犬にアメリカンチェリーを与えても大丈夫!
犬にアメリカンチェリーをあげてもいいかどうか、という話であえて先に結論を言うならば、「犬も食べれる果物」だと言えます!特に犬の味覚は「甘味」を好む傾向があるため、アメリカンチェリーはおいしい!と感じることができる果物です。
そもそもアメリカンチェリーとは何だろう?と気になった飼い主さんのために解説すると、
- 5月初旬~7月中旬頃まで楽しめる初夏の果物
- アメリカ合衆国のカリフォルニア州オレゴン州ワシントン州などで多く栽培
- 様々な品種があるが、日本に輸入されるのは主に「ビング」と呼ばれる品種
- ビングの別名は外見の赤黒さからダークチェリーと呼ばれる
といったものが特徴としてあげられます!
輸入コストがかかる一方、国産のさくらんぼに比べて価格が安い傾向にあるため、比較的スーパーなどでもお財布に優しい果物とも言えるでしょう。また、さくらんぼに比べて若干日持ちがする、硬めの果肉と酸味の少ない強い甘味が好き!という人も多くいます。
温室栽培のものを除いて、国産のさくらんぼよりも早めに出回ることが多いため、アメリカンチェリーを毎年先に食べ始める人も多いでしょう。アメリカンチェリーの品種にもよりますが、「実が大きめで食べごたえがある濃い目の味」というのが印象に残る果物と言えます!
犬にアメリカンチェリーを与えることで期待できる効果
こういった特徴を持つアメリカンチェリーですが、果たして犬にあげた場合、どんな栄養素が効果を発揮してくれる可能性があるのかぜひ知りたい所ですよね。
犬にアメリカンチェリーをあげた時の栄養効果は、実際には研究があまり進んでいません。ここからはアメリカンチェリーが持つ栄養素から、人でもわかっている効果の範囲で、愛犬に期待できる効能を探っていきましょう!
抗酸化作用
アメリカンチェリーの赤黒い皮部分には、アントシアニンと呼ばれるポリフェノールの1種が含まれています。
体は日々「酸化」することで老化していきますが、
- 肌のハリが失われる
- 白髪
- 視覚、聴覚、嗅覚の低下
- 免疫力の低下
など、老犬になって多くなるこういった症状も、酸化が一因と言われています。
アントシアニンによる抗酸化作用は、体の酸化を押しとどめる効果があると言われているため、老化のスピードをゆっくりにしてくれるのでは?とも考えられています。
利尿作用
カリウムと呼ばれるミネラル成分を、果物の中では比較的含んでいるアメリカンチェリー。
体の中の過剰なナトリウムを、尿と一緒に体外に排出する役割を持つのがカリウムです。この成分は、こういった利尿作用から、むくみの改善や高血圧の予防に適しているのではと考えられています。
ただし、ミネラルバランスをしっかり考えて投薬や食事療法を実施しなければいけない犬は、アメリカンチェリーをあげてもいいかどうか獣医師に確認する必要があります。
皮膚や粘膜のケア
果物全般に言えることですが、ビタミンCを体に取り入れることで、
- コラーゲンの生成を助けて皮膚や粘膜のケア
- 有害な活性酸素を除去して抗酸化作用
といった効果が期待できます。
犬はビタミンCを「生合成」と言って体内で作ることができる動物ですが、体内で作られる量にも限りはあります。そのため、外からも摂取できるのであれば、食事からビタミンCを取ることは重要なのではないかと言われていて研究が行われている段階です。
貧血や体の冷えを改善
葉酸や鉄分などを含むアメリカンチェリーは、たくさん食べることで貧血対策として効果を発揮します。
葉酸はビタミンB群のうちの1つで、血球細胞を形作るための手助けをしてくれます。また、鉄分は赤血球のヘモグロビン成分の大部分になっているため、血を作るためには欠かせない栄養分です。
また、一緒に含まれるビタミンCが、鉄分の吸収を促してくれる役割も持っています。
しかし、
- 小型犬であれば1日にあげられる量が少ないこと
- 野菜や海藻、肉などに葉酸や鉄の含有量がもっと高いものがあること
などから、アメリカンチェリーはあくまで「おやつ」としての位置づけになるでしょう。
犬にアメリカンチェリーを与える時の注意点
犬にとってアメリカンチェリーはおいしく食べれる果物の1つですが、あげる時にはいくつか注意したいことがあります。
愛犬の健康を守るためにも、あげる前にはぜひチェックしておいてください。
あげる時は実の部分だけ!
アメリカンチェリーをあげる時には、必ず「種・茎」は取り除いてからあげましょう。国産のさくらんぼもそうですが、種や茎の中にはアミグダリンと呼ばれる有毒成分があり、噛んで飲みこんでしまうと体内で中毒症状を示す可能性があるからです!
種自体を大量に食べなければ意識障害まで引き起こすことはほとんどありませんが、あえて食べさせる理由はありません!また、他の果物の種も含め、人に比べ消化器官が小さい小型犬にとっては、種が蓄積することによって胃や腸を傷つけたり、腸閉塞の原因になることも。
1粒2粒程度であれば、便と一緒に排泄される可能性も高いですが、万が一複数粒飲んでしまった時には、早めに動物病院で催吐処置を検討する必要がある場合もあります。
あげる量は少量で
多くの果物に言えることですが、甘みの強い果物には糖分が多いもの。与える量が多ければその分肥満の元になることに変わりはありません!
さくらんぼを主食やサプリメントのような効果を期待して食べさせることはほぼ不可能です。あくまで間食・おやつとしての位置づけとして、1kgサイズの超小型犬なら1日1個、5kg程度の子なら3個程度、10kgの子でも5個程度までにとどめておきましょう。
愛犬へのちょっとした楽しみとして捉えておくと良いですね!
また、缶詰・瓶詰加工されたチェリー類は砂糖や着色料の添加が行われていることも多いものです。カロリーがぐっと上がってしまったり、糖分過多になってしまうため、生の果物だけをあげるようにしてください。
アメリカンチェリーは足が速い果物
さくらんぼもそうですが、アメリカンチェリーも国産のさくらんぼよりはやや丈夫とは言え傷みやすい果物です。傷んだ食品をあげることは胃腸の消化や解毒作用にも負担をかけ、愛犬の消化不良の原因にもなります。アメリカンチェリーを購入する時には、新鮮かどうかの目安として、「茎が緑色で茶色がかっていない」「ビング種なら赤黒い色味が濃いもの」を選んでみてください。
そして、アメリカンチェリーを購入したら、少しでも長持ちするように
- パックのまま、もしくはラップに包んで乾燥防止
- 保存温度が上がると傷みやすいので冷蔵庫の野菜室へ
という保管方法を取っておきましょう。
犬にあげる時には、実が傷んでいないかしっかりと確認してからあげるようにしてくださいね!
アレルギーを持っている子は要注意
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を持っている子に新たな食材をあげる時には慎重になる必要があります。
ましてや、ごはんや環境の整備、投薬で症状がコントロールできていた場合、アメリカンチェリーという新たなアレルゲン物質を体の中に入れることで、体が過剰に反応してしまう可能性は否定できません!
食物アレルギーとは、主に体が特定のたんぱく質に対して過剰に反応してしまう免疫反応のことを言いますが、ここにアメリカンチェリーが当てはまる可能性もあります。また、アトピー性皮膚炎の原因の1つとなる花粉でも、物質の構造が似ていることでアレルギー症状が出ることも!中でも「シラカバ」が陽性の場合に対しては、バラ科のさくらんぼ(アメリカンチェリー含む)、りんご、ももなどの果物がそういった交差性を示すことが分かっています。
同時に、さくらんぼにアレルギー反応が見られれば、同じ植物科であるバラ科のりんごやももでも症状が出ることがあるため、与えないようにしなければいけません。
参照:食物アレルギーを誘発する植物起源アレルゲン
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/40/10/40_10_643/_pdf
残留農薬は大丈夫?
飼い主さんの中には、輸入される果物に対する残留農薬を気にされる方もいるでしょう。チェリー類で使われる黒カビ病を防ぐためのイプロジオンという農薬は、日本では使用が禁止されているため、残留農薬検査でもほぼ100%の確率で検出されていません。
わずかに1%ほど検出された例もありますが、それも基準値を大幅に下回っていたため「健康被害はまずない」とされています。
もしも「どうしても心配だし…」という人は、水洗いするだけで残留物の80%が流れ落ちることが分かっているため、洗ってからあげてみると良いでしょう。
犬にさくらんぼを与えても大丈夫?
国産のさくらんぼに関しても、犬に与えても大丈夫な果物と言えます!
きっと気になるのはアメリカンチェリーとの違いといった所でしょう。アメリカンチェリーも国産のさくらんぼも、同じバラ科のミザクラと呼ばれる種で、「佐藤錦」などに代表される国産のさくらんぼは、日本独自で品種改良されてきた果物です。
つまり、アメリカンチェリーも品種が違うだけでさくらんぼの1種というわけですね。
アメリカンチェリーとの違いは、
- 酸味もほどよくある味
- 色味が鮮やかな赤色
- 果肉はアメリカンチェリーに比べ柔らかめ
- 旬は6月上旬から7月上旬頃
といった、食べた時の風味や旬の時期が短いのが特徴。
また、ビタミンの含有量がやや多いのが国産のさくらんぼ、ミネラル成分がやや多いのがアメリカンチェリーです。
ちょっとした栄養素の違いがありますが、アントシアニンの量がアメリカンチェリーの方が多いため、抗酸化成分を期待するならアメリカンチェリーでも良いかもしれません。対して、ビタミンAやCによる皮膚や粘膜のケアに期待したいのなら、国産のさくらんぼを選んでみましょう。
ただし、量をたくさんあげないということには変わりはないため、愛犬がおいしく数粒食べる程度であればどちらでも大丈夫です。国産のさくらんぼもアメリカンチェリーも、あげ方に気をつけて、おいしい旬を逃さず楽しんでくださいね。