犬がワインを飲むと危険な理由
愛犬がワインに興味を示すことがあっても、決して与えてはいけません。人間が問題なく楽しめる量でも、犬にとっては非常に危険です。
犬がワインを飲むと深刻な健康被害が起こりやすい理由を理解し、飼い主が日頃から注意を徹底する必要があります。
アルコール代謝が遅く中毒リスクが高い
犬は人間よりアルコールを代謝する酵素の活性が非常に低く、体内でアルコールを迅速に分解することができません。その結果、摂取したアルコールは毒素として長時間体内に留まり、肝臓や腎臓、神経系に深刻なダメージを与える恐れがあります。
ぶどう成分が急性腎不全を招く
ワインには、原料であるぶどうの成分が含まれています。ぶどうに含まれる未知の物質が犬に急性腎不全を引き起こす危険性があることは、多数の症例で確認されています。
加熱や加工をしてもこの危険な成分は消えないため、ぶどうを含む製品全般を犬に与えてはいけません。
料理やノンアル製品も安全ではない
ワインを料理に使って加熱しても、アルコールが完全に除去されるわけではありません。微量でも残存するアルコールや、ぶどう由来の成分による中毒の危険性は消えません。
ノンアルコールワインの場合でも、日本の基準では1%未満、海外では0.5%未満のアルコールが残存する可能性があり、犬には危険です。
わずかな量でも致命的リスクがある
犬の体重は人間に比べて小さく、体の大きさに比例して危険性が高まります。特に小型犬の場合はわずかな量の誤飲でも、重篤な中毒症状や命にかかわる事態に至るリスクがあります。
「舐めただけだから」と安易に考えず、ワインやぶどうを含む食品を犬の手の届かない場所に保管するよう徹底しましょう。
犬がワインを誤飲した際の応急処置
愛犬が誤ってワインを飲んでしまった場合、飼い主の迅速で適切な行動が命を守る鍵となります。焦らず落ち着いて状況を正確に把握し、早急に動物病院へ連絡をとりましょう。
冷静に状況を把握し記録する
最初に飼い主自身が冷静になることが大切です。いつ、どの種類のワインを、どのくらいの量を飲んだかを確認し、愛犬の様子や体調の変化を観察します。
特に「犬の年齢・犬種・体重」「持病や服薬の有無」「ワインの種類と摂取量」「誤飲してからの経過時間」「現在の症状の有無」などの情報を明確に記録してください。
症状がなくても動物病院にすぐ連絡する
症状が見られなくても自己判断で様子を見るのは非常に危険です。アルコールやぶどうによる中毒症状は遅れて現れることがあります。症状の有無に関わらず、直ちに動物病院または救急対応可能な動物病院へ連絡し、指示を仰ぎましょう。
夜間や休日など診療時間外の場合は、地域の獣医師会や夜間救急対応の病院を検索し、早めに対応してください。
自宅で吐かせる処置は危険
飼い主の判断で無理やり吐かせる行為は危険です。吐いたものが気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。
塩水や大量の水を飲ませるなどの自己流処置も絶対に避けてください。催吐処置は必ず獣医師の指示のもとで行う必要があります。
動物病院での主な治療
動物病院では状況に応じて催吐処置(嘔吐誘発)や、活性炭による毒素の吸着、輸液療法(点滴)などが行われます。重症の場合は血液透析など高度医療が必要となることもあるため、できる限り早く獣医師に診てもらうことが重要です。
犬がワインを飲んだ際に起こる中毒症状
犬がワインを飲むと、アルコール中毒とぶどう中毒の二つのリスクが同時に生じる恐れがあります。アルコールによる症状は比較的短時間で現れますが、ぶどうによる症状は24〜72時間後に現れることもあります。
症状の出方を把握して早期発見につなげてください。
ふらつきや嘔吐など初期サイン
アルコールによる中毒症状は、摂取後30分〜1時間程度で現れることが多く見られます。
初期症状としては、ふらつき、元気の消失、嘔吐、下痢、興奮状態、意識レベルの低下などが挙げられます。これらはアルコールが犬の神経系や消化器系に影響を与えているサインです。
体温低下や痙攣・昏睡の危険
初期症状が見られた段階で適切な処置をせず放置すると、症状が進行して非常に危険な状態に陥ります。
体温や血糖値が著しく低下し、呼吸が乱れたり遅くなったりします。さらには脳が影響を受けて痙攣や意識障害、最悪の場合は昏睡状態にまで至ります。こうした状態は命に関わるため、速やかな治療が必要です。
数日後に急性腎不全の症状
ワインに含まれるぶどう成分は、摂取から24〜72時間後に急性腎不全を引き起こす可能性があります。
尿量が著しく減少したり完全に出なくなったり、嘔吐を繰り返したり、食欲が著しく低下したりする症状が典型的です。また口臭がひどくなることもあります。これらの症状が見られた場合、緊急的な医療措置が必要です。
犬がワインを飲んでしまった場合の致死量
犬がワインを口にした場合、致死量となる基準は純アルコール量(エタノール)で体重1kgあたり約5.5~7.9gとされています。しかし、個体差があるため、これより少ない量でも命にかかわる危険性があります。
また、致死量に達しなくても、重篤な症状や後遺症が残る可能性が高く、特に小型犬では少量でも深刻な影響を受けることを理解しておきましょう。
体重別・ワインの致死量目安
犬種(体重例) | 純アルコール致死量の目安 | 該当するワイン量 (度数12%の場合) |
---|---|---|
チワワ(2kg) | 約11g | 約115ml |
柴犬(10kg) | 約55g | 約573ml |
ゴールデン・レトリバー(30kg) | 約165g | 約1,719ml |
※計算式:純アルコール量(g)=ワイン量(ml)×アルコール度数(%)×0.789(エタノール比重)
※上記は理論値であり、実際にはこれより少ない量でも重篤な症状が出ることがあります。
小型犬はわずかな誤飲で致命的
犬のサイズが小さくなるほど危険性は高まります。特にチワワやトイプードルなどの小型犬では、床にこぼれたワインを数回舐めただけでも重篤な症状が現れる可能性があります。
致死量に達しない量であっても神経や臓器に重大な損傷を与え、後遺症が残ることがありますので、ワインは絶対に犬の届かない場所で保管する必要があります。
肝臓や腎臓に長期的な障害が残る
致死量に至らない場合でも、アルコールによって肝臓や腎臓が急激に損傷を受けることがあります。
一度受けた臓器の損傷は完全には回復しない場合もあり、慢性的な肝不全や腎不全など後遺症として残る可能性があります。早期に治療を受けても、健康状態に長期的な影響を及ぼすことがあるため注意が必要です。
まとめ
ワインに含まれるアルコールやぶどう成分は犬にとって非常に危険です。犬は人間と比べてアルコールを効率的に分解できず、少量でも深刻な中毒症状を起こします。
また、ぶどうは急性腎不全の原因となり、加熱調理やノンアルコール製品でも毒性が残ります。誤飲した場合は絶対に自己判断で吐かせたりせず、すぐに動物病院に連絡し獣医師の指示を受けてください。
飼い主が適切な知識を持ち、愛犬をワインから守ることが大切です。