルシンの正確な中毒量は、科学的に確立されていないのが現状です。
そのため、「ほんのひとかけらだから大丈夫」「舐めただけだから問題ない」といった考えは非常に危険な誤解です。犬の体重、年齢、健康状態、アレルギーの有無、犬種(例:柴犬、チワワ、ダックスフンドなど)によって、毒素に対する感受性は大きく異なります。
過去に心臓や呼吸器に疾患を抱えている犬であれば、ごく少量でも重篤な症状を引き起こすリスクが高まります。アボカドは、量に関わらず犬にとっては危険な食べ物であると認識してください。
犬がアボカドを食べてしまった際の応急処置
万が一、愛犬がアボカドを口にしてしまったら、飼い主はパニックにならず、冷静に行動することが何よりも大切です。迅速かつ適切な対応が、愛犬の命を救うことに繋がります。
まず飼い主が行うべき初期対応
愛犬の誤食に気づいたら、すぐに以下の行動をとってください。
口の中に残っているものを取り除く
まずは愛犬の口を開け、アボカドのかけらが残っていないか確認してください。もし残っていれば、優しく指でかき出します。ただし、犬が興奮している場合は無理をせず、噛まれないように十分注意しましょう。
食べた量と時間を把握する
「いつ」「アボカドのどの部分(実、種、皮など)を」「どれくらいの量」食べたかを可能な限り正確に把握してください。
アボカドが入っていたパッケージや、食べ残しがあれば、それも保管しておきましょう。これらの情報は、獣医師が診断や治療方針を決めるうえで非常に重要になります。
すぐに動物病院へ連絡する
自己判断で様子を見ることは絶対にせず、すぐにかかりつけの動物病院、もしくは夜間救急対応の動物病院へ連絡してください。電話で状況を正確に伝え、獣医師の指示を仰ぎましょう。
動物病院へ連れて行くべきかの判断基準
原則として、アボカドを少量でも食べた、あるいは舐めた可能性がある時点で、すぐに動物病院に連絡し、受診することをお勧めします。
特に、種を丸ごと飲み込んでしまった場合や、すでに嘔吐や呼吸の異常など何らかの症状が出ている場合は、迷わず救急で病院へ向かってください。
自宅でやってはいけない危険な対応
善意のつもりの行動が、かえって愛犬を危険に晒すことがあります。以下の対応は絶対に行わないでください。
「無理に吐かせる」は絶対NG
塩やオキシドールなどを使って自宅で無理に吐かせることは非常に危険です。多量の塩分は犬に食塩中毒を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。
また、吐いたものが誤って気管に入ってしまう「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」のリスクもあり、新たな危険を生むだけです。催吐処置は必ず獣医師の管理下で行う必要があります。
「様子を見る」は絶対NG
症状がすぐに出ていなくても、体内で毒素の吸収が進んでいる可能性があります。「元気そうだから大丈夫だろう」と様子を見るという選択は、治療の開始を遅らせ、手遅れになるリスクを高めます。
動物病院で行われる主な治療
動物病院では、状況に応じて以下のような処置が行われます。
催吐処置(さいとしょち)
専用の薬剤を注射するなどして、胃の中にあるアボカドを吐き出させる処置です。食べてから時間が経っていない場合に有効です。
活性炭の投与
体内に吸収されつつある毒素を吸着し、便と一緒に体外へ排出させるために、医療用の活性炭を投与します。
点滴治療(静脈内輸液)
点滴によって体内の毒素の排出を促進させたり、嘔吐や下痢による脱水症状を改善したりします。全身状態を安定させるためにも重要な治療です。
内視鏡や外科手術
種が食道や胃、腸に詰まっている場合は、内視鏡を使って取り出すか、開腹手術が必要になることもあります。
診察・治療にかかる費用
診察や治療にかかる費用は、時間帯(夜間・救急は割増料金がかかります)や治療内容によって大きく異なります。催吐処置や血液検査などで数万円程度、入院や外科手術が必要になれば数十万円以上かかる場合もあります。日頃からペット保険への加入を検討しておくことも、万が一の備えになります。
犬にアボカドを食べさせない予防策
最も重要なのは、愛犬がアボカドを口にする機会を完全になくすことです。飼い主の徹底した管理が、事故を未然に防ぎます。
拾い食いを防止するしつけを行う
日頃から「待て」や、口にくわえたものを離させる「ちょうだい」「放せ」といったコマンドを教えておくことが有効です。床に落ちたものを勝手に食べないように訓練することで、アボカドに限らず様々な誤食のリスクを減らすことができます。
アボガドの家庭内での保管・管理を徹底する
アボカドは、犬の届かない食器棚の上や、扉が閉まる戸棚、冷蔵庫の中など、安全な場所に保管してください。調理中や食事中に、犬がキッチンやダイニングテーブルに近づかないように、ペットゲートなどを活用するのも良い方法です。
また、アボカドの皮や種を捨てたゴミ箱は、必ず蓋つきのものを使用し、犬が漁れないように管理を徹底しましょう。
アボカドを「観葉植物」として育てている場合も対策が必要
もしご家庭の庭にアボカドの木を植えている場合や、観葉植物として育てている場合は、犬がその場所に立ち入れないように柵を設置するなどの対策が必要です。落ちている実や葉も、犬が口にする前にこまめに片付けるように心がけてください。
まとめ
アボカドは、犬に対して毒性を持つペルシンを含み、高脂肪による急性膵炎や、種による窒息・消化管閉塞など、多くの危険をはらんでいます。犬における安全な摂取量はなく、「少量でも危険」と認識することが重要です。
飼い主による徹底した管理で、愛犬がアボカドに接触する機会をなくすことが最善の予防策です。
もし万が一、愛犬がアボカドを食べてしまった場合は、自己判断で様子を見たり、危険な民間療法を試したりせず、直ちに動物病院へ連絡し、獣医師の指示に従ってください。飼い主の迅速で正しい判断と行動が、かけがえのない愛犬の命を守ります。