犬が胡椒を食べても大丈夫?
犬に胡椒を食べさせてはいけません!
もし、犬に胡椒で少し味付けしたチキンを食べても大丈夫か?と聞かれたら、きっと微量なら大丈夫じゃないの?と考える方が多いでしょう。
確かに少量の胡椒であれば大丈夫でしょうが、基本的に犬に胡椒は食べさせてはいけません。中毒を起こすような成分は入っていませんが、間違って多くを摂取してしまうと、犬の胃腸にとって強すぎる刺激を与えてしまう可能性があります。人間でも、香辛料を摂り過ぎて下痢を起こす場合があったり、少量でも下痢や腹痛を起こす体質の人もいます。
私たち人間が日常でさまざまな料理に使っている胡椒には、とても強い香りと辛みがあり、それが強い刺激となるため犬に与えてはいけない食べ物のひとつになっています。
大昔から犬の祖先のオオカミや野生の犬科動物は、味付けや加工をした食べ物は摂取していません。胡椒に限らず、塩やソースの効いた食べ物を間違って大量に食べてしまったり、常習的に食べさせたりするのはカロリー過多・高脂質過多となり栄養バランスが崩れます。場合によっては寿命を縮めることになる病気につながります。
舐めた程度であれば影響は少ない
ほんのちょっと、胡椒で味付けしたお肉を食べてしまった、あるいは舐めてしまった場合などは、影響がない事が多いので大丈夫ですが、その後の犬の様子をよく観察してあげてください。
それに、胡椒が使われているということは、他の調味料も使って味付けされていることが多いはずです。犬は塩味をあまり感じないとされていますが、味付けしたお肉はやはり犬にとっても美味しいのかもしれませんし、普段食べない物を食べることは嬉しいことでしょう。人間の食べ物をよく与えていると、普段の餌を食べなくなってしまう可能性もあるのです。ですから、普段から味の付いた人間の食べ物は与えない事も大切です。
ほんの数十年前は人間の残した味噌汁や残飯などを犬にあたり前に食べさせている時代もありましたが、ドッグフードが日本でも普及し獣医療も発達してから、犬の寿命はだんだんと長くなってきています。昔はあたり前だったから問題はない、ということはないのです。人でも犬でも健康的な食生活を送っていないのに長生きする場合もありますが、健康に長生きして欲しいのなら、やはり良い食生活を送らせてあげることが重要です。犬と人間は食性が異なるので、きちんと犬の食性を考えたフードを与えるのが、あなたの愛犬が良い食生活を送るのに必要なことです。
また、アレルギーについてですが、人では胡椒によって口腔アレルギー症候群(OAS)や一般的な食物アレルギーとは異なる遅延型食物アレルギーを起こすことがあるそうです。犬も胡椒によってそういったアレルギーを起こすかどうかは分かりませんが、どちらにしても胡椒は犬にとって必要なものでも食べて良いものでもありませんので、与えないようにしましょう。
子犬ではより注意!
子犬は、好奇心旺盛で何にでも興味津々で近づいていったりかじりついて遊んだりしますので、胡椒ももちろんそうですが、人間の食事や子犬が口にしたら困るものを子犬の口や手が届くところに置いておくのはやめましょう。
成犬であったら、胡椒の香りや味を嫌がって少ししか口にしないものでも、子犬であれば好奇心が勝って大量に口にしてしまうかもしれません。テーブルの上でも子犬の大きさや性格によっては、まさか届かないだろうと思うところにでもイスから上ったりなどして、色々と食べてしまう子もいます。
子犬は体が小さい分、食べてしまったものが大きな影響を及ぼすことがあります。子犬の安全を守るためには、日常的な管理が必要です。
犬が胡椒を食べた時に引き起こされる症状
胡椒を直に嗅いだら人間でもくしゃみが止まらなくなるということがありますよね。それは胡椒に含まれるピペリンという成分が鼻にある神経を刺激して起こります。犬がこしょうに鼻を近づけた場合も、同じようにくしゃみをすることがあると考えられるでしょう。
くしゃみの他に、もし犬が胡椒を大量に食べてしまった場合、どのような症状が出る可能性があるのでしょうか。
- 元気がない
- 胸やけ、食欲不振
- 消化不良、下痢
- 腹痛
- お腹が異常に鳴る
- 嘔吐
- 気道の炎症(大量摂取の場合)
- 直腸結腸の炎症による痔(大量摂取の場合)
どれも、それなりの量を食べてしまった場合に起こる可能性があると考えられます。ほんの少量を食べただけでは問題がないことが多いので、胡椒のついたお肉を少し食べてしまったなどの場合には、無理に吐かせたりせずに様子を見ましょう。
下痢や腹痛などの消化器症状は、胡椒が胃腸の粘膜を刺激したことによるものです。
テーブルコショーの瓶を倒して中身をばらまいてしまったところに犬がにおいを嗅ぎにきた場合など、パウダー状になった胡椒を大量に鼻から吸い込んでしまうことがあると、胡椒が気道粘膜を強く刺激し、呼吸に影響を与える可能性もあります。胡椒に限らず、パウダー状のものを吸い込んだ場合はその粒子が気道を刺激したり、肺にまで到達して炎症を引き起こすことがあります。
また、胡椒を大量に口から摂取したことにより直腸・結腸の粘膜を刺激した場合、痔になる事もあると言われています。犬がどれだけの量の胡椒を食べてしまったら危険なのかは、個体や体重によっても違うので明らかではありませんが、やはり胡椒は犬には必要のないものですし、犬の体に悪影響を及ぼす可能性がありますので、犬には胡椒を与えず、誤飲しない環境をつくる事が大切です。
犬が胡椒を食べてしまった時の対処法
それでは、注意していても、もし犬が胡椒を食べてしまった時、どう対処すればよいのでしょうか?
犬の様子を観察し見守る
胡椒をほんの少しだけ食べてしまったという場合は、まず、そのあとの犬の様子を観察します。呼吸や食事量、便の状態、普段と違うことをしていないかチェックして見守りましょう。
少しでもおかしな様子を発見したら獣医師さんに診てもらいましょう。
嘔吐や下痢などの症状がでたら動物病院へ!
多くの量を食べてしまった場合、上記の症状がでてくる可能性があります。原因は何であれ、下痢や嘔吐が続くと脱水の危険がありますので、すぐに獣医師さんに診てもらいましょう。
無理に吐かせるのは誤嚥性肺炎を起こす危険性がありますので、獣医師さんが今すぐに吐かせる指示をしてきた緊急の場合のみ、指示にしたがって対処しましょう。いつ、どのくらいの量を食べたのかを獣医師に伝えられるようにしておくと、より早く適切に対応してもらえるでしょう。
胡椒以外の香辛料
柚子胡椒
うどんやそば、鍋料理などにかけると、柚子の柑橘系の香りとぴりっとした辛味が美味しい柚子胡椒ですが、こちらも犬に与えてはいけません。
犬はそもそも柑橘系の強いにおいも苦手ですし、柚子は柑橘類だからビタミンがありそうなどと犬に与えるのは絶対にいけません。柚子胡椒には大量の塩が含まれているので、犬が食べてしまうと塩分の過剰摂取になる可能性があります。また、柚子胡椒の名前にある「胡椒」とは青唐辛子のことです(九州の方言で、胡椒とは唐辛子のことです)。唐辛子は胡椒よりも刺激が強く、柚子の香りとともに犬自身が好まないでしょう。もしある程度の量を食べてしまった場合には、強い塩分や唐辛子の刺激によって胃腸の不調、下痢、嘔吐などを起こすと考えられます。
唐辛子や山椒
胡椒以外にも香辛料と呼ばれるものにはたくさんの種類があります。唐辛子や山椒も人間の食事を美味しくするのにかかせない香辛料です。しかし、唐辛子の辛味成分である「カプサイシン」は人間の場合と同様に神経を刺激します。
また、チリパウダーは数種の香辛料やハーブを混ぜたものですが、「カプサイシン」やにんにくが含まれていますので、犬が食べてしまうと胃や腸を悪くし下痢をしてしまうことがあるでしょう。
山椒に含まれる「サンショオール」という辛味成分は唐辛子の辛味とは味が異なり舌がしびれる辛さがあり、こちらも犬にとっては不要な刺激を与えるものです。
ピンクペッパー
料理を美しく彩るピンク色の小粒のピンクペッパー。こちらもお料理に使用したときは誤飲に注意です。
ピンクペッパーは、名前に「ペッパー」とついていますが、胡椒とは全く異なるウルシ科の「コショウボク」という植物の実です。人間でもウルシアレルギーを持つ方には要注意の香辛料です。犬でも、ブラックペッパーを食べてしまった時は問題なかったけど、ピンクペッパーを食べてしまった時はアレルギーが起きた、ということがあるかもしれません。ちなみに、カシューナッツ・ピスタチオ・マンゴーもウルシ科であり、人間でもアレルギーが問題となることがあります。
まとめ
人間には料理をとってもおいしくする香辛料ですが、犬には有害なことだらけですね。
犬が胡椒や他の香辛料をたべてしまった場合、下痢や嘔吐、胃腸の不調などさまざまな異常が起きる可能性があります。少量であれば問題がないことがほとんどでしょうが、症状が少しでも現れた場合は早急に動物病院で診てもらいましょう。
きっとこのサイトをご覧になっている飼い主さんは、自宅のワンちゃんが知らないうちに食べてしまった!とあわてて調べている方が多いかもしれません。
そうはならいように、まず普段の生活から犬の近くや犬の口や手の届く場所には食べ物やにおいの強いもの、万が一食べてしまったらいけないものを置かないよう注意し、一緒に生活している家族にも人間の食べ物をあげてはいけないという共通意識を持つことが大切です。