犬が食べていい野菜はあるの?
犬の祖先であるオオカミは肉食動物ですが、犬は人間と長く生活するうちに雑食になったと考えられています。
しかし、その一方で体のつくりは、動物性タンパク質を消化・吸収することを重視した肉食動物の性質を多分に残しています。
犬が食べもいい野菜はあるが必要というわけではない
犬は野菜を与えられると食べますが、草食動物や人間などに比べて腸が短いので、犬が食べてもいいものは人間と同じように考えることはできません。
一般的に、犬は栄養バランスの良い「総合栄養食」のドッグフードを食べていれば、野菜を食べる必要はないとされています。
「総合栄養食」のドッグフードには、成長段階に合わせて健康が維持できるように基準が設けられており、犬に必要な栄養分はすべて含まれているからです。
犬にとって、最も重要な栄養素であるタンパク質をしっかりと摂取するためには、肉食寄りの食事が必要です。しかし、肉や魚だけでは、食物繊維やその他の必要な栄養素を摂ることはできません。
犬に野菜を与えることにメリットはある
犬のご飯を手づくりする場合は、野菜も加えないと食物繊維やその他野菜に含まれる栄養素を摂ることができないのです。また、市販のドッグフードの中にも野菜が不足しているものも多数あります。
野菜には、腸内環境を良好にして老廃物や有害物質を吸着し排出する効果や、腸壁を刺激して便秘を予防、解消する効果があります。
さらに、消化されにくいので胃に長く留まり、腹持ちがよいことでダイエット効果も期待できる上に、ガン予防にも役立つといわれています。
その他の様々な病気を予防する効果もあり、健康を維持するために野菜はとても役に立ちます。
色々な研究報告の中には、野菜をたくさん食べている犬の方が、長生きするという報告もあるようです。このような点から、犬に野菜を与えることには、少なからずメリットがあると考えられます。
野菜はトッピング、おやつ程度が基本
とは言え、犬の体の構造上、野菜に含まれる食物繊維や水分により、与え過ぎると下痢をしたり栄養が偏ったりしてしまう場合がありますので、与える時には注意しなければなりません。
肉食を中心にバランスよく野菜を与えることが大切で、一度に与える量を考えながら、普段のフードのトッピングやおやつとして与えるのが理想的だといえるでしょう。
また、内臓が未発達の子犬に与える時には、さらに注意が必要で、子犬が食べてもいい野菜かどうかをよく確認して与えることが大切です。
では、犬が食べられる野菜には、どんなものがあるのでしょうか?
犬が食べていい野菜10選
人間にとって良い野菜でも、犬にとっては好ましくない野菜もあります。また、調理の仕方によって、与えることができたり、できなかったりする場合もあります。
次に、一般的に犬が食べてもいいといわれている野菜を挙げてみました。
ブロッコリー
ブロッコリーには、体の酸化を防ぐ、免疫力を高める、などの効果が高いビタミンCがたっぷりと含まれています。
また、野菜でありながらタンパク質も豊富で、100gあたりに含まれるタンパク質の量は、絹ごし豆腐を上回るほどです。タンパク質は、筋肉を作り、代謝を上げ、ホルモンや酵素、抗体などの成分にもなる栄養素です。
さらに、食物繊維も多く含むため便秘解消に役立ちますし、糖質や脂質が少なく食感もあるので、肥満気味の犬にはダイエット効果も期待できます。
キャベツ
キャベツには、胃粘膜を修復し消化吸収を助けるビタミンU(キャベジン)が豊富に含まれていますので、胃腸が弱い犬が食べてもいい野菜です。
他にも、老犬や成長期の犬に不足しがちな栄養素といわれるビタミンCやビタミンKも含まれています。ビタミンCには、免疫力を高めたりストレスへの抵抗力を強めたりする働きがあります。
さらに、食物繊維も豊富に含まれており、便秘の予防や改善、ダイエット効果も期待できますが、犬に与える時には消化不良に注意しましょう。
キャベツには、体内で変化して甲状腺機能の働きの邪魔をするグルコシノートという成分が含まれていますので、健康な犬に与える場合は気にする必要はありませんが、甲状腺疾患のある犬には、キャベツを与えてはいけません。
人参
英名のCarrot(キャロット)が語源となるほど、人参には多くのβ-カロテンが含まれています。
β-カロテンが変換されたビタミンAには、動脈硬化を予防する効果や免疫力を高めるなどの効果があります。β-カロテンに加えてルテインの効果で、目の健康を守ってくれるので、人参は目にいい食べ物だといえます。
また、人参に含まれるカリウムは、余分なナトリウムを体外に排泄するので、高血圧予防の効果が期待できます。その他にも、ペクチンという食物繊維のはたらきで、腸の調子を整え便秘を解消することができます。
かぼちゃ
かぼちゃに含まれるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEには、免疫力を高め、抗酸化作用で老化を防止する効果があります。特に、ビタミンCは、バナナの約2.7倍、りんごの約11倍も含まれています。
その他にも、むくみ改善に効果があるカリウムも多く含まれており、その量は野菜や果物の中でもトップクラスです。また、整腸作用のある食物繊維も豊富に含まれているので、便秘の改善にも役立ちます。
かぼちゃの皮には、果肉部分以上にβ-カロテンが多く含まれているといわれていますが、犬に食べさせる時には、消化しやすいように、細かく刻んだり柔らかく煮るなどの工夫が必要です。
種子にも、漢方薬に使われるほどの栄養素が詰まっていますが、喉に詰まるようなことがあっては大変ですので、犬に与えるのはおすすめできません。
大根
大根には、デンプンを分解する酵素であるアミラーゼ(ジアスターゼ)が含まれており、食べた物の消化を促進し、胸やけ、胃もたれを防ぎます。食物繊維も多く含まれているため、腸内細菌の働きを活発にする効果が期待できます。
大根は、すりおろすことで大根おろしの辛み成分であるイソチオシアネートが生成されます。このイソチオシアネートの抗酸化作用により、活性酸素の働きが抑制され、動脈硬化を予防する効果が期待できます。
きゅうり
約95%が水分で身体を冷やす作用があるきゅうりは、水分補給として最適な食材です。
「世界一栄養のない野菜」としてギネスに認定されているきゅうりですが、脂肪分解酵素の「ホスホリパーゼ」、むくみ解消に効果的な「カリウム」、血流をスムースにする「シトルリン」、腸内環境を整える食物繊維など、様々な栄養素が含まれているのです。
その他にも、血液をサラサラにする効果が期待できる「ピラジン」、苦み成分で抗がん作用が期待できる「ククルビタシン」などの栄養素が含まれています。
さつまいも
さつまいもには、腸内環境を整える水溶性食物繊維と、腸のぜんどう運動を促す不溶性食物繊維がバランスよく含まれている上に、生のさつまいもをカットした時に出る白い汁「ヤラピン」の効果もあり、便秘改善に役立ちます。
また、ビタミンCやビタミンE、β-カロテン、ポリフェノールの一種である「クロロゲン酸」も含まれており、これらの成分の抗酸化作用で、体の中をサビ付かせないようにする効果が期待できます。
皮にも栄養素がたくさん詰まっていますが、下痢や消化不良の原因になる可能性がありますので、皮を取り除き必ず加熱して与えましょう。
注意が必要なのは、腎機能に障害がある犬や利尿剤を服用している犬の場合です。さつまいもに含まれているカリウムは体内に留まりやすいので、カリウムの過多や不整脈の原因となる可能性があります。
腎臓に問題を抱える犬には、さつまいもを与えないほうが無難です。
白菜
白菜には、病気に対する抵抗力を増してくれるビタミンCや、むくみや血圧を下げる効果があるカリウム、便秘を改善する食物繊維が含まれています。
また、非常に低カロリーで、糖質も100gあたり2gと少ないため、肥満気味の犬にはダイエット効果が期待できます。
ビタミンCは熱に弱くカリウムは水に溶けやすいので、栄養素を効率的に摂るためには、生で食べるのが一番です。白菜の中心部分は柔らかくて甘みがあるので、生で食べるのにピッタリです。
レタス
レタスは、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維などをバランスよく含んでいる野菜です。特にビタミンK、葉酸などのビタミンB群、カリウムなどを多く含んでいます。
一般的に食べられている玉レタスには、「第6の栄養素」ともいわれている食物繊維が100gあたり1.1g含まれています。
食物繊維には、大腸を刺激してぜんどう運動を活発にしたり、糖質の吸収を緩やかにして食後の血糖値の上昇を抑えるはたらきがあります。
低カロリーなので、肥満気味の犬におすすめの野菜です。
カリフラワー
カリフラワーは、ブロッコリーやキャベツと同じアブラナ科の野菜で、ブロッコリーが突然変異したものといわれています。
カリフラワーには、ビタミンCや食物繊維の他に、貧血の予防に効果がある鉄や、高血圧やむくみ解消に効果があるカリウムも多く含まれています。
茹でることでアクが出るカリフラワーですが、このアクはポリフェノールの一種ですので、食べても問題ありません。
ビタミンCやカリウムの消失を防ぐために、カリフラワーの調理には、多少のえぐみや変色は見られますが、電子レンジを利用するのがおすすめです。
犬が食べてはいけない野菜4選
犬が食べてはいけない野菜の中には、健康を害するどころか、命の危険を招くものもありますので、食べてはいけないものは、しっかりと把握しておく必要があります。
ネギ類・にんにく
ご存知の方も多いと思いますが、犬が食べてはいけない野菜の代表に挙げられるのが、タマネギ、長ネギ、にらなどのネギ類とにんにくです。
これらはユリ科の食物で、血液中の赤血球を壊し貧血を引き起こす成分が含まれており、最悪の場合、死に至ることもありますので要注意です。
中でも、にらはごく少量でもネギ中毒をおこす危険性が高い食べ物なので、絶対に食べさせてはいけません。また、これらを含む加工食品や調理品も与えないように注意しましょう。
アボカド
栄養価の高いアボカドですが、葉や種子、皮、果肉に含まれる殺菌作用のある成分「ペルシン」による中毒で、下痢や嘔吐をおこすことがあります。アボカドを食べてから、1〜3日後に症状が出ることが多いので注意しましょう。
また、高脂肪でカロリーも高く、肥満や糖尿病の原因となる可能性が高いですし、大きくて固い種を食道に詰まらせてしまう恐れもあります。
その他にも、アレルギーや飲み込んでしまった種子による腸閉塞などの心配もありますので、アボカドは犬に食べさせてはいけない食べ物です。
アロエ
人間にとっては、胃腸の調子を整えたり火傷の治療に使ったりと、大活躍してくれるアロエも、犬にとっては危険な食べ物です。
アロエに含まれるサポニン、バルバロイン、アントラキノンといった成分が、下痢や嘔吐、腸の炎症を起こす原因となり、ひどい場合は、腎炎になり血尿や貧血を起こすこともあります。
中には、アロエでアレルギー症状を起こし、皮膚炎や下痢、嘔吐などの消化器症状を起こす犬もいますので注意が必要です。
アロエ成分の含まれたシャンプーやクリームの中で、犬用に作られているものは、危険な成分を取り除いてあるので使用しても問題ありませんが、誤って舐めたり飲み込んだりしては大変ですので、それらを使用する時は充分に注意しましょう。
未熟なトマト
意外に知られていないのが、トマトに関する事柄です。
完熟のトマトは犬が食べても問題ありませんが、未熟な青いトマトや、トマトのヘタ、茎、葉などには、アルカロイド、トマチンなどの中毒性物質が含まれているため食べさせてはいけません。
最近、店先でよく見かけるカラフルなミニトマトの色の違いは、皮や果肉に含まれる色素の違いで、栄養素はほぼ同じです。
しかし、黒色のミニトマトには、ブルーベリーに含まれる「アントシアニン」が含まれていますし、緑色のミニトマトには「トマチン」という成分が含まれているなど、犬にとって中毒症状を引き起こす可能性がある成分が含まれていることもあります。
犬にトマトを与えるなら「ヘタ、茎、葉を取り除いた赤いトマト」と覚えておきましょう。
犬が食べていい野菜を与える時の注意点
それぞれの野菜が持つ効能を最大限に活かした与え方ができると、犬の健康を維持するのに役立ちます。
その反面、犬が食べてはいけない野菜を与えるなど、与え方を間違えると、健康効果どころか思わぬ危険を招いてしまいます。犬に野菜を与えるときには、次の点に注意しましょう。
味つけはせず細かく刻んで消化しやすい形状に調理する
ご飯やおやつを食べる時に、ほとんど噛まずに丸飲みをしてしまう犬は少なくありません。
それは、犬が唾液の中に炭水化物を分解する消化酵素「アミラーゼ」を持っていないからです。さらに、犬は腸が短いので、食物繊維を消化するのが得意ではありません。
そのため、犬に野菜を与える時は、胃腸に負担がかからないように、すりつぶす、ミキサーなどで細かく砕く、茹で野菜を使うなど、調理の仕方に工夫をする必要があります。
人間の食事でも、あまり味の濃いものは体に良くないといわれますが、その点は犬についても同様で、味付けによる塩分や糖分の取り過ぎは避けなければいけません。
また、種子、皮、茎、芯などは、消化しにくく喉や食道に詰まったり、中毒を起こす物質を含んでいたりする場合もありますので、あらかじめきちんと取り除いておきましょう。
主食にそえるおやつやトッピングとして与える
前述したように、犬の主食は「総合栄養食」のドッグフードを与えるのが一番良いといわれていますが、最近では、愛犬のためにご飯を手作りされる方が増えてきています。
ご飯を手作りする場合には、主食は脂質を抑えた肉類にし、野菜は添える程度の量(主食と野菜がおよそ3:1の割合)にします。
食物繊維を摂りすぎると、ガスが溜まりやすくなるので、摂り過ぎには注意しなければなりません。
総合栄養食のドッグフードに野菜をトッピングする場合は、栄養バランスが崩れてしまわないように食事量の10~20%以内の分量にします。
犬が好きだからと与え過ぎてしまうと、かえって犬の健康を損ねかねません。
雑食といわれる犬ですが、限りなく肉食に近い動物であることを念頭において、食欲が無い時などに参考にしてみましょう。
病気を抱える犬は獣医師に相談してから与える
病院にかかっている愛犬に野菜を与える場合は、必ず事前に獣医さんに相談しましょう。病気の種類や服用している薬によっては、野菜を食べさせてはいけない場合があります。
腎臓病、肝臓病、心臓を患っている犬やそれらの機能が衰えている犬、シニア犬や子犬には、特に注意が必要です。また、現在は健康体であってもそれらの既往歴がある場合も、注意しましょう。
食物アレルギーに注意する
人間と同じように犬にもアレルギーがあり、犬全体の約40%が何らかのアレルギーを持つといわれています。
野菜を与える時は、最初はごく少量ずつ与えながら様子をよく観察し、痒み、湿疹、下痢、嘔吐などの症状が出ないようであれば、徐々に与える量を増やしていくようにしましょう。
個体差はありますが、比較的アレルギーが出やすい野菜には、大豆、小麦、山芋、じゃがいも、人参、トマト、きゅうり、ナス、ピーマン、セロリ、などがあります。
「ある日突然アレルギーを発症した」ということはよくあることですので、野菜を与える時には、毎回よく様子を観察しておく必要があります。
野菜ジュースは与えない
市販の野菜ジュースは、あくまでも人間が飲むことを考えて作られている加工品ですので、塩分や糖分が多過ぎたり、添加物が入っていたりすることがあるため、犬には与えない方がよいでしょう。
どうしてもジュースを与えたい場合は、ご家庭で野菜だけを使った手作りジュースを作ってあげましょう。
まとめ
かつては肉食動物であった犬も、時代とともに雑食となり、少しずつ野菜も消化できるように変化してきているようです。
しかし、犬種や年齢、また個体ごとにその変化の状態は様々で、一般的に犬にとっていいといわれている野菜でも、愛犬の体質や好みに合うかどうかは分かりません。
そのため、その野菜が愛犬に合うかどうかは、それぞれの飼い主さんが見極めてあげることが大切です。
野菜には様々な栄養素が含まれていますので、種類や量をよく考え、適切な方法で与えると、犬の健康を守るのに役立てることができますが、野菜を与える時には、充分に注意する必要があります。
せっかく健康のために与えた野菜も、その与え方を間違うと、愛犬の健康を害しかねません。愛犬の健康のためにも、適切な野菜を、適切な方法で、適切な量だけ与えるようにしましょう。