犬が小豆(あずき)を食べても大丈夫!
結論として、小豆そのものに犬の健康を害する成分は入っていませんので食べても大丈夫です。
日本人になじみが深い小豆は赤飯やあんぱん、ぜんざいやようかんなどの和菓子に使われていて、健康的な体に優しい食材というイメージがあります。飼い主さんが美味しそうに食べているのを見て愛犬も欲しがることも少なくありません。
人ではデトックス効果を期待して小豆の煮汁を食事や飲み物に取り入れることもあるそうで、小豆に含まれるカリウムやサポニンによってむくみが改善されたり、ポリフェノールによって血液がサラサラになったりする効果が見込まれるそうです。
ただし、小豆自体には問題がなくても、与え方によっては犬の健康に害を及ぼす場合もあります。詳細は後述しますが、食べさせる前には必ず危険がないか確認したうえで適量与えるようにしましょう。
子犬や老犬は小豆を食べても大丈夫?
成犬には小豆を与えて大丈夫だとしても、子犬や老犬にも同じように食べさせていいのか気になる方は多いと思います。結論としては子犬や老犬であっても小豆を食べさせて問題ありません。
ただし、子犬と老犬それぞれに注意しておかなければならない点も存在します。子犬は体の機能が未発達です。消化機能も成長段階であるため生後間もない頃に小豆を与えると下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。また個体によっては小豆に対してアレルギーを有している恐れもあるため最初は様子を見ながら少量ずつ与えていく必要があります。
老犬も子犬同様、様子を見ながら与えていきましょう。老犬の場合は老化による消化機能の低下が懸念されますので、成犬よりも与える量は少なく調整しましょう。小豆には人間の腎臓病に対して効果的な働きがあるとされ「腎の薬」とも呼ばれています。しかし、明確な科学的根拠が乏しいともされており犬に対しても同様です。老犬が腎臓病を患った場合は獣医師の指導の下、腎臓病療法食をメインに与えていきましょう。
犬が小豆を食べることで期待できる効果・栄養
小豆には様々な体に良い成分が含まれています。犬でも人と全く同じ作用が期待できるかどうか、科学的に検証されているわけではありませんが、小豆の主な栄養と、人で言われているその栄養成分による主な効果をご紹介します。
整腸作用のある食物繊維
小豆は食物繊維が豊富なので、胃腸の動きがよくなり便通が改善されるという効果があります。食べさせすぎて下痢をしないように与える量に注意しましょう。小豆に含まれる食物繊維の多くは不溶性食物繊維です。
利尿作用のあるカリウム
小豆にはカリウムが多く含まれており、むくみを改善する効果が期待できます。
ただし、カリウムの多量摂取が問題となる場合もありますので、与え過ぎないようにし、かつ持病のある犬にカリウムを多く含む食品を与えて良いかは、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
また後述のサポニンにも利尿作用があると言われています。
抗酸化作用のあるサポニン
サポニンとは、ある種の配糖体の総称で、健康に役立つサポニンは大豆を始めとしたマメ科植物やゴボウなどに含まれています。
サポニンには抗酸化作用があり、活性酸素によって酸化された悪玉コレステロールが蓄積するのを防ぐのに役立つと言われています。サポニンには他にも、免疫力やの向上や肥満予防などの効果があるそうです。
抗酸化作用のあるポリフェノール
小豆にはポリフェノールも豊富に含まれます。ポリフェノールもサポニンと同様に、活性酸素による酸化を抑制する抗酸化作用があります。活性酸素の働きを抑制することは生活習慣病の予防やがん予防にもつながると言われています。
実は小豆のポリフェノール含有量は、ポリフェノールが豊富なことで有名な赤ワインの約2倍だといわれています。
小豆そのものを食べるのももちろんよいのですが、小豆の煮汁にもポリフェノールをはじめとした体にいい成分が多く流れ出ているので、煮汁ごと体に取り入れられるとより高い効果が期待できるかもしれません。
愛犬のために手作りフードをつくっている飼い主さんには、小豆粥やスープをつくっている方もいます。茹でた小豆を他のフードのトッピングにするのも手軽に取り入れられるのでおすすめです。
代謝を正常に保つビタミンB1
ビタミンB1は糖質の代謝や神経の正常に活動に不可欠なビタミンです。小豆を食べることで糖質の代謝がよりスムーズになり疲労回復効果が見込めるかもしれません。
犬が小豆を食べてもいい量
犬に小豆を与えても大丈夫ですが、何事も与え過ぎは禁物です。犬に小豆を与え過ぎてしまうと嘔吐や下痢を招く恐れがある他、肥満の原因にもなりかねません。ここでは具体的にどの程度まで犬に小豆を与えて大丈夫なのかについて解説していきます。
超小型犬
超小型犬(5kg以下)が必要とする1日あたりのエネルギー必要量は374lcal前後です。犬のおやつカロリーとして推奨されているのは、必要カロリーの内10~20%までであることから、超小型犬に与えられるおやつのカロリーは37.4~74.8kcalとなります。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、茹でただけの小豆は124kcal(100g)であるため、超小型犬が1日に食べられる小豆(茹)の量は30~60gまでと算出されます。
小型犬
小型犬(6~10kg)が必要とする1日あたりのエネルギー必要量は概ね531kcal前後です。犬のおやつカロリーとして推奨されているのは、必要カロリーの内10~20%までであることから、小型犬に与えられるおやつのカロリーは53.1~106.2kcalとなります。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、茹でただけの小豆は124kcal(100g)であるため、小型犬が1日に食べられる小豆(茹)の量は約43~86gまでと算出されます。
中型犬
中型犬(11~20kg)が必要とする1日あたりのエネルギー必要量は概ね872kcal前後です。犬のおやつカロリーとして推奨されているのは、必要カロリーの内10~20%までであることから、中型犬に与えられるおやつのカロリーは87.2~174.4kcalとなります。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、茹でただけの小豆は124kcal(100g)であるため、中型犬が1日に食べられる小豆(茹)の量は約70~140gまでと算出されます。
大型犬
大型犬(21~40kg)が必要とする1日あたりのエネルギー必要量は概ね1449kcal前後です。犬のおやつカロリーとして推奨されているのは、必要カロリーの内10~20%までであることから、大型犬に与えられるおやつのカロリーは144.9~289.8kcalとなります。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、茹でただけの小豆は124kcal(100g)であるため、大型犬が1日に食べられる小豆(茹)の量は約117~234gまでと算出されます。ただし、あくまでもカロリーだけで見た数値です。与え過ぎにはご注意ください。
犬に小豆を与える際の注意点
小豆は犬が食べても大丈夫ですが、与える時に注意したい点もあります。どのような食べ物でも同じですが、適量を消化しやすい調理方法でつくった物をあげるようにしましょう。
与えすぎないように適量を守る
体にいい食材でも食べすぎはよくありません。小豆を愛犬に与えるとなると、普段の犬用の食事やおやつにプラスしてあげるという場合が多いでしょう。
十分に犬用の食事やおやつで必要なカロリーを摂取できているのに小豆を食べすぎると、カロリーを過剰に摂取することになってしまいます。小豆には健康に良い成分もたくさん含まれますが、炭水化物も多く含まれています。
また、あんこなどの大量の砂糖を使って甘くしたあんこは、少ない量でも高カロリーになってしまいますので犬にはあまり食べさせないほうがいいでしょう。
肥満気味や糖尿病など、食事の摂取量や内容、カロリーを厳しく管理する必要がある場合だと、余計に糖分やカロリーに注意しなくてはならないので、人間用に甘く味付けをしたものは与えないでおきましょう。
さらに、小豆は食物繊維が豊富で整腸作用も期待できるのですが、過剰に食べ過ぎることでお腹を壊してしまう可能性もあります。
はじめて愛犬に小豆を与える際には少なめの量をあげて、その後にお腹の調子を崩していないか様子をみてください。もともと下痢をしやすい体質の子には特に注意してあげましょう。
生の小豆は食べさせない
人間でも、豆類は十分に加熱してから食べます。犬に小豆を与える場合でも同様に、しっかりと加熱をしてから与えましょう。
生や加熱が不十分な豆を食べると、嘔吐や下痢を起こす可能性があります。よく煮込んで指でつぶせるくらいの柔らかさにしてあげましょう。
柔らかくした後にすりつぶしてペースト状にして、ドッグフードや他の食材と混ぜても良いでしょう。
食物アレルギーに注意
小豆に対するアレルギーは人間でも珍しいようで、2015年に3歳の幼児の例が初の小豆による食物アレルギーの発症例として報告されています。
犬でもこれまでのところ、小豆による食物アレルギーが疑われるなどといった例は報告されていませんが、下痢や軟便、嘔吐などの消化器症状や慢性的な体の痒みや皮膚の赤みなどの皮膚症状などがある場合には、食物アレルギーを疑う場合があります。
小豆を食べた後に毎回嘔吐したり下痢をしたり、体を痒がったりという体調の異常がみられた場合にはそれ以上小豆を与えるのをやめて動物病院に相談してください。
アレルギー症状ははじめて食べたときには現れません。複数回、または継続的に食べて現れるようになります。
大豆アレルギーは犬でも認められていて、検査も可能です。しかし、大豆アレルギーがある人でも他の豆類は問題なく食べられることが一般的で、小豆を避ける必要はありません。
犬でも同様で、大豆アレルギーがある犬でも小豆は問題なく食べられることが多いと考えられます。
《小豆による食物アレルギーを起こした幼児の報告》
Azuki Bean Allergy in a Japanese Child: a Case Report. Kiyotaka Ohtani. 2015 Volume 61 (3). 302-304.
https://doi.org/10.14789/jmj.61.302
犬に小豆を使った加工食品をあげても大丈夫?
小豆そのものは犬にとって有害ではありませんが、食べ方によっては注意が必要になります。小豆を使った食べ物で犬に与えるのに気をつけるべきものをいくつかご紹介します。
小豆アイス(あずきバー)
小豆を使ったアイスもとても美味しく、小豆バーを食べているとその甘い匂いにつられて愛犬がおねだりしに来るかもしれません。
小豆は体に良い食材なので小豆アイスなら犬にあげても問題ないと思うかもしれませんが、実は要注意な食べ物です。
アイスには想像以上に砂糖が多く使用されています。冷たい食べ物は甘みを感じにくいので、実際に食べて感じている甘味以上の砂糖が加えられているのです。
砂糖の取りすぎは人だけでなく犬にとっても体によくありませんし、たくさん食べさせると太ってしまいます。
またアイスの主成分のひとつが牛乳ですが、犬は牛乳でお腹の調子を崩してしまう子も少なくありません。さらにアイスは冷たい食べ物なので、その点からもお腹にダメージを与えるかもしれません。
お腹を壊しやすい体質の犬には特に、小豆バーなどのアイスは与えないほうがいいでしょう。
大福などのお餅類
小豆で体調を崩さない犬は、あんこを食べても大丈夫です。あんこは大福などのようにお餅類の中に入っていることも多いですが、大福の中のあんこを犬にあげるときは要注意です。
あんこの部分だけをあげているつもりでも、実はお餅が少しついていてしまって、犬がお餅をのどや胃腸内で詰まらせてしまうことがないように注意しましょう。
赤飯の小豆をあげる場合も、一口をあまり大きくしないで食べさせたり、お湯で一粒一粒バラバラにしたもち米をフードに混ぜたりしましょう。
ようかん・どら焼きなどの和菓子
あんこを使った和菓子は、アイスと同様に砂糖の量に要注意です。あんこは柔らかくなっているぶん犬にとっても食べやすい、消化されやすいというメリットはあるのですが、どうしても人間が美味しく食べるために大量の砂糖が加えられがちです。
愛犬がようかんやどら焼きなどのあんこを使った和菓子がお気に入りの場合は、犬の体に優しい砂糖を使わないあんこを手作りするのもおすすめです。
砂糖の代わりにリンゴを加えて甘みを出すこともできます。カロリーと糖分の低い美味しいあんこが食べられます。または、甘味のない単純に茹でた小豆をペースト状にしただけのあんこでも愛犬は好きかもしれません。
砂糖不使用のあんこはもちろん飼い主さんにとっても健康的ですね。りんごの他にも干し柿などのドライフルーツを砂糖の代わりに使うこともできます。ただしフルーツにも果糖が含まれているので、入れすぎや食べすぎは禁物です。
あんこには「粒あん」と「こしあん」がありますが、粒あんにはが含まれますので、こしあんの方がより犬の胃腸に優しいかもしれません。
小豆を使用した犬が喜ぶ簡単レシピ
茹でた小豆をそのまま犬に与えても大丈夫ですが、大好きな愛犬には美味しい手作りおやつを作ってあげたいですよね。ここでは手軽に作れるおやつとして「小豆入り犬用蒸しパン」を紹介します。
小豆入り犬用蒸しパン
【材料】- 小麦粉(薄力粉):大さじ4
- 卵:1個
- ベーキングパウダー:小さじ1/2
- サラダ油:小さじ1
- 茹で小豆:適量
作り方は簡単。材料をボールでよく混ぜ合わせます。練り上がった生地を電子レンジ対応したカップに移します。電子レンジで500~600W2分間加熱し、緩いようであれば追加で30秒ずつ加熱していきます。ふっくら仕上がったら完成です。愛犬が火傷しない余熱をとってから与えてあげてください。
まとめ
栄養的に健康に良い小豆は犬が食べても大丈夫な食材です。ただし加熱が不十分な場合や、与えすぎ、食べすぎによる消化不良でお腹の調子が悪くなる可能性もあります。どんな食材でもあげすぎには注意しましょう。
小豆に豊富に含まれる成分には食物繊維やポリフェノール、サポニンなどがあり、便通の改善や抗酸化作用、利尿作用が期待できるかもしれません。
愛犬が小豆を好むようなら、食事のトッピングや手作り食の材料の一つとして、またはおやつに取り入れてみるのもよいでしょう。
小豆アイスや大福などを与える際は特に注意が必要で、できるだけ与えない方が良いでしょう。飼い主さんが食べているものを犬に食べられてしまって、犬に危険や健康上の害がないように十分に気をつけてあげてください。