【獣医師監修】豊山犬とは?北朝鮮原産の希少な猟犬の特徴と性格、歴史まで解説

【獣医師監修】豊山犬とは?北朝鮮原産の希少な猟犬の特徴と性格、歴史まで解説

豊山犬は、朝鮮半島北部の旧豊山地域で受け継がれてきた希少な猟犬です。本記事では、白を基本とする被毛や力強い体格、性格、歴史、寿命、健康管理を解説します。珍島犬や秋田犬との違い、外交の場で贈られたエピソード、日本で飼育できるのかという疑問にも触れ、子犬の入手方法や費用、海外から迎える際の注意点まで分かりやすく紹介します。国内でほとんど流通しない犬種だからこそ、迎える前に知っておきたいポイントをまとめました。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

豊山犬とは

  • 犬種名:豊山犬(プンサン犬/プンサンケ)
  • 英名:Pungsan Dog(Phungsan Dog)
  • 原産国:北朝鮮
  • 大きさ:中型犬
  • 体高:55cm〜60cm
  • 体重:20kg〜30kg
  • 被毛:厚く密生したダブルコート
  • 毛色:白、オフホワイト(淡い灰色の毛が混じる場合もある)
  • 性格:穏やか、勇敢、粘り強い、独立心が強い、飼い主に忠実
  • 寿命:12歳〜14歳程度
  • 役割:猟犬

豊山犬は、朝鮮半島北部の山岳地帯で受け継がれてきた土着の猟犬です。現在の北朝鮮・両江道金亨権郡周辺にあたる旧豊山地域を原産とし、北朝鮮を代表する在来犬のひとつとして知られています。

日本語では「豊山犬」のほかに「プンサン犬」と表記され、韓国語名に近い呼び方として「プンサンケ」も使われます。英語では「Pungsan Dog」や「Phungsan Dog」と記されますが、いずれも同じ犬種を指す名称です。

日本ではあまり知られていない希少な犬種ですが、単に珍しい犬としてではなく、地域の暮らしと狩猟を支えてきた在来犬として捉えることが大切です。

豊山犬の特徴

上を見上げる豊山犬

豊山犬は、引き締まった体としっかりした骨格を持つ中型犬です。首は太く、胸は幅広く発達しており、山岳地帯を動き回れる力強い体つきをしています。

頭部は丸みを帯び、幅が広く短めのマズルを持ちます。三角形の耳は立ち上がり、先端がわずかに前方へ傾いているのも特徴です。尾は背中側へ巻き上がり、全体として日本犬にも通じる素朴で精悍な姿をしています。

豊山犬の大きさ

豊山犬の体高は55〜60cm、体重は20〜30kgが目安です。体長は60〜65cmとされ、体高よりも胴がやや長い、均整の取れた体型をしています。

筋肉や骨格が発達しているため、数値以上にがっしりとした印象を与えることがあります。性別や個体によって体格には差があるため、これらの数値はおおよその目安として捉えましょう。

豊山犬の被毛と毛色

豊山犬の体には、寒さから身を守るための厚い被毛が密に生えています。体の毛は比較的短く、巻き上がった尾には長く柔らかな毛が見られます。

毛色は白が基本です。個体によっては、白い被毛に淡い灰色の毛が混じることもあります。黒い目や鼻が白い被毛によく映え、凛々しい顔立ちを引き立てています。

豊山犬の性格

顔を寄せ合う飼い主と犬のシルエット

豊山犬は、普段は比較的穏やかでありながら、必要な場面では素早く勇敢に行動する気質を持つとされています。落ち着きと力強さをあわせ持つ犬種ですが、性格には個体差があります。

猟犬として自ら状況を判断しながら行動してきたことから、独立心の強さが表れることもあります。常に人の指示を待つというよりも、周囲の様子を見ながら自分で動こうとする傾向があると考えられます。

なお、猟犬としての勇敢さは、無条件に攻撃的であることを意味しません。育った環境や人との関わり方によっても行動は変わるため、犬種に伝わる気質だけですべての個体の性格を判断しないことが大切です。

豊山犬の歴史

豊山犬は、かつて豊山郡と呼ばれた現在の北朝鮮・両江道金亨権郡周辺で、古くから飼育されてきた土着の犬です。山の多い厳しい環境のなかで、猟師とともに獲物を追う狩猟犬として受け継がれてきました。

詳しい起源は明らかになっていません。一説には、ロシアのアムール川流域で虎などの狩猟に使われていた北方犬のライカと関係があるとされていますが、確定した説ではありません。

1942年6月には、朝鮮総督府によって天然記念物第128号に指定され、保護の対象となりました。戦後も北朝鮮で天然記念物として保護され、1975年には旧豊山地域に繁殖施設が設けられるなど、保存と繁殖が進められています。

豊山犬にまつわるエピソード

スーツを着て握手をする2人の男性の手元

豊山犬は、朝鮮半島の南北交流を象徴する贈り物として、たびたび外交の場に登場しています。2000年に初めて南北首脳会談が行われた際には、北朝鮮から韓国へ「ウリ」と「トゥリ」という2頭の豊山犬が贈られました。

2018年の南北首脳会談では、北朝鮮の金正恩総書記から韓国の文在寅大統領へ、オスの「ソンガン」とメスの「コミ」が贈られています。

韓国へ渡った時点でコミは妊娠しており、その後6頭の子犬を出産したことでも注目を集めました。

さらに2024年には、北朝鮮を訪問したロシアのプーチン大統領に対して、つがいの豊山犬が贈られました。このように豊山犬は、北朝鮮を代表する犬として、友好関係や交流を示す象徴的な役割も担っています。

豊山犬は日本で飼える?

犬用の首輪とリードが置いてある光景

豊山犬は、日本で飼育すること自体が全国一律に禁止されている犬種ではありません。ただし、国内ではほとんど流通しておらず、一般的なペットショップやブリーダーから迎えることは難しい犬種です。

また、日本では北朝鮮を原産地または船積地域とする貨物の輸入が禁止されているため、北朝鮮から豊山犬を直接輸入することはできません。

第三国で繁殖された個体を検討する場合も、原産地や取引経路を明確にしたうえで、経済産業省や動物検疫所へ事前に確認する必要があります。

海外から犬を迎える場合は、輸出国に応じた動物検疫の手続きも必要です。マイクロチップによる個体識別、狂犬病予防注射、抗体検査、輸出国政府機関が発行する証明書など、複数の条件を満たさなければなりません。

豊山犬の子犬や費用に関する情報

日本国内では豊山犬の子犬に関する継続的な販売情報がほとんどなく、信頼できる価格相場も確立されていません。海外の販売情報が見つかった場合でも、掲載価格だけを一般的な相場と考えないようにしましょう。

海外から迎える際は、子犬の代金だけでなく、輸送費、マイクロチップの装着費用、予防接種や抗体検査の費用、各種証明書の発行費用などがかかる可能性があります。

手続きに不備があると、予定どおりに輸入できないこともあるため注意が必要です。

販売者の身元や飼育環境、個体の出生地、血統を裏付ける資料なども慎重に確認してください。豊山犬に似た外見の犬が、豊山犬として紹介されている可能性も考慮する必要があります。

豊山犬を飼う前に確認したいこと

豊山犬を迎える際は、合法的な入手経路を確保できるかだけでなく、十分な飼育スペースや運動時間を用意できるかも確認しましょう。力の強い犬を安全に管理できる設備や、脱走を防ぐための環境も欠かせません。

周囲の人やほかの動物とのトラブルを避けるため、子犬の頃からさまざまな環境に慣らし、一貫したしつけを行う必要があります。

住んでいる自治体の条例や集合住宅の飼育規約についても、迎える前に確認しておくことが大切です。

入手できる可能性だけで判断せず、長期にわたって安全に飼育できる環境と知識があるかを慎重に検討しましょう。

豊山犬の寿命と健康管理

犬の足元に置かれた聴診器

豊山犬の寿命は、海外の犬種情報などでは10〜14歳ほどがひとつの目安とされています。ただし、飼育頭数が少なく、犬種ごとの大規模な調査も確認されていないため、明確な平均寿命は分かっていません。

また、豊山犬に特有のかかりやすい病気についても、信頼できる統計はほとんどありません。健康を維持するには、定期的な健康診断を受け、体重や食欲、飲水量、排泄、歩き方などの変化を日頃から確認することが大切です。

体重が増えすぎると足腰への負担が大きくなるため、年齢や活動量に合った食事量を心がけましょう。歯周病を防ぐための歯磨き、ワクチン接種、フィラリアやノミ・マダニなどの予防も欠かせません。

被毛に覆われた皮膚は異変に気づきにくいため、ブラッシングの際に赤みや湿疹、しこり、脱毛がないか確認します。少しでも気になる変化が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

豊山犬に似た犬種

犬小屋の前に立って正面を見つめる珍島犬

豊山犬は、三角形の立ち耳や背中側へ巻いた尾、寒さに対応する厚い被毛を持つことから、珍島犬や秋田犬と似て見えることがあります。ただし、原産地や体格、毛色、犬種としての公認状況には違いがあります。

珍島犬との違い

珍島犬は、韓国の珍島を原産とする中型犬です。豊山犬と同じ朝鮮半島の在来犬であり、引き締まった体や立ち耳、巻き尾など、外見上の共通点が多くあります。

体高は珍島犬がオス50〜55cm、メス45〜50cmとされるのに対し、豊山犬は55〜60cmが目安です。そのため、豊山犬のほうがやや大きく、骨格や胴まわりにも力強さを感じさせます。

毛色にも違いがあり、白を基本とする豊山犬に対して、珍島犬にはレッド・フォーン、ホワイト、ブラック、ブラック・アンド・タン、ウルフ・グレー、ブリンドルなどがあります。

また、珍島犬は国際畜犬連盟に公認され、ジャパンケネルクラブでも犬種として扱われていますが、豊山犬には同様の国際的な犬種標準がありません。

秋田犬との違い

秋田犬は日本原産の大型犬で、豊山犬と同じように三角形の立ち耳と巻き尾を持ちます。白い秋田犬は豊山犬とよく似ていますが、秋田犬のほうが骨量が多く、頭部や胸まわりにも重厚感があります。

秋田犬の体高はオスが67cm前後、メスが61cm前後で、55〜60cmとされる豊山犬よりも一般に大きめです。ただし、豊山犬とメスの秋田犬では体高の範囲が近くなることもあります。

毛色は、豊山犬が白を基本とするのに対し、秋田犬には赤、胡麻、虎、白があります。体格の大きさや毛色の種類を確認すると、外見が似た個体でも両犬種を見分けやすくなるでしょう。

まとめ

豊山犬は、朝鮮半島北部の旧豊山地域で受け継がれてきた中型の猟犬です。白を基本とする厚い被毛、立ち耳、巻き尾、引き締まった力強い体つきを持ち、穏やかさと勇敢さ、独立心をあわせ持つとされています。

北朝鮮を代表する在来犬として保護され、南北交流や外交の場で贈られたことでも知られています。

日本で飼育すること自体が一律に禁止されている犬種ではありませんが、国内での流通はほとんどなく、北朝鮮からの直接輸入もできません。

寿命や犬種特有の病気について信頼できる統計は少ないため、迎える場合は入手経路を慎重に確認し、十分な運動環境や脱走対策、日常的な健康観察を整える必要があります。

珍しい外見だけで判断せず、猟犬として受け継がれてきた背景と飼育の難しさを理解することが大切です。

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