犬がごま油を舐めたけど大丈夫?栄養素や効果、注意点などを解説

犬がごま油を舐めたけど大丈夫?栄養素や効果、注意点などを解説

普通の油よりも良い匂いがただようごま油は、犬にとってはおいしそうな香りです。ごま油は日本の食卓でもよく使われるため、犬には嗅ぎなれた食欲をそそる匂いを放つ食用油と言えますね。そんなごま油を犬が口にしたら、体にどんなことが起こるのかぜひ知っておきましょう!

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬のご飯にごま油を使っても大丈夫?

キッチンで料理中の飼い主を見つめる犬

ごま油は、その名の通り「胡麻」の種子を圧搾加工して作られた食用油です。日本でも炒め物で使ったり、熱を加えずそのまま香りづけとしてかけたりタレに混ぜたりと、幅広く使われることが多く、独特の香ばしさが魅力で人気ですよね。

そんなごま油を犬が食べてしまったとしても、原料はごまなので犬の体にとって中毒性の健康被害はありません。そのため、ごま油を犬がうっかり舐めてしまったとしても体には大きな影響はほとんどないでしょう。

また、ごま油の成分の中には犬にとって良い効果をもたらすのではと言われているものもあります。

「それならば」と、良い香りがすれば嗅覚が鋭い犬にとってはなおさら食欲も増すので、食べっぷりが悪くなった老犬や、手作りご飯の中にトッピングしてみたいと思っている方も多いのではないでしょうか?

しかし、あくまでごま油のメインは油である「脂質」のため、ごま油自体の効能と合わせてあげ方に注意すべき点もいくつかあります。これから、ごま油の成分と食べた時の効果を解説するのと同時に、犬にあげる時に注意したいこともご紹介します。

犬にごま油を与えることで期待できる効果

ごま油とすりゴマ

まずはごま油が愛犬に発揮してくれる可能性がある効能について知ってみましょう!

不飽和脂肪酸で皮膚や被毛の健康維持

脂肪は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられ、ごま油の多くは不飽和脂肪酸である

  • リノール酸
  • オレイン酸

から構成されています。

中でも不飽和脂肪酸の中で「オメガ6脂肪酸」に分類されるリノール酸は、皮膚のバリア機能を保ったり、ミネラル成分である亜鉛と一緒に働いて被毛のツヤを改善してくれる栄養素です。アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が壊れやすい子にオメガ6脂肪酸を足すのは、この役割を期待するからでもあります。

また、オレイン酸は「オメガ9脂肪酸」に分類され、酸化しやすいと言われる不飽和脂肪酸の中では酸化しにくい性質を持っています。体の中で過酸化物質の発生を軽減してくれることは嬉しい効果ですよね。

不飽和脂肪酸を適量取ることで、人体の血中の悪玉コレステロールを低下させることが知られています。

ゴマリグナン

ごま油には特有のゴマリグナンという成分が含まれています。
ゴマリグナンには、

  • セサミン
  • セサモリン
  • セサミノール
  • セサモール

などがあり、体を酸化させる活性酸素を取り除く「抗酸化物質」としての役割を持っています。そのため、酸化による体の老化にまつわる内臓機能の低下に対抗していくためにも、効果を発揮してくれるでしょう。

また、ゴマリグナンの中のセサミンは体に取り込まれた後、肝臓まで分解されずに直接届いて働いてくれます。同じ抗酸化物質として知られるビタミンCやEでは肝臓にまで届かず、血中の活性酸素の除去だけで終わってしまいます。肝臓の保護作用まで求めるなら、抗酸化効果をアップさせるためにビタミンEと一緒に摂取することをおすすめします。

そして、ごま油の良いところには、ごま油自体が空気に触れる・光や熱の影響を受けることにより起こる酸化の影響が、他の食用油よりも少ないことがあげられます。酸化予防策は必要ながら、他の油よりも保存力に長けているのがごま油の大きなメリットです。

脂質でカロリー確保

ごま油はほぼ脂質なので、1gあたり約9kcalのエネルギー量を持っています。そのため、g(グラム)とml(ミリリットル)の変換でわずかな誤差が出てきますが、ご飯に小さじ1杯程度追加しただけでも、約30kcal程度のカロリーを摂取することになります。

たとえば5㎏の犬が最低限必要とする1日のカロリーが234kcalです。そのため、この量のごま油が手作りご飯に加えられると、約1/8ほどのカロリーがカバーできるというわけですね。

老犬で食欲が落ちていたり、他のエネルギー源である炭水化物やタンパク質でカロリーの確保ができない時には、こういった脂質からカロリーを確保することで対応できます。

犬にごま油を与える際の注意点

注意の看板を持つパグ

次に、ごま油を活用するための注意点も知っておきましょう。先ほどあげたメリットも、「体に良いなら…」とあげすぎてしまうことで、愛犬にとってデメリットに変化してしまうことがあります。

適量は犬それぞれ

犬にとって過剰な脂質は消化不良の元になります。人でも油っぽい料理を食べた後にお腹がゆるくなる人がいるように、犬にとっても体内に取り込んだ脂質を分解して問題なく使うことができる量は個体差があります。

体にとって必要以上の脂肪をとることで、脂肪を分解する酵素を出す膵臓を過剰に働かせてしまいます。愛犬の体にとって良いと思って使ったところ、下痢をしたり膵炎になってしまったらそれこそ逆に愛犬の体に負担をかけてしまいますね。

また、犬にとって油のトッピングがどれくらいならば最適なのかというデータは、そもそも確立されていないのが現状です。

もしも食欲アップのための香りづけ程度に使うなら、最初は小さじ1/2程度でおさめることをおすすめします。犬は嗅覚が人の何倍も優れているので、ほんのちょっとの「良い匂い」だけでも、ご飯に興味を示してくれるでしょう。

皮膚状態の改善のために使う場合も、油だけに効果を期待するのではなく、今行っている治療や薬浴(薬用シャンプーの使用)なども併せて考える必要があります。

過剰な脂肪酸摂取に注意

皮膚や被毛、血中コレステロールの低下に良いとは言っても、過ぎた量は体にとって悪に変わるのは人も犬も同じです。「多く摂ってもうちの子は下痢をしないから!」と言って油やサプリメントで過剰に与えすぎると、悪玉コレステロールだけでなく、善玉コレステロールの低下も起きることなどが人では示唆されています。

油は脂質!肥満に注意

先ほどメリットのところでカロリー摂取量を増やすことができるとお話しましたが、言い換えれば普通の体重を維持できている子にとっては「肥満の元」になります。普段運動などによる消費カロリーが少ない子にとっては、油をトッピングした分は摂取カロリーが過剰になり、それだけ体に蓄えられてしまいます。

高脂肪食は脂肪肝の原因にもなります。たとえ皮膚状態が改善されたとしても、肥満になってしまえば別の内臓機能に負担がかかるため、体重管理には注意が必要です。

ごまアレルギーの可能性

どんな食べ物にもアレルギーを発症するリスクというものは存在します。そのため、ごま油をトッピングするなら、少量与えた後に愛犬の体に変化がないかきちんと見守ってあげてください。

口周りを痒がる、少量でも下痢や嘔吐をするといった時にはごま油を与えることは避けてあげましょう。また、長い期間同じ食材を口にすることで発症する場合もあるので、最初大丈夫だといって一生安心というわけでもありません。

ごま自体が犬に与えられる機会があまりないのでアレルギー源として一般的ではありませんが、念のため注意してあげましょう。

ごま油以外で犬におすすめの油

並べられた様々な種類のオイル

ごま油にも良い栄養素が含まれているように、他の食用油にも「犬に良いのでは?」と期待される効果を持つ油があります。

リノール酸は植物油に豊富

ごま油で紹介した皮膚や被毛の状態を整えるリノール酸は、ほとんどの植物油に豊富に含まれています。

  • 大豆油
  • 綿実油
  • コーン油

などが50%以上の含有量を誇るのはもちろん、グレープシードオイルでは70%を超えます。

ちなみにサラダ油は大豆やとうもろこし、菜種などを原料とした油に手を加えられた(精製された)ものを指します。愛犬にあげるならば、こういった加工をされていない・原料をそのまま抽出した質の良い油を使うことをおすすめします。

オメガ3脂肪酸が豊富な油にも注目

不飽和脂肪酸にはオメガ6脂肪酸以外にも、

  • α-リノレン酸
  • EPA/DHA

といったオメガ3脂肪酸もあります。

α-リノレン酸は亜麻仁(アマニ)油やえごま油に代表され、皮膚のバリア機能の維持に役立つとされています。ごま油にも多少含まれていますが、含有量は圧倒的に亜麻仁油やえごま油の方が多いのが特徴です。

また、犬の体内でα-リノレン酸はEPAやDHAに変換されます。EPAやDHAは魚油の成分としても有名ですね。これらの栄養素は、体の中で起きるさまざまな炎症を抑えてくれる役割を持っています。

そのため、認知症の予防や進行の阻止や皮膚や内臓の保護をはじめ、降圧作用もあることから、心臓や慢性腎不全に陥った腎臓の保護にも活用されることがあります。

さまざまな場面で活用できるオメガ3脂肪酸ですが、最大の難点は酸化しやすいところです。犬用のえごま油やサーモンオイルなどもありますが、保存方法には注意が必要で、温度や光、空気に触れる影響を受けやすい油と言えます。そのため、魚油を活用したカプセルタイプのサプリメントなどで摂取することも検討してみたいですね。

オリーブオイルを使うならエキストラバージン・オリーブオイルを

オリーブオイルに豊富に含まれるオレイン酸は保湿効果を高める役割も担ってくれます。ですが、健康な犬ではオレイン酸自体をドッグフードから十分とれることも多いと考えられています。

あえてオリーブオイルを使うなら、ポリフェノールなどの抗酸化成分を目的として使用するのも良いでしょう。ちなみにオリーブオイルには「ピュア」と「エキストラバージン」があり、ピュアにはポリフェノールなどの成分が含まれていないこともあるので注意しましょう。

まとめ

ごはんの器の前でこちらを見上げる犬

ごま油を愛犬に使う時にはご飯に直接かけることをイメージしますが、犬の中には炒めた食材をおいしく感じる子もいます。手作りご飯やトッピングのための食材を加熱する時に、少量のごま油で炒めて風味をアップするのも愛犬にとっては「食事の楽しみ」につながるでしょう。

また、ごま油自体は酸化に強い油と言われていますが、できる限り新鮮な状態で愛犬にあげたいものですよね。

  • 直射日光を避ける
  • キャップはきちんと閉める
  • 何か月も使いきれない大容量のサイズは避ける

といった油を扱う上での基本的な約束は守るようにしましょう。

ごま油が酸化すると、風味が明らかに落ちたり、異臭や変色を感じます。そういった酸化した油は愛犬の消化や吸収に負担をかけ、体の酸化にもつなげてしまいます。

ごま油はおいしいまま、人も愛犬も一緒に楽しめるよう注意して使用してくださいね。

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