犬は黒糖を食べても大丈夫?メリットや与え方、注意点を解説

犬は黒糖を食べても大丈夫?メリットや与え方、注意点を解説

糖分を余計にあげるのは良くないと知りつつ、愛犬に可愛くおねだりされると、ついスイーツのおすそ分けをしてしまう方もおられると思います。白砂糖に比べミネラルなどの栄養が多く含まれていると言われる黒糖ですが、犬にあげても大丈夫なのでしょうか。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬が黒糖を食べても大丈夫?

黒糖

犬に黒糖(黒砂糖)を与えても問題はありません。基本的には大丈夫です。ですが、ドッグフードを食べている犬でしたら砂糖をわざわざあげる必要はありませんし、手作り食の材料としても砂糖を使う必要もないでしょう。黒糖を犬に与えることがあっても、飼い主の好みで与えたり、甘いものが好きな犬の食欲増進のために与えたりすることがある程度だと思います。

人間でも糖分の摂り過ぎが糖尿病や肥満につながると言われていますが、同じことが犬にも言えます。与える際には愛犬への健康に害を及ぼさないように充分に注意しましょう。

黒糖と白砂糖の違い

糖分は重要なエネルギー源のひとつですし、犬は甘味を感じることができて甘いものを好むこともあるので、食欲増進のためにペットフードにも「ショ糖(スクロース)」を加えてあるものもあります。ペットフードに加えられるショ糖には他にも、半生タイプのフードの保湿やフード中のでんぷんの老化を防ぐ役割も果たすそうです。私たちが砂糖と呼ぶ場合、ほとんどは白砂糖を意味しますが、砂糖には黒糖と呼ばれるものもあります。

砂糖の原料は主にサトウキビとてんさいですが、製造過程の違いによって「分蜜糖」と「含蜜糖」に分かれます。上白糖やグラニュー糖などの白砂糖は分蜜糖であり、黒糖は含蜜糖になります。では、これらの砂糖の違いは、何なのでしょうか。

黒糖とは

ミネラルを多く含む糖蜜を分離させずに作られている含蜜糖の一つである黒糖は、さとうきびのしぼり汁をそのままに詰めて作られており、様々なミネラル分を含んでいます。そのため、いわゆる雑味や味の奥生きがあり、クセのある味とも言えるのです。

黒糖に含まれるミネラルには、ナトリウムやカリウム、カルシウム、リン、鉄、亜鉛などで、どれも健康を維持するのに必要な栄養素となるものです。黒糖は沖縄や奄美諸島が主な産地として広く知られています。

白砂糖とは

白砂糖とは、いわゆる上白糖、グラニュー糖などと呼ばれているものです。製造過程でミネラルを多く含む糖蜜を分離させて精製し、ショ糖という甘味成分を結晶化させたもので、より甘みを強く感じるので料理やお菓子に使われています。

精製過程でミネラル分を不純物として取り除くため、白砂糖ではごくわずかしかミネラルを含んでいません。

犬に黒糖を与えるメリットや栄養素について

砂糖の隣にいる犬

ミネラルは健康な身体を作ったり体の機能を正常に維持するには欠かせない栄養素で、さまざまな種類があるのですが、必須ミネラルと呼ばれる食べ物から摂取することが必要不可欠なミネラルは人間では16種類、犬では12種類となっています。

黒糖には必須ミネラルを含む多くのミネラルが含まれています。

また黒糖には、ビタミンも少量含まれています。

黒糖に含まれている主なミネラルの役割

  • カルシウム・マグネシウム・リン:骨や歯の形成や維持、体の様々な機能の維持など
  • 鉄:血液中のヘモグロビンの構成要素、様々な補酵素(酵素が働くのに必要な物質)の構成要素
  • 銅:メラニンや補酵素の構成要素
  • 亜鉛:被毛や皮膚の健康維持、様々な酵素の構成要素など
  • カリウム・ナトリウム:細胞の浸透圧を維持、体の水分バランスを調節、神経伝達に関与など

黒糖に含まれているビタミン

ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6、そしてビタミンB99(葉酸)などが含まれています。これらビタミンB群は糖質・脂質・タンパク質という3大栄養素の代謝を促進し、効率よくエネルギーに変える働きなどがあります。

このように黒糖には精製された白砂糖には含まれていない栄養素が多く含まれているので、一見すると与えた方がよいのではないかと思ってしまうかもしれません。

しかし、黒糖が体に必要なミネラルやビタミンを多く含むからと言って、あげる必要のないものを過度に与えるのは、やはりNG。糖分の摂り過ぎは糖尿病や肥満などの、健康への悪影響を引き起こす危険性があり、栄養のバランスに配慮して犬に与える物を決めることが必要です。

犬に黒糖を食べさせる時の与え方

黒糖を食べる柴犬

犬に必ずしも黒糖を与える必要はありませんが、例えば甘いものが好きで投薬を嫌がる犬には、少量の黒糖を解いてシロップ状にしたものと一緒に与え、飲ませやすくするということができるかもしれません。ただし、錠剤の薬を粉にしたり甘いものと混ぜることにも注意が必要な場合がありますので、いずれも獣医師に相談してから与え、与えすぎには十分注意しましょう。

カロリーに配慮する

黒糖100gは352kcal(グラニュー糖100gは394kcal)と高カロリーの食品です。犬が必要としているカロリーは、成長段階や去勢・避妊手術の有無、運動量や生活環境などによって差がありますが、平均的には体重10㎏の成犬で去勢・避妊をしていない場合、一日に必要なカロリーは666kcalあたりと言われています。

通常の食事量以外に黒糖を与える場合は、ほんのひとかけらでもカロリーオーバーになってしまいやすいでしょう。食欲がなくて少しでも食べさせたかったり、薬を飲ませる時の補助として利用する以外には、黒糖を犬に与えることが勧められることはあまりないでしょう。黒糖が含むミネラルについても、黒糖以外の食品で補給できると考えられます。

犬に黒糖を与える際の注意点

黒糖を食べようとする柴犬

黒糖の甘味成分であるショ糖は、体内に入ると最終的にはブドウ糖と果糖となり、腸から吸収されてエネルギー源となります。また豊富なミネラルを含んでおり、エネルギーとミネラルの両方を手軽に補給できるという点で優れた食品です。犬もある程度の量の炭水化物を消化吸収してエネルギー源にすることができますので、少量であれば黒糖を犬に与えても問題はありませんが、次の点に特に注意しましょう。

あくまでも補助食品として扱う

犬は甘味を感じることができ、甘いものを好む場合も多くあります。そのため、甘味のある不凍液(エチレングリコール)の誤飲といった事故も生じるわけです。ですから、飼い主が一度甘いものを与えてしまうと、それは深く記憶に残り、おねだりをするようになるかもしれません。そのような場合でも適度な量を守る必要がありますし、飼い主が意図しないところで甘いものを食べてしまうことも防ぎたいものです。

犬に黒糖や白砂糖を与えるのは、あくまでも薬を飲ませるための補助食品や食欲不振の時の風味付けにちょっと、という認識を忘れないことが大事でしょう。愛犬の求めるままに糖分を与えてしまうと、肥満や糖尿病などの病気を引き起こし、愛犬も飼い主も苦しむことになるかもしれません。愛犬が健康に暮らせるための食事管理は飼い主の責任と言えます。

また、既に糖尿病などの病気を持っている犬は食べて良いものと量に制限があることが多く、決められた食事以外のものを食べることは緊急に治療をする必要が生じることになったり、病気を悪化させてしまうことがあります。持病のある犬は特に、普段の食事内容と盗み食いをされないことに気を付ける必要があります。

食品の持つ甘味を利用ことも検討する

愛犬の好きな甘味を与えたいのなら、食材自体に甘みのあるサツマイモやかぼちゃ、リンゴなどを与えるのをお勧めします。

特にリンゴは、豊富な食物繊維によって歯の掃除にも効果があると言われているそうです。ただし、果物も糖分は高いので与えすぎには注意しましょう。

犬が黒糖を使った製品を食べてしまっても心配ない?

ケーキを食べようとするチワワ

私たちが普段食べているおやつにも、黒糖を含んだものがいろいろと見うけられるようになりました。黒糖を使ったおやつとして代表的なものに、かりんとうや黒糖蒸しパンなどがありますね。

かりんとう

黒糖を使った代表的なお菓子と言えば「かりんとう」ですが、普通サイズのかりんとう1個が約2.4g、カロリーは11kcalほどとなるようです。最近人気の大きなかりんとうは1個が9g、カロリーは何と40kcalほどにもなります。

かりんとうの主な原材料は小麦粉と砂糖であり、それを油で揚げています。平均的にかりんとうは100gで約420kcalと高カロリー食品なので、犬におやつとして与えるにはあまり適していない食品でしょう。

黒糖蒸しパン

黒糖蒸しパンもやはり高カロリーです。蒸しパン類には小麦粉、黒糖の他に油脂も使われています。やはりあげすぎは禁物です。

誤食してしまった時の対処法

黒糖自体は身体に悪影響を与える成分は含まれていませんが、おやつとしてあげる以上の量を誤って食べてしまった場合は、しばらく様子を観察しましょう。

胸やけを起こしたりして食欲不振になる程度、おやつの食べ過ぎでお腹がいっぱいであるようなら、食事を抜くなどして調整します。

もし、大量に食べてしまって嘔吐や下痢が続いたり、苦しそうにしていたら、速やかに獣医師に診察してもらいましょう。

黒糖に対して特にアレルギーを心配する必要はなさそうですが、黒糖を含んだパンや人間のお菓子などを食べてしまった後に何か変わったことが起きた場合などには、食べてしまったものの袋に記載されている成分表を確認したり獣医師に提示しましょう。いつ、どういう状況で何をどれだけ食べたか、様子がどう変化したのかなど、出来るだけ正確に説明できると、早く適切な治療に結びつくことになります。例えば、黒糖を使ったパンやお菓子にレーズンが含まれていることも多く、犬の大きさと食べてしまったレーズンの量によっては、レーズンによるぶどう中毒の心配をする必要もあります。

まとめ

黒糖の画像

黒糖は、少量であれば犬が食べても特に問題はありません。しかし、小型犬の場合、飼い主がわずかだと思う量も、体重比で考えると犬にとっては意外なほど大量になることもあるので、特に注意が必要です。

本来、犬においしいものを食べるためのおやつは必要ありません。犬におやつとして喜ぶものをあげたいのは、愛犬とのコミュニケーションを取りたい、愛犬の機嫌を取りたいという、飼い主側の気持ちの問題が大きく影響しているのではないでしょうか。

ですから、いくら愛犬が欲しがると言っても、非常に多くの糖分を含む黒糖を与える必要はないですし、糖分の過剰摂取は人間と同様に健康に悪影響を及ぼします。飼い主は、愛犬の要求にこたえるだけではなく、バランスのとれた食生活を愛犬が送ることができるように十分に配慮する必要があります。愛犬の健康管理は、全て飼い主の責任下にあることを自覚して、適切な分量と内容のおやつを与えるようにしましょう。

《参考記事》

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