トイプードルのミスカラーとは?
トイプードルのミスカラーとは、スタンダードで定められている毛色(単色)以外の毛色が一部混じっている状態を指します。
トイプードルは通常、アプリコット、レッド、ブラウン、ホワイト、ブラック、シルバーなど、単色の毛色を持つことが理想とされています。
しかし、遺伝的な要因などにより、これらの単色の中に別の色の毛が斑点のように混ざったり、ブチ模様になったりすることがあります。これが「ミスカラー」と呼ばれます。
ミスカラーは、健康上の問題を引き起こすわけではありません。あくまで血統書やドッグショーにおける評価基準の問題です。
日本でのトイプードルの毛色の基準については、犬種の健全な発展と保存を目的とした団体「ジャパンケネルクラブ(JKC)」が定める公式な基準が存在します。
なお、2024年~2026年にかけてJKCが定義するミスカラーの基準が大きく見直される動きがあり、これまでよりも多くの毛色が認められるようになります。
この記事では、JKCの最新基準に基づいたトイプードルの「ミスカラー」について、その定義から特徴、お迎えする際の注意点までを詳しく解説します。
「ミスカラーの定義」は時代とともに見直されている
ミスカラー基準は時代と共に見直されることがあり、最新の規定ではこれまでスタンダード外とされてきた複数の色が混ざる「パーティー・カラー」などが公式に認められました。
その一方で、新たにスタンダードから外れると定められた特定の単色が存在します。現在では、これらの特定の単色や、単色にホワイトの斑が部分的に混じっている状態を「ミスカラー」と呼ぶのが正確な定義となります。
参考:パーティー・カラー、トライカラー、及びその他の複数色等の犬の取り扱いについて[2024年8月1日(登録日)以降実施]
ミスカラーの定義
JKCの最新規定により、トイプードルの毛色の定義は大きく変わりました。従来ミスカラーと呼ばれていたパーティー・カラーやファントム・カラーはスタンダード(犬種標準)内の毛色として認められています。
現在の「ミスカラー」とは、レッドやオレンジ(アプリコット)といった単色の個体の胸元や足先に白い毛が混じることや、2026年1月1日以降にスタンダード外となるベージュなどの5つの特定の単色を指します。
これらの毛色はあくまでJKCが定めた展覧会などにおける基準から外れるというだけであり、犬の健康やペットとしての価値に直接的な影響を与えるものではありません。
ミスカラーが生まれる原因
ミスカラーとされる特定の単色が生まれる主な要因は、毛色を決定する遺伝子の組み合わせにあります。
特に、ブラックやブラウンといった基本となる色素を薄める働きを持つ「希釈遺伝子(ダイリューション遺伝子)」が関与していることが知られています。
両親犬がこの希釈遺伝子を持っていても表面上は濃い色の場合、その子犬に遺伝子が受け継がれることで、ブルーやカフェ・オ・レといった淡く美しい毛色が発現します。
これは遺伝の法則に基づく自然な現象であり、決して異常なことではありません。
トイプードルのミスカラーは珍しい?
現在ミスカラーと定義されている5色のトイプードルが生まれる割合は少なく、非常に珍しいと言えます。
その理由は、これらの毛色を発現させる希釈遺伝子が劣性遺伝(現れにくい性質)であることが多く、また従来のスタンダードでは認められていなかったため、積極的に繁殖されてこなかった背景があります。
しかし、その希少性と独特の美しい色合いから、近年では専門的にブリーディングを行うブリーダーもおり、その個性が新たな魅力として注目されています。
トイプードルのミスカラーの種類と特徴(2026年1月1日~)
ここでは、JKCの規定により2026年1月1日以降にスタンダード外となる5つの「ミスカラー」について、それぞれの特徴を解説します。
ベージュ、シャンパン
クリームやアプリコットの色をさらに淡くしたような、非常に柔らかく上品な色合いが特徴です。光の加減によっては白に近い色に見えることもあり、エレガントで優しい印象を与えます。
シルバー・ベージュ
シルバーがかったベージュ色で、成長とともに色合いが変化することが多い、神秘的なカラーです。子犬の頃は濃い色でも、徐々にシルバーの光沢を帯びた美しいベージュ色へと変わっていきます。
ブルー
一見するとブラックに見えますが、光に当たると青みがかって見える、非常に珍しい毛色です。黒の色素を薄める希釈遺伝子の働きによって発現するカラーで、独特の深みと艶やかさを持っています。
カフェ・オ・レ
ブラウンの色素が薄まり、ミルクコーヒーのような優しい色合いになったカラーです。一般的なブラウンよりも柔らかく、クリームよりも温かみのある色合いが人気を集めています。
トイプードルのミスカラーの魅力
ミスカラーの最大の魅力は、その希少性が生み出す唯一無二の毛色にあります。
スタンダードカラーとは一線を画す、淡く繊細で、どこか神秘的な色合いや、その子によって入り方が異なるホワイトの模様は多くの人々を魅了します。
他の子とは違う、自分だけの特別なパートナーを探している方にとって、これらの毛色は非常に魅力的に映るでしょう。
また、上品で美しい色合いの毛色も多く、トイプードルが持つ元来の可愛らしさをさらに引き立ててくれます。
ミスカラーのトイプードルが注意したい遺伝的な疾患
基本的にミスカラーであることが直接的な原因で病気になりやすいわけではありません。
しかし、一部の毛色を発現させる希釈遺伝子は、稀に特定の健康上の問題と関連することが指摘されています。
お迎えする際には、トイプードルという犬種全体がかかりやすい疾患とともに、以下の点について知識を持っておくとより安心です。
色素希釈性脱毛症(淡色被毛脱毛症)
ブルーやシルバー・ベージュのような、色素を薄める希釈遺伝子を持つ個体に見られることがある皮膚の疾患です。毛が薄くなったり、切れやすくなったりする症状が見られますが、生命を脅かすものではありません。
定期的なスキンケアや、獣医師による適切な指導を受けることで、良好な状態を維持することが可能です。
進行性網膜萎縮症(PRA)
進行性網膜萎縮症は、眼の網膜が徐々に機能を失い、最終的には失明に至る遺伝性の病気です。
これは毛色に関わらず、トイプードルという犬種自体が発症リスクを持つ疾患として知られています。近年では、親犬の遺伝子検査によって発症リスクを事前に確認することができるようになっています。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼は、後ろ足の膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置からずれてしまう状態で、特にチワワやポメラニアンといった小型犬に多く見られます。トイプードルも例外ではなく、遺伝的な要因が関与していると考えられています。
軽度であれば歩行に支障はありませんが、重症化すると手術が必要になる場合もあります。
ミスカラーを購入する際の注意点
ミスカラーのトイプードルを家族としてお迎えすることを決めた場合、最も重要なのは信頼できるブリーダーやペットショップを選ぶことです。
その珍しさや美しい毛色だけを強調し、親犬の健康状態や遺伝子検査の結果を明確に提示しない業者には注意が必要です。
お迎えする前には、必ず親犬や兄弟犬の情報、そしてどのような環境で育てられているかを確認しましょう。遺伝性疾患のリスクや、その子犬の性格について誠実に説明してくれる、信頼のおけるブリーダーから譲り受けることが大切です。
トイプードルのミスカラーの値段について
ミスカラーのトイプードルの価格相場は、約30万円から60万円です。
これは、生まれる確率が低く希少価値が高いことや、その独特の色合いに人気が集まっていることが理由として挙げられます。特に、健康で血統の良い両親から生まれた子犬は高額になる傾向があります。
一方で、ブリーダーによってはスタンダードから外れるという理由で、一般的な人気カラーと同等か、それよりも少し安価に設定している場合もあります。
価格は毛色だけでなく、性別や月齢、親犬の血統など、様々な要因によって総合的に決定されます。
まとめ
ジャパンケネルクラブ(JKC)の最新基準により、トイプードルの「ミスカラー」の定義は、単色の毛の一部に白い毛が混じっているものや、特定の5つの単色を指すものへと変わりました。これらのカラーは希少性が高く、スタンダードカラーにはない唯一無二の魅力を持っています。
お迎えする際には、その美しさだけでなく、色素希釈性脱毛症のような関連する可能性のある疾患についても正しく理解することが重要です。
どのような毛色であっても、一頭一頭がかけがえのない命であることに変わりはありません。信頼できるブリーダーから健康な子犬を迎え、愛情深く育ててあげてください。