犬にとって食物繊維は必要な栄養素!
本来、肉食の犬になぜ食物繊維が必要なのでしょうか。
それは、人間と長い年月を共に生活する中で雑食性が強くなっているからです。適度な食物繊維を摂取することで、腸内環境の改善や便秘の解消など、さまざまな健康効果をもたらします。
食物繊維と一口に言っても、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2つに分けることができます。それぞれの特徴と期待できる効果について解説します。
水溶性食物繊維の働き
「水溶性食物繊維」は、水に溶けやすい食物繊維のことで、水に溶けるとゼリー状になります。腸内の老廃物や毒素を吸着して、体外へ便として排出する作用があります。
胃腸内をゆっくりと通り消化吸収に時間がかかるため、空腹を紛らわして食べすぎ予防にもなります。また、水分を保持する力が強いため、便を柔らかくして排便を促す効果があります。
犬が便秘気味の場合は、水溶性食物繊維を含む食事を与えると良いでしょう。便秘と下痢を繰り返している場合も、水溶性食物繊維は有効です。
代表的なのは「ペクチン」で、野菜や熟した果物、芋類などに含まれています。ペクチンは、犬の腸内細菌による発酵を受けやすい「発酵性食物繊維」として、腸内環境に良い影響をもたらすと考えられています。
そのほかには、昆布やワカメなどの海藻類に含まれる「アルギン酸」も水溶性食物繊維です。
不溶性食物繊維の働き
「不溶性食物繊維」は水に溶けない食物繊維で、便のかさを増やし腸のぜん動運動を促す作用があります。そのため、頑固な便秘の犬には、不溶性食物繊維が含まれるフードがおすすめです。
代表的なのは、「セルロース」や「ヘミセルロース」で、どちらも植物の細胞壁に含まれ植物の形を作っている成分です。野菜や果物、穀類、豆類などで、繊維質の食べ物に多く含まれます。
ただし、犬が不溶性食物繊維を含む餌を摂取しすぎると、お腹の調子を悪くしてしまいます。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の割合を考えて、適度な量を与えることが大切です。
犬に適した食物繊維が多く含まれる食べ物
食物繊維は、野菜や果物、豆類などに含まれています。しかし、食物繊維の多い食品でも、犬には向かないものがあるので注意が必要です。
ここでは、犬に与えることができる食材を紹介し、効果や与え方について解説します。
食物繊維を多く含む野菜
キャベツ
食物繊維を多く含む野菜として知られていますが、犬の健康維持にも役立ちます。犬に与えることで、食物繊維による腸内環境の改善だけでなく、便秘の改善、免疫力の向上、骨粗しょう症の予防などの効果が期待できます。
キャベツに含まれる栄養を壊さずに摂取するには、生で食べるのが一番です。しかし、葉が柔らかい春キャベツは生で与えても良いですが、葉が硬い時期のキャベツは生の状態だと消化しづらいので、加熱してから与えましょう。
また、水に溶けやすい性質の栄養素も含まれるため、加熱する際は水にさらす時間を短くしましょう。電子レンジを使ったり、茹で汁も一緒に与えたりするのもおすすめです。
注意が必要なのはキャベツの芯です。この部分には多くのビタミン類が含まれますが、中毒症状を引き起こす硫酸イオンも若干含まれています。
健康な犬なら問題ないですが、老犬や幼犬など胃腸機能が低下している犬に与えるのは危険です。基本的に、芯の部分は犬に与えないようにしましょう。
さつまいも
食物繊維のほかにも、カリウム、ビタミンC、ビタミンEなど栄養豊富で、犬も食べられる食材です。
カリウムは利尿作用に優れ、体内の塩分と水分のバランスを調整し代謝を促します。抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEは、皮膚の新陳代謝を高める効果があります。
犬はビタミンCを体内で作ることができますが、大型犬や老犬は不足しやすい栄養素です。
さつまいもは生のままでは硬く、消化不良を引き起こすことがあるので、茹でたり電子レンジで加熱したりして与えましょう。さつまいもは皮のまま与えることができ、この部分は栄養も豊富に含まれるので、柔らかくして与えましょう。
市販の犬用おやつにも、さつまいもを気軽に安全に与えられる商品があるのでおすすめです。
食物繊維を多く含む果物
りんご
食物繊維、カリウム、ビタミンC、ポリフェノールが多く含まれる食材で、犬にも与えることができます。
りんごの食物繊維であるペクチンは、食物アレルギーを抑制する効果や抗がん効果なども期待できると、最近の研究でわかってきました。また、ポリフェノールは強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果や血流を改善する効果があります。
ペクチンやポリフェノールはりんごの皮に多く含まれているので、皮をむかずに与えましょう。また、水分を多く含むので、水を飲んでくれない時や老犬の水分補給におすすめです。
りんごを与える時は、食べやすい大きさにカットしてあげましょう。老犬の場合は、喉に詰まらせたり消化不良を起こしたりするのを防ぐために、すりおろしたりジュースにしたりして与えましょう。
また、皮に農薬物質が残っている可能性もあるので、しっかりと水洗いすることも大切です。
梨
梨はほとんどが水分でできていると言われ、犬に悪い影響を与える成分は含まれていません。また、クエン酸やアスパラギン酸が含まれ疲労回復効果があるので、激しく体を動かした後や老犬に少量与えると良いでしょう。
利尿効果のあるカリウムも多く含みますが、腎臓に疾患のある犬の場合は、尿が出すぎて脱水症状を起こす恐れがあるので注意が必要です。
梨の皮は硬くて食べづらいためしっかりと皮むきし、できるだけ小さく刻んで与えましょう。
小型犬の場合、喉に詰まらせてしまう危険性があるので、すりおろしたりペースト状にしたりして、消化吸収しやすいようにしてください。また、種や芯の部分は消化が悪いので、きれいに取り除きましょう。
食物繊維を多く含むその他の食べ物
おから
おからは体に良い食材として広く知られていますが、犬に与えても大丈夫です。
おからは食物繊維が豊富に含まれているので、腸の働きを整える作用に優れています。「生おから」と「乾燥おから」がありますが、フードのかさましとして使う場合は、水分の多い生おからがおすすめです。
ただし、消化不良により腸の調子が悪く下痢の症状が見られる場合は、症状を悪化させてしまうことがあるので注意しましょう。
ひじき
食物繊維、カルシウム、鉄分、マグネシウムなどの栄養素が豊富で、犬も食べられる食材です。食物繊維は整腸作用があり便秘を改善し、カルシウムやマグネシウムは丈夫な骨を形成するのに欠かせません。
ひじきというと煮物ですが、私たちが食べるものは味付けされているので、犬の体には悪い影響を与えてしまいます。犬に与える時は、一切味付けしないように手作りして与えましょう。
ご飯
ご飯にも食物繊維が含まれています。白米よりも玄米の方が食物繊維が多く含まれており、ビタミンやミネラルなどの栄養素も豊富です。玄米は犬に与えても問題のない食材ですが、消化に悪いので与え方には注意が必要です。
玄米は消化しやすいように、多めの水で柔らかくなるまで煮ておかゆにしたり、フードプロセッサーを使ってペースト状にしたりして与えましょう。
犬に必要な食物繊維の量
犬にとって食物繊維は必須とは言えませんが、消化管の健康を維持するためには有用だと考えられています。一般的な総合栄養食のドッグフードにも5%程度の食物繊維が含まれています。
ただし、下痢気味の場合は不溶性食物繊維を、便秘気味の場合は水溶性食物繊維を加えた方が便の状態が良くなることがあります。便の状態を確認して、ドッグフードのパッケージに記載されている成分表を見ながら、食物繊維の量を調整してあげましょう。
成分表の「粗繊維」と書かれているのが食物繊維のことです。「粗」とは「だいたい」という意味で厳密な数値ではないことを表します。
一般的に、粗繊維の割合が4%以下のものが良いと言われることがありますが、病気や体質をケアするフードには繊維が多めに含まれている場合もあります。そのため、4%を超えるものは良くないフードということではなく、犬の体に合わせて選ぶことが大切です。
また、食物繊維は犬にとって必須ではないので、老犬や子犬にとっても適量というものはありません。便の状態を見ながら調整して必要量を与えることが大切です。
犬に食物繊維を与える時の注意点
食物繊維を多く含む食材には、犬に与えても良いものも多くあります。しかし、与え方に注意しないと体調を崩してしまうことがあるので、気をつけないといけません。
適度な量を守る
不溶性食物繊維を摂取しすぎると、便秘の症状を招く恐れがあります。また、必要な栄養素の吸収を阻害する作用もあり、ビタミンやミネラルが不足して欠乏症になってしまいます。
一方、水溶性食物繊維を摂りすぎると、下痢や軟便になったり、おならが出やすくなったりします。食物繊維を与える時は、犬の健康状態を見ながら適度な量に調整しましょう。
アレルギー症状を起こす可能性がある
食物繊維を含む食材を食べて、アレルギー症状を引き起こす可能性もあります。初めて与える食材は少量から始めて、アレルギー症状が現れないか確認してください。
アレルギー反応を引き起こすと、下痢や嘔吐、皮膚のかゆみ、目の充血などの症状が見られるので、動物病院を受診しましょう。
消化不良に気をつける
食材によっては、生の状態では硬くて消化不良を引き起こす場合もあります。そのような食材は、適切な方法で加熱したり、食べやすい大きさにカットしたりして与えましょう。
毒素が含まれている危険性がある
食材によっては皮や種などに毒素が含まれているものもあります。与える食材の特徴を把握し、毒素が含まれる部分は取り除くなどして、中毒症状を起こさないように注意しましょう。
犬に食物繊維を与えたい時におすすめの商品
「腸内環境を整えるために食物繊維を与えたいけど、野菜や果物を食べさせるのは心配」という方もいるでしょう。その場合は、食物繊維を気軽に与えられる商品に頼ると良いです。
それでは、おすすめの商品を紹介します。
犬 猫用 無添加 食物繊維 サプリ(すっきり繊維 60g)粉末 オーガニック
添加物は一切使っていないので、安心して与えることができます。おならや便が臭う、便秘で排出が困難などの症状を優しくサポートします。農薬や化学肥料不使用で育てられた水溶性食物繊維なので、老犬や子犬にも安心です。
ペティオ (Petio) 犬用おやつ 素材そのまま スティックタイプ さつまいも
さつまいもを丸ごと使用した犬用のおやつです。自然の甘さを楽しめて、食物繊維、ビタミンC、ビタミンEなどの栄養素を美味しく摂取することができます。保存料や着色料は一切使用していないので、安心して食べさせることができます。
ロイヤルカナン犬用 消化器サポート(高繊維)
下痢や大腸性疾患の犬に与えるために調製されています。消化管の健康維持のために高消化に設計されています。高食物繊維を最適なバランスで配合し、エネルギーを十分に摂取できるように調整しています。
サイリウム 粉末 300g 1本 モリケンショウ 胃腸 サプリメント
手軽に食物繊維を摂取できるペットサプリメントで、犬の腸の健康を維持するのに役立ちます。ビタミン・ミネラルも豊富に含まれています。与え方は、少量の水を加えてダンゴ状になるように練って、ドライフードと一緒に食べさせると良いです。
まとめ
「もともと肉食の犬は野菜を食べさせる必要がない」と言われ、犬に食物繊維は必要ないと考えられていたこともありました。しかし、実際は肉食に近い雑食動物なので、肉や魚だけでなく食物繊維を含む野菜や果物、穀類も食べることができるのです。
今では、食物繊維は犬の健康にも良い効果をもたらすことがわかっており、適度に摂取する必要があると考えられています。ただし、与え方によっては、犬の体調を崩してしまう原因になります。
そのため、犬が安全に食べられる食材を選び、愛犬に適した量を確かめて、食べやすいように処理や調理をしてから与えることが大切です。