ペットフードの栄養成分表示
愛犬のためのフード選び、悩ましいですね。多くの方が一番参考にされるのは原材料ではないかと思いますが、フードのラベルには原材料一覧の下に「成分値」「保証栄養分析値」などの項目で「粗タンパク質◯◯%以上、粗脂肪◯◯%以上、粗繊維◯◯%以下」という表示もありますね。この保証栄養分析値は表示が義務付けられているものですが、実際の意味は曖昧という方も多いのではないでしょうか。
タンパク質の項目の数字が高ければ「お肉が多いんだな」繊維の数字が高ければ「食物繊維が多い製品なんだ」なんとなく納得していても、それぞれの項目についている『粗』というのは何を示しているのでしょうか?
日本のペットフード公正取引協議会でも採用しているアメリカのAAFCO基準での成分表示では、この『粗』の部分はcrudeと表示されます。ここでのcrudeとは「大まかな」という意味です。
一番大切なタンパク質について
フードの成分表示の粗タンパク質の数値が高いと、高品質の良いフードだというイメージがあるかもしれません。しかし、成分表の粗タンパク質とはフードにどれだけ動物性タンパク質が含まれるかや、原材料全体で肉が占めている割合がどれくらいなのかを示すものではありません。
粗タンパク質の表示は、フードを科学分析した数値です。フードに含まれているチッ素の量を測定し、その数値をタンパク質に換算するための定められた係数をかけて算出されます。つまり「粗タンパク質」はフード全体に含まれているチッ素の量から測定された数値というわけです。タンパク質だけが正確にどのくらい含まれているか算出するのは難しいため、大まかな数字であるという意味で「粗タンパク質」という表記がされています。
この数値は動物性タンパク質由来のチッ素だけでなく、コーングルテン、脱脂大豆や小麦グルテンなど、植物性タンパク質由来のチッ素、添加物として使用されているアミノ酸などに含まれるチッ素、タンパク質由来ではないチッ素も全て含んだものです。つまり、生の肉や魚だけをタンパク質源としたフードでも、動物性タンパク質はごく少量で穀物メインのフードでも、粗タンパク質だけを見ると同じような数値になる場合もあるということです。
タンパク質は三大栄養素の一つで犬にとっては重要な栄養素ですから、表示として「最低限〇〇%のタンパク質は保証します」ということを示すため「粗タンパク質◯◯%以上」と表記されます。
そのほかの「粗〇〇」については?
タンパク質の次に表示されているのは「粗脂肪」ですね。フードの分析のための脂肪分検出を行う際、どうしても脂溶性ビタミンやその他の成分も混じってしまうため、大まかな数値という意味で『粗』という表記がされています。
粗脂肪に算定されるのは、オメガ3やオメガ6などの必須脂肪酸源である魚油やヒマワリ油の他、原材料に含まれる脂肪分、風味付けのための油脂など、製品中全ての脂肪分です。脂肪もまた重要な栄養素の一つなので、タンパク質同様に最低含有量の保証を示すために◯◯%以上と表記されます。
その次に表示されているのは「粗繊維」です。これもタンパク質同様に原材料にどれだけ食物繊維が使用されているかの数値ではありません。分析のためにフードを酸やアルカリで煮沸した後に、壊れずに残った成分が粗繊維です。穀物や豆の食物繊維やビートパルプの他に、ミールなどに含まれる難消化性のケラチンなども含む数値になるため『粗』と表記されます。
フード中の繊維は少なすぎてもいけませんが、多すぎても他の栄養素の吸収を阻害することもあるため、タンパク質や脂肪とは反対に含有する最大値を保証することを示すため「粗繊維◯◯%以下」と表記されます。
最後は「粗灰分(そかいぶん)」です。この言葉は一番馴染みがなくて分かりにくいですね。これは分析のためにフードを燃焼させて灰になった物質(タンパク質などの有機物や水分がなくなった状態)がどのくらいあったかを表します。元々のフード100に対して、燃やして残った灰がどれだけあったかということです。残った灰はカルシウムやリンなどのミネラルの量を示します。ミネラルも繊維同様に、フード中に含まれる最大値を示す意味で「粗灰分◯◯%以下」と表記されます。
まとめ
ペットフードに表示が義務付けられている栄養成分で『粗』という表示が頭についているものの意味をご紹介しました。
ペットフードの原材料や成分について様々な情報が飛び交い、リコールなどのニュースも絶えない昨今、表示されている情報についてできるだけ分かるようにしておきたいものです。本当はペットフードの業界が消費者に対してもっとわかりやすい情報発信をしてほしいところですが、消費者も知識をつけて大切なペットを守らなくてはなりませんね。
《参考》 https://petfood.aafco.org/Nutritional-Labeling