犬に梅干しを与えても大丈夫?
X梅干しの「種」は犬にとって危険
X生の梅は与えてはいけない
犬にとって梅干しそのものは問題ない
梅干しは、平安時代には書物に記録が残っているほど歴史があり、古くから私達日本人の健康を支えてきてくれました。ところが梅干しはすっぱくて味が濃いため、犬にとっては良くないものというイメージがわきますよね。
しかし、梅の実にかんしてあくまでも犬にとって危ないとされるのは、成熟する前の梅の実と種なのです。そのため、万が一熟成した梅干しの果肉部分を愛犬が少量食べてしまったとしても、「急いで対処をしないと!」と慌てず、落ち着いて愛犬の様子を見てあげましょう。
犬にとって危険なのは「種」と「生の梅」
よく梅干しは「犬にとって身体に毒」「危険」と言われていますが、実は本当に危ないのは、人がよく食べる加工した梅干しの果肉そのものなのではなくて「成熟していない生の梅」と「種」なんです。では、この2つが具体的にどのような影響を与えてしまうのでしょうか?
梅干しの種が喉や消化器に詰まらせる
私達人間にとって梅干しの種は、種の中身を味わって堪能することもありますよね。しかし、犬からしてみれば梅干しの種はとても大きくて、誤って飲み込んでしまったら喉に詰まらせて食道を傷つけたり、犬の大きさなどによっては呼吸困難に陥ることがあり、大変危険なんです。
そして他にも怖いのが、消化管に詰まってしまうパターンです。もし種をウッカリ飲み込むと、特に小型犬や子犬では腸閉塞を起こしてしまう危険性もあり、発見や治療が遅れると死に至ってしまうという可能性もあります。
毒性の強い生の梅
加熱や成熟していない生の梅には、「アミグダリン」という成分が含まれているのですが、これが身体の中に入って分解されてしまうと「青酸」という毒になってしまいます。
そしてこの青酸は、めまいや頭痛を引き起こしたり、もっと重症になると身体が痙攣したり呼吸困難に陥ってしまい、最悪の場合だと死亡してしまうこともあるんです。
生の梅でも成熟した実にはアミグダリンはほとんど含まれず、若い青梅ほど多くアミグダリンを含みます。また、微量ながらも梅の葉にもアミグダリンは含まれるそうなので、青梅を犬に与えてはいけないだけではなく、梅の実や葉をくわえて遊んでしまわないようにしましょう。
梅干しの種には毒があると言われることがありますが、その毒も青酸のことです。そして種の中に含まれる青酸のもと、アミグダリンは梅干しの製造過程でほぼ分解されるそうです。
犬が梅干しを種ごと食べてしまった時の対処法
万が一、愛犬が梅干しの種ごと食べたという事態が起こったら、かかりつけの動物病院へ相談してみましょう。
ある程度以上の大きさの犬ならば、梅干しの種をそのまま飲み込んでしまっても問題なく排せつされるでしょうが、小さな犬では危険な状態につながる可能性もあります。
梅干しの種を食べてすぐならば吐かせると良い、という情報も多くありますが、犬の大きさや状態によっては吐かせることが良くないこともありますので、自宅で何とか吐かせようとする前に、かかりつけや救急対応をしている動物病院に相談しましょう。
消化されない梅干しの種のとがった角が胃腸の粘膜を傷つけながら移動したり、腸で詰まったために、全身麻酔下での内視鏡を使った処置や開腹手術が必要になることもあるので注意しましょう。
梅干しの種はレントゲンでもハッキリと写るものではないため、「食べてしまったかも?」と少しでも疑うことがあれば、犬の大きさや様子によっては動物病院に相談しましょう。
犬が梅干しを食べることで期待できる効果
梅干しの中に入っているクエン酸やポリフェノールなどには、人に良い健康効果を持つとする研究報告が多数発表されています。では、犬でも同様の効果が得られるかというと、実は研究が行われておらずハッキリとしたことは分かっていません。
実際にどれくらいの量の梅干しを食べれば人と同じような効果が得られる可能性があるのかは不明ですが、梅干しに含まれる成分がもたらすと言われている健康効果のうち、犬も得られるかもしれない効果についていくつかご紹介します。
- 疲労回復
- 腸内環境の改善
- 殺菌効果
- 脂肪が付くのを防ぐ
- 免疫力を上げる
疲労回復
たくさんスポーツをした日など、疲れが体に溜まりやすい行動をした時に梅干しを食べると、人の場合は疲労回復に役立ってくれます。これは梅干しに多く含まれるクエン酸によるものです。
長時間に渡る散歩や遠出から戻ってきた時などは、体力に自信のある犬でも疲れてしまうことがあるため、体を労わるのに有効かもしれませんね。
腸内環境の改善や殺菌効果
梅干しに含まれるカテキン酸やクエン酸は人間で腸内の働きを悪化させる悪玉菌を抑え、環境を整えてくれるそうです。
犬と人間では腸内細菌叢は同じではありませんが、愛犬の便秘または軟便を改善してくれる可能性もあるのではないでしょうか。他にも、食中毒の原因菌に対する殺菌作用もあると言われています。
肥満気味の犬の体重管理
梅干しの中に含まれている「バニリン」というポリフェノールが、脂肪細胞を刺激して脂肪が燃焼されやすくする可能性があるという人間での研究結果が出ています。
ただし、人間でよく言われている梅干しの食欲増進作用が犬に対してもあった場合、愛犬の食欲が増すかもしれないという点には注意が必要になりますね。
参考:紀州梅効能研究会 梅エキスの生活習慣病(糖尿病、高脂血症)に及ぼす効果
免疫力を上げる
梅干しの中のクエン酸は、疲労回復を促進することによって免疫力を強くする作用があるとも言われています。
そして今、このような効果の他に様々な研究の中で注目されているのが、梅肉に含まれる抗酸化物質リグナンや、トリテルペノイドと呼ばれるガンにつながるかもしれない炎症を抑えることが分かってきた物質です。
まだ研究は続いているため、続報を待ちたいところですが、人のガン予防としても期待されているようです。研究が進んで愛犬のガン予防のためにも活用できるようになってくれれば嬉しいですね。
参考:紀州梅効能研究会 梅の細胞増殖抑制作用、抗酸化作用に関する研究
参考:知財ポータルサイト IP Force トリテルペノイド高含有梅エキス組成物およびその製造方法
犬に梅干しを与える際の注意点
どうしても愛犬のために梅干しをあげたい時には、食べ過ぎなどによって愛犬の健康面に悪影響が出ないように注意してあげる必要があります。
また、梅干しは犬にとって必須の食材ではないため、愛犬がおいしく食べられない場合は無理に与えないようにしましょう。
塩分と分量に注意!
犬にとっての梅干しの適量(健康に悪影響を及ぼさない量)は体格によっても大きく変わりますが、小型犬でしたらほんのひとつまみ程度でしょう。
梅の実や梅干しの実に含まれる栄養を摂取させたくてどうしても梅干しを与えるのでしたら、できるだけ塩分濃度の低い梅干しを選びましょう。いくら健康に良い成分を取り入れさせてあげたいと思っても、塩分の摂り過ぎとなってしまってはやはり良くありません。
また、心臓病や腎臓病などの病気を抱えている時には必ず獣医師に相談してから食べさせるかを検討してください。さらには、わずかな量であっても愛犬の体に合わない食材である可能性もあるため、初めてあげる時にはごく少量を与えて問題がないことを確認する方が良いでしょう。
分量の調整が心配なら犬用の既製品を利用する
もし、自分で梅干しの塩分の調整や与える量の加減が心配な方は、無理をしないで、梅を原料に使いながらも犬用にキチンと塩分が調整されている既製品を利用すると良いかもしれません。ただし、各メーカーが犬用に販売している商品であっても、一度にたくさん食べるのは体に負担がかかりやすいため少しずつ与えましょう。
まとめ
よく言われる「犬に梅干しを与えるのは危ない」というのは、主に加熱されていない生の梅、若い青梅、加工されていない梅の種や梅干しの種に問題があるという点です。愛犬がうっかり加工した梅干しの果肉を少し食べてしまったとしても、健康上は大きな問題が起こらないことが多いでしょう。
しかし、梅干しの果肉そのものも塩分を多く含んでいるなど、愛犬の健康にとって注意が必要な食材であるということは理解しておきたいポイントです。
独特の酸っぱさが苦手な犬や、塩分の調整が難しい飼い主さんもいますので、無理に梅干しを活用しなくても、他の食材を使って愛犬のご飯をおいしく食べられるよう工夫してあげると良いでしょう。