イングリッシュ・ポインターとはどんな犬?
- 犬種名:イングリッシュ・ポインター(English Pointer)
- 原産国:イギリス
- 分類:大型犬/鳥猟犬(ガンドッグ)
- 体高:オス 63〜69cm/メス 61〜66cm
- 体重:オス 25〜34kg/メス 20〜29kg
- 毛色:ホワイトを基調にレバー・レモン・ブラック・オレンジなどの組み合わせ
- 性格:穏やかで人懐こく、活発で知的
- 寿命:12〜15年
イングリッシュ・ポインターは、鳥猟犬としてイギリスで発展した大型犬です。獲物を見つけると静止姿勢で鼻先でその位置を示す「ポインティング」が最大の特徴で、この美しい姿勢が名前の由来にもなっています。
筋肉質でエネルギッシュな体つきをもち、活動的な性格と知性をあわせ持つことから、家庭犬としてだけでなくスポーツやアウトドアを楽しむパートナーにも向いています。
また、人と深く関わることを好むため、運動量やコミュニケーションの時間をしっかりと確保できる家庭に適した犬種です。
イングリッシュ・ポインターの歴史
イングリッシュ・ポインターの起源にはいくつかの説がありますが、一般的には18世紀初頭(1713年前後)にスペインからイギリスへ持ち込まれたスパニッシュ・ポインターが元祖と考えられています。
当時のイギリスでは、この犬をフォックスハウンド、グレーハウンド、各種セッターなどと交配して、狩猟能力をさらに高めるための改良が重ねられました。その結果、優れた嗅覚とスピード、持久力を併せ持った猟犬として現在の姿に定着しました。
特にヤマシギやウズラなどの鳥類を探し出し、ハンターに獲物の位置を静止姿勢で指し示す能力に秀でており、この独特の行動を「ポインティング」と呼ぶことから犬種名が定まりました。
イギリス国内のみならず、その後ヨーロッパ各地やアメリカへも伝わり、今日では世界中でスポーツドッグや家庭犬として愛されています。
イングリッシュ・ポインターの特徴
イングリッシュ・ポインターは、猟犬として必要な能力を追求して改良されてきた犬種であり、その外見にも機能的な美しさが現れています。
力強さとスピードを兼ね備え、ひと目で運動能力の高さがわかる筋肉質の体格が印象的です。また、被毛は短く密で滑らかであり、手入れがしやすいことも魅力のひとつです。
体格
全身が引き締まった筋肉に覆われており、猟場で長時間走り回るための優れた持久力と俊敏性を備えています。
深く発達した胸部は心肺機能の高さを示し、長くまっすぐな四肢は広大なフィールドを駆け巡るのに適しています。尾は付け根が太く先端に向かって細くなる形状で、走る際には水平またはやや上向きに保たれます。
被毛のタイプ
短く密なシングルコートの被毛は光沢があり、汚れがつきにくいためお手入れが簡単です。
ただし短毛でも抜け毛はあり、季節の変わり目には多少抜け毛が増えることがあります。定期的なブラッシングを行うことで、抜け毛を抑え皮膚の健康を保つことができます。
顔立ち
鼻先から目元までの部分(マズル)は適度な長さがあり、嗅覚の鋭さを示しています。額と鼻筋の境目(ストップ)ははっきりとしていて、知的で穏やかな表情をしています。
高めの位置から頬に沿って垂れる耳が特徴的で、親しみやすい柔和な雰囲気を醸し出しています。
体格や毛色が類似する犬種としてビーグルやジャーマンポインターなどが挙げられますが、イングリッシュ・ポインターはより脚が長く、走行姿勢が軽やかで優雅な点に違いがあります。
イングリッシュ・ポインターの性格
イングリッシュ・ポインターは明るく活動的で、とても賢い犬種です。
家庭内では穏やかで優しく、家族に対して強い愛情と忠実さを示します。他の犬や小さな子供とも友好的な関係を築くことができるため、多頭飼育やファミリーでの飼育にも向いています。
一方で猟犬として培われた豊富なエネルギーを持っており、運動不足や刺激不足はストレスにつながることがあります。そのため、毎日の運動やコミュニケーションが十分に行える環境でこそ、穏やかで友好的な本来の気質が発揮されます。
好奇心が強く、物事をすぐに理解する賢さがありますが、そのぶん退屈を嫌う傾向があるため、日常的な遊びや知的刺激を取り入れた生活を心がけると良いでしょう。
イングリッシュ・ポインターの大きさ
イングリッシュ・ポインターは大型犬に分類され、成犬の体高(地面から肩までの高さ)はオスで63cm〜69cm、メスで61cm〜66cm程度です。体重はオスで25kg〜34kg、メスで20kg〜29kgほどが標準的です。
子犬の時期には急激に成長しますが、筋肉や骨格が完全に成熟するまでにはおよそ1年半〜2年かかります。体格に見合った十分な運動と栄養管理を心がけることで、バランスよく健康的に成長させることができます。
大柄でエネルギッシュな犬種のため、日々の運動を十分に行える広さや環境を整えてあげることが、心身の健康維持に欠かせません。
イングリッシュ・ポインターの毛色の種類
イングリッシュ・ポインターの毛色はホワイト(白)を基調として、レバー(濃い茶色)&ホワイト、レモン(薄い黄色)&ホワイト、ブラック(黒)&ホワイト、オレンジ&ホワイトといった組み合わせが一般的です。
これらの色は、斑点状(スポット)や大きな斑(パッチ)として現れることが多く、犬によって模様の入り方が異なります。
レバー、レモン、ブラック、オレンジなどの単色も認められますが、主流はホワイトとのコンビネーションです。毛色の細かな規定は登録団体によって異なる場合があるため、ドッグショーや繁殖を考える際には最新の基準を確認するのがよいでしょう。
斑点模様から一見ダルメシアンと似ているように感じる方もいますが、体型や用途、気質の面で大きく異なる犬種です。
イングリッシュ・ポインターの値段相場
イングリッシュ・ポインターの子犬の一般的な価格相場は、18万円から30万円前後となっています。ただし、血統や親犬のドッグショーなどでの実績、健康管理の状況などにより、価格は大きく変動します。
日本ではトイ・プードルや柴犬などの人気犬種に比べて流通が少ないため、価格設定もブリーダーごとに差があるのが実情です。希少犬種であることを理解し、価格だけでなく健康状態や親犬の性格、育った環境なども考慮して選ぶことが重要です。
また、購入後には毎日の食費、医療費、トレーニング費用などの維持費も考えておく必要があります。
イングリッシュ・ポインターのブリーダーを探す方法
イングリッシュ・ポインターは日本では流通数が少なく、一般のペットショップで販売される機会はほとんどありません。そのため、この犬種を専門的に扱っている信頼できるブリーダーを探すことが重要になります。
具体的な方法としては、ジャパンケネルクラブ(JKC)のウェブサイトを利用したり、犬種ごとの愛好家グループ、ドッグショーなどのイベント情報を参考にすると良いでしょう。
また、実際に犬舎を訪れて親犬の健康状態や性格、飼育環境の清潔さを自分の目で確かめることが、良いブリーダーを見極めるポイントです。
稀ではありますが、猟犬を引退した成犬や、保護施設で新しい家庭を待つ保護犬が里親を募集している場合もあります。動物保護団体などの譲渡情報を定期的に確認するのも一つの方法です。
イングリッシュ・ポインターの飼い方
イングリッシュ・ポインターはもともと猟犬として改良された犬種であるため、家庭で飼育する場合にもその特性に合わせた環境やケアが必要です。
特に、日常的な運動の確保、安全で快適な居住空間の整備、そして被毛のお手入れがポイントになります。
運動量
豊富なエネルギーを持つイングリッシュ・ポインターにとって、運動量の確保は最も重要なポイントです。
成犬の場合、1日に1時間程度の運動を2回行うことを目安とし、散歩だけでなく、広めのドッグランなどで自由に走り回れる環境を定期的に用意すると、精神的な満足感を与えられます。
飼育環境
家庭内では、ゆったりとしたスペースにケージやクレートを設置し、犬が安心してくつろげる専用スペースを確保してください。
また、自宅の庭で自由に遊ばせる際は、フェンスを頑丈で十分な高さのあるものにして、脱走や事故を未然に防ぐ工夫が必要です。
日常のお手入れ
被毛は短毛で手入れが簡単ですが、抜け毛は一定量あります。週1〜2回ほどラバーブラシや獣毛ブラシを使ってブラッシングし、被毛の清潔を保つようにしましょう。
また、垂れ耳の犬種は耳の中が蒸れやすいため、定期的に耳の汚れをチェックし、イヤーローションなどで優しくお手入れしてください。
イングリッシュ・ポインターのしつけ方
イングリッシュ・ポインターは賢く飼い主の指示を理解する力が優れていますが、猟犬ならではの自立心や好奇心の強さも持ち合わせています。
そのため、子犬の頃から信頼関係を築きつつ、根気よく一貫した方法でトレーニングを進めることが重要です。
基本的なしつけの際には、叱って従わせるのではなく、できた時にしっかりと褒める「ポジティブトレーニング(陽性強化)」が効果的です。トレーニングは短時間で集中して行い、ゲーム感覚の要素を取り入れると飽きずに楽しんで学ぶことができます。
特に、散歩時の引っ張り癖や呼び戻し(リコール)のトレーニングは重要です。子犬の頃から飼い主の横につく練習(ヒールウォーク)や、どんな状況でも呼ばれたら必ず戻る習慣をつけることが、安全に暮らすための鍵になります。
イングリッシュ・ポインターの寿命
イングリッシュ・ポインターの平均寿命は12歳から15歳ほどで、大型犬の中では比較的長寿な犬種と言われています。
健康で長生きするためには、年齢に応じた適度な運動を毎日継続し、栄養バランスの整った食事で肥満を防ぐことが大切です。特にシニア期に入ったら運動量を調整し、無理なく健康を維持できるよう心がけましょう。
また、病気を早期に発見するために、定期的な健康診断を受ける習慣をつけることが重要です。日頃から愛犬の様子をよく観察し、少しでも変化があれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。
イングリッシュ・ポインターのかかりやすい病気
イングリッシュ・ポインターは全般的に丈夫で遺伝疾患が少ない犬種とされていますが、大型犬に共通する病気や犬種特有の注意すべき疾患も存在します。
健康管理と予防のために、飼い主がこれらを理解し日常的に観察をすることが重要です。
股関節形成不全
股関節形成不全とは股関節が正常に発達しない病気で、歩く際に腰を左右に振るような歩様(モンローウォーク)が特徴的です。
遺伝的要因のほか、子犬期の過度な運動や肥満も発症リスクを高めるため、適切な運動管理と体重維持が予防につながります。
胃捻転
胃捻転は大型犬で特に胸の深い犬種がかかりやすい疾患で、胃がねじれてしまい急激にショック状態に陥る危険な病気です。
発症予防のためには、食事を一日に数回に分け、食後すぐの激しい運動は避けるようにしましょう。
皮膚疾患
アレルギー性皮膚炎や摩擦による皮膚炎などの皮膚トラブルに注意が必要です。
日頃から定期的なブラッシングを習慣化し、皮膚の赤み、かゆみ、脱毛といった症状がないかをチェックすることが、早期発見・早期治療につながります。
眼疾患
イングリッシュ・ポインターでは白内障や進行性網膜萎縮症(PRA)など、目の病気にも注意が必要です。
特に進行性網膜萎縮症は徐々に視力が失われる病気で、暗い場所を嫌がったり物にぶつかる回数が増えたりするなど、行動に異変が見られた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
まとめ
イングリッシュ・ポインターは、鳥猟犬として培われた高い運動能力と穏やかで社交的な性格を兼ね備えた犬種です。その特性を理解し、毎日の運動やコミュニケーションを十分に行える環境で飼育することが重要となります。
体のお手入れは比較的簡単ですが、抜け毛や皮膚トラブルなど日常的なケアが欠かせません。しつけ面では陽性強化トレーニングを心がけ、早い時期から信頼関係を築くことが大切です。
適切な管理と愛情を持って接することで、良き家庭犬として長く一緒に暮らせるでしょう。



