ダッチシェパードの歴史
- 正式名称:ダッチシェパード(Dutch Shepherd)
- 原産国:オランダ
- 分類:牧羊犬/作業犬
- サイズ:中型(大型寄りの中型)
- 体高:オス 57〜62cm/メス 55〜60cm
- 体重:オス 28〜30kg/メス 23〜25kg
- 被毛:短毛・長毛・粗毛(ラフ/ワイヤー)の3種類
- 毛色:ブリンドル(虎毛)のみ
- 性格:非常に賢い・運動欲求が高い・忠誠心が強い・警戒心あり
- 寿命:11〜14年
ダッチシェパードはオランダ原産の牧羊犬で、何世紀にもわたり農村部で羊を誘導したり農場を守るために活躍してきました。
彼らは特定の目的で人為的に作出された犬ではなく、厳しい農作業をこなせる強靭な能力と優れた知性を備えていたことから、自然な選抜を経て現在の犬種へと定着しました。
現代では牧羊の機会は減少しましたが、その知性と適応力により、軍用犬や警察犬、捜索救助犬として活躍の場を広げています。
牧羊犬から警察犬へ役割が変化
19世紀末以降、農業の近代化とともにオランダの牧羊業は徐々に衰退しました。それに伴いダッチシェパードの個体数も一時激減しましたが、彼らが持つ訓練性能と作業意欲の高さが新たな可能性を拓きました。
20世紀に入ると、軍や警察機関がその能力に着目し、本格的に訓練犬として採用されるようになったことで、犬種としての存続が可能になりました。
名前に込められた意味
ダッチシェパード(Dutch Shepherd)という犬種名は、「オランダの羊飼いの犬」を直訳したもので、その原産国と役割を明確に示しています。
最初の犬種標準(スタンダード)は1898年に定められましたが、1914年以降は「ブリンドル(虎毛)」以外の被毛が認められなくなり、現在の犬種としての特徴が明確化しました。
日本ではきわめて希少な犬種
ヨーロッパでは作業犬として知られていますが、日本国内ではほぼ流通しておらず、専門のブリーダーも限られています。
一般的なペットショップで見かけることは極めてまれで、国内での認知度は非常に低いのが現状です。そのため、日本での飼育を検討する際には、専門的なルートを通じた入手が必要となります。
甲斐犬と似るが歴史的つながりはない
ダッチシェパードの大きな特徴である虎毛(ブリンドル)は日本原産の甲斐犬にも見られます。そのため、外見上似ていることから関連性を疑われることがありますが、両者に遺伝的なつながりはなく、地理的にも歴史的にも独立して進化した犬種です。
虎毛という被毛パターンは、異なる地域や犬種において偶然にも共通して現れたものに過ぎません。
ダッチシェパードの特徴
ダッチシェパードは引き締まった筋肉質の体を持ち、中型の作業犬としての機能美を兼ね備えています。
立ち耳とアーモンド形の目は知性を感じさせる表情を作り、活動的な印象を与えます。ジャーマンシェパードやベルジアンシェパード(マリノア)に似ていますが、独特なブリンドル(虎毛)の被毛パターンによって明確に区別されます。
均整の取れた体格は、優れた持久力と瞬発力を発揮するのに適しており、無駄のないしなやかな動きを可能にしています。
ダッチシェパードの大きさ
ダッチシェパードは中型犬の範囲に含まれますが、一般的な中型犬よりはやや大きめで、体格的には大型犬に近い印象です。成犬として完成するまでに約1年半〜2年ほどかかります。
標準的な体高はオスが57〜62cm、メスが55〜60cm、体重はオスが約28〜30kg、メスが約23〜25kgとなっています。体の成長速度は速いものの、骨格が完全に固まるまでは過度な運動を控える必要があります。
ダッチシェパードの被毛タイプ
ダッチシェパードには「短毛(ショートヘア)」「長毛(ロングヘア)」「粗毛(ラフヘア/ワイヤーヘア)」という3つの被毛タイプがあります。
短毛タイプは硬く短い被毛が密生しており、もっともよく見られます。長毛タイプは首回りや尾、四肢の後方に豊かな飾り毛があり、優雅な印象です。粗毛タイプは硬く針金のような毛質が特徴で、3タイプのなかでも最も希少とされています。
いずれのタイプもアンダーコート(下毛)とオーバーコート(上毛)のダブルコート構造を持ち、換毛期には大量の毛が抜けるため、定期的なブラッシングが欠かせません。
ダッチシェパードの毛色の種類
ダッチシェパードとして認められている毛色は「ブリンドル(虎毛)」のみです。ブリンドルとは、ベースとなる地色に対して黒い差し毛が縞状に入る被毛パターンのことを指します。
地色は茶色系の「ゴールド・ブリンドル」と灰色系の「シルバー・ブリンドル」の2種類に分類されます。縞模様の濃淡や入り方には個体差があり、それぞれ異なる印象を与えます。この虎毛が他のシェパード系犬種との大きな識別ポイントとなっています。
ダッチシェパードの性格
ダッチシェパードは高い知能と飼い主への深い忠誠心を備えている犬です。牧羊犬としての長い歴史から強い作業意欲を持ち、判断力と状況対応能力に優れています。
家族には愛情深く接しますが、知らない人や動物に対しては警戒心が強い傾向があります。そのため初心者が簡単に扱える犬ではありません。
豊富な運動と知的刺激が不足すると、ストレスを感じ問題行動を起こすこともあります。十分な運動と一貫した訓練が可能であれば、非常に頼もしく、優れた家庭犬としても活躍できます。
ダッチシェパードの飼い方
ダッチシェパードは非常に知的で活動的な犬であり、飼育には十分な環境整備と日々の丁寧なケアが不可欠です。適切な住環境や日々の管理方法を理解することで、彼らが健康で快適に暮らせるようになります。
動き回れる環境づくりが必須
十分に動き回れる庭付きの一戸建てが理想的ですが、アパートやマンションでも飼育は可能です。ただし、集合住宅の場合は日常的に屋外での活動時間を多めに設ける必要があります。
また、室内では人通りや音に過敏に反応しないように、犬が落ち着ける静かな空間をケージやクレートで用意してあげることも重要です。
運動量に合う栄養管理が必要
ダッチシェパードは筋肉質で非常に活動的なため、高品質でタンパク質が豊富なドッグフードを選びましょう。
運動量に応じて食事量を調整し、肥満にならないように注意が必要です。特に運動量の少ない日は食事量を減らし、体型管理を徹底しましょう。
こまめなブラッシングが欠かせない
ダブルコートの被毛を持つダッチシェパードは、抜け毛が多く換毛期には特に注意が必要です。普段からブラッシングをこまめに行い、死毛や汚れを取り除きましょう。
シャンプーは月に1回程度に留めるのが理想的で、頻繁に洗いすぎると皮膚のバリア機能を損なう恐れがあります。また、犬特有の体臭は比較的少ないですが、定期的なケアは欠かせません。
ダッチシェパードの運動量
ダッチシェパードは非常に運動量の多い犬種で、日常の散歩だけでは満足しません。1日2回、各1時間前後を目安に、ジョギングや速歩を取り入れた散歩が理想的です。
また、単なる身体運動だけでなく、ボール遊びやフリスビーといった知的刺激を伴う運動を取り入れると、精神的にも満足度が高まります。
定期的にドッグランで自由に走らせたり、アジリティやノーズワークといったドッグスポーツに参加させたりすると、充実した生活を送ることができます。
ダッチシェパードのしつけ方
ダッチシェパードは優れた知性を持ち、物覚えも早い犬ですが、その分、飼い主が一貫した姿勢で接する必要があります。子犬の時期から社会化トレーニングをしっかり行い、様々な人、犬、環境に慣れさせることが重要です。
しつけの基本は、罰ではなく褒めて伸ばす「ポジティブトレーニング」です。指示は明確に伝え、できたらすぐ褒めることで、飼い主との信頼関係が深まり、より良い結果を生み出します。
特に「おすわり」「待て」など基本的な指示を繰り返しトレーニングすることが、飼いやすさに繋がります。
ダッチシェパードの価格相場
ダッチシェパードは国内での流通量が極めて少ない希少犬種のため、一般的なペットショップでの取り扱いはほとんどありません。
専門ブリーダーを通じて入手する場合、希少性や血統、訓練レベルによりますが、おおよそ50万円以上、場合によってはそれを大きく上回ることもあります。
また、海外から輸入する場合には、輸送費や検疫費用も別途かかるため、さらに高額になる傾向があります。
ダッチシェパードのブリーダーを探す方法
ダッチシェパードは国内では非常に希少であるため、一般的なペットショップで出会える可能性は極めて低いです。
そのため、この犬種を迎えたい場合は専門のブリーダーを探すことが必要です。インターネットを活用してダッチシェパード専門の犬舎や、希少犬種を取り扱うブリーダーの情報を収集しましょう。
ブリーダーを選ぶ際は、親犬の健康状態や飼育環境、犬種への知識や愛情をしっかりと確認し、信頼できるところを選ぶことが大切です。
また、場合によっては海外の犬舎から輸入する選択肢もありますが、手続きや費用、検疫に関する知識が必要です。
ダッチシェパードの寿命
ダッチシェパードの平均寿命は11年から14年とされています。寿命は犬ごとに個体差があり、飼育環境や健康管理によっても大きく変動します。
できる限り長く健康的に暮らしてもらうためには、日常的に適切な運動を行い、栄養バランスの取れた食事を与えることが重要です。
また定期的に健康診断を受け、股関節や肘関節、眼の病気といった遺伝的疾患の早期発見に努めることが、ダッチシェパードが長生きする秘訣です。
ダッチシェパードのかかりやすい病気
ダッチシェパードは比較的健康的な犬種とされていますが、体格や遺伝的背景から注意しておきたい病気がいくつかあります。
これらの病気は早期発見・早期対処によって進行を遅らせたり、症状を軽減できることが多いため、日頃から健康状態をよく観察しておくことが大切です。
股関節形成不全
大型犬や作業犬種に多い「股関節形成不全」は、股関節が正常にかみ合わず、痛みや歩行の異常につながる疾患です。
成長期の過度な運動や肥満が悪化要因となることがあるため、子犬の時期から無理な運動を避け、適切な体重管理を行うことでリスクを下げられます。早期に異変に気づくためにも、定期的な触診や歩き方のチェックが重要です。
肘関節の異常による跛行
「肘関節形成不全」は前足の肘の構造がうまく発達しないことで生じ、足を引きずるような歩き方(跛行)や痛みが現れます。
こちらも成長期の生活環境に影響されるため、滑りやすい床材を避ける、段差の多い場所での激しい運動を控えるなど、日常生活の工夫が予防につながります。
遺伝性の眼疾患・進行性網膜萎縮症(PRA)
進行性網膜萎縮症(PRA)は遺伝性の目の病気で、夜間の視力低下から始まり、徐々に視力を失っていく可能性があります。早期発見が難しいため、動物病院での定期的な眼科検診が推奨されます。
繁殖段階で遺伝子検査を行っているブリーダーも多いため、迎える際には親犬の検査結果を確認しておくと安心です。
筋疾患・免疫疾患
頻度は高くありませんが、ダッチシェパードでは筋疾患(ミオパチー)や免疫関連の疾患が報告されることもあります。
運動後の疲れやすさ、筋力低下、歩行の乱れなどが見られた場合には早めの受診が望ましいです。これらの疾患は専門的な診断が必要となるため、日常の変化に気づきやすい環境づくりが重要です。
これらの病気はいずれも早期ケアや適切な飼育管理によって症状の悪化を防ぐことができます。定期的な健康診断や日常の観察を欠かさず、早期発見につなげることがダッチシェパードの健康維持に役立ちます。
ダッチシェパードを飼う際の注意点
ダッチシェパードは優れた知性と高い活動性を持つため、安易な気持ちで迎えることは避けましょう。
運動不足や刺激不足は犬のストレスにつながり、問題行動を引き起こす可能性があります。毎日の運動や訓練に十分な時間を確保し、犬が健康的に生活できる環境を整えることが重要です。
また、運動能力が非常に高く、ジャンプ力もあるため、庭で飼う場合には1.8メートル前後の高さで十分な強度のあるフェンスを設置することが推奨されます。フェンスの強度や高さが不十分だと脱走のリスクがあります。
さらに、警戒心が強い性質を持つため、幼少期からの社会化が欠かせません。他の犬や人との交流を定期的に行い、過度な警戒や攻撃的な行動を防ぐよう努めてください。
まとめ
ダッチシェパードはオランダ原産の牧羊犬で、引き締まった体格と虎毛(ブリンドル)の美しい被毛が特徴的です。
知能が高く飼い主に忠実ですが、その分、運動量や訓練に対する要求も高く、初心者にはややハードルの高い犬種と言えます。健康面では股関節形成不全や肘関節形成不全、進行性網膜萎縮症など、遺伝性疾患の可能性があるため注意が必要です。
国内では希少で入手は困難ですが、専門ブリーダーを通じて迎えることが一般的です。十分な運動や社会化、定期的なケアを行える環境があれば、非常に頼もしく優れたパートナーとなってくれるでしょう。



