サセックススパニエルの基本情報
- 原産国：イギリス
- 犬種グループ：第8グループ（レトリーバー、フラッシングドッグ、ウォータードッグ）
- 体高：33cm～38cm
- 体重：16kg～20kg
- サイズ：中型犬
- 名前の由来：イギリスサセックス州
- 英名：Sussex Spaniel
サセックススパニエルはイギリス南東部のサセックス州を原産とする希少なスパニエル犬種で、その地名が犬種名の由来となっています。
元来は鳥猟に特化したフラッシングドッグとして誕生し、現在も愛好家の間で大切に保存されています。その希少性から入手が難しく、飼育するには海外からの輸入が一般的となっています。中型犬に分類されますが、骨太で筋肉質なため見かけ以上にがっしりとしています。
サセックススパニエルはその独特な体型と美しい被毛、穏やかな性格を持つことから、家庭犬としても高い評価を得ています。飼育するにはその特性をよく理解し、健康管理や日常的なケアを適切に行うことが重要です。
サセックススパニエルの特徴
サセックススパニエルは、中型犬ながら非常に頑丈で筋肉質な体格を持っています。その体つきは「低くて長い（low and long）」と表現され、特に地面に近い胴長短足のスタイルが大きな魅力です。重心が低い独特な姿勢は、かつて猟場で茂みをくぐり抜けるのに役立っていました。
ローリング・ギャイト（独特の揺れる歩様）
この犬種ならではの特徴の一つは「ローリング・ギャイト（rolling gait）」と呼ばれる歩き方で、身体を左右に揺らしながら歩きます。これは低い体高と胴長の構造から生じる歩き方で、効率的な移動を可能にする一方、その独特な揺れは優雅さと愛嬌を併せ持っています。
豊かな飾り毛と垂れ耳
被毛は緩やかなウェーブがかかり、胸元や耳、脚周りに豊富な飾り毛があります。この飾り毛は障害物や悪天候から身体を守るためのもので、実用性と美しさを兼ね備えています。また、大きな垂れ耳は地面の匂いを効率よく集める役割を果たしますが、通気性が悪いため定期的なケアが欠かせません。
サセックススパニエルの性格
サセックススパニエルは非常に穏やかで家族想いの性格を持つ犬種であり、家庭犬としての優れた資質を示します。一方で、元々猟犬として培われた特性ゆえに、自立心が高く頑固な一面も見られます。そのため飼育する際には、犬種特有の性格を理解して適切に接する必要があります。
家族への深い忠誠心と愛情
家族と過ごす時間を非常に大切にし、飼い主や家庭のメンバーに対して深い忠誠心を示します。穏やかな性質ゆえに子供や他のペットとも比較的良好な関係を築けますが、その分、一人で長時間留守番をさせるような状況にはストレスを感じやすい傾向があります。
頑固で自立心のある一面
猟犬として、自ら判断し行動する能力が求められてきた背景から、サセックススパニエルには頑固さやマイペースさがあります。しつけやトレーニングにおいては、厳しく接するよりもポジティブな方法で褒めて伸ばす方が効果的です。また、統一したルールを一貫して伝えることで、より良い関係性を築けます。
サセックススパニエルの毛色
サセックススパニエルの被毛は、この犬種を象徴する特徴的な色合いをしています。その美しさと独特な色味が、犬種としての魅力の一つとして広く知られています。
リッチ・ゴールデン・レバーの単色被毛
公式に認められている毛色は「リッチ・ゴールデン・レバー」と呼ばれる深みのある茶褐色の単色のみです。この色は肝臓の色に例えられ、茶褐色の毛先が光の加減で金色がかって見えるのが特徴です。特に成犬になるとその色合いはより鮮明になり、ゴールドの光沢がはっきりと現れます。
成長に伴う毛色の変化
サセックススパニエルは子犬の頃には比較的濃い色合いをしていますが、成長とともに毛先の色が淡く輝きを帯びるようになり、美しいグラデーションが現れます。この毛色の変化も、飼い主にとっては成長を楽しめる要素の一つとなっています。
サセックススパニエルのかかりやすい病気
サセックススパニエルはその体型や特徴により、特定の疾患に対して注意が必要です。定期的な健康管理と日常的なケアを行うことで、多くの病気は予防または早期発見が可能となります。
股関節形成不全
股関節形成不全は、股関節が正常に発達せず、歩行異常や痛みを引き起こす疾患です。肥満管理と適度な運動が予防策として有効です。
椎間板ヘルニア
胴長短足の体型から背骨に負担がかかりやすく、椎間板が変形して神経を圧迫する椎間板ヘルニアに注意が必要です。体重管理と日常的な適切な運動が大切になります。
外耳炎
垂れ耳のため耳の通気性が悪くなり、細菌が繁殖して外耳炎になりやすい傾向があります。こまめな耳掃除や耳の中を乾燥させるケアが重要です。
心臓疾患
この犬種特有の遺伝的要因により、肺動脈弁狭窄症などの心臓疾患が発症する場合があります。信頼できるブリーダーから迎え、定期的な獣医師による心臓検査を推奨します。
眼瞼内反症・外反症
まぶたが内側や外側に反転する疾患です。特に内反症は眼球にまつげが触れて傷をつけることがあり、異常があれば早めの治療が必要となります。
サセックススパニエルの歴史
サセックススパニエルは、18世紀後半にイギリス南東部のサセックス州にあるローズヒル邸で作出された犬種です。
地主であるオーガスタス・エリオット・フラー氏が、茂みの濃い地形でも効率よく鳥猟が行える犬種を目的に交配を進めました。他のスパニエルと異なり、吠えて獲物の存在を知らせる独特の狩猟能力が求められました。
絶滅危機と犬種の復活
第二次世界大戦後には、一時的に絶滅の危機に瀕したほど個体数が激減しましたが、イギリスの熱心なブリーダー、ジョイ・フリーア氏の尽力により、再びその血統を守り抜くことができました。現在も希少性が高く、愛好家や専門家によって大切に守り続けられています。
サセックススパニエルの子犬の価格相場
サセックススパニエルは世界的にも希少な犬種のため、日本国内で子犬を見つけることは非常に難しくなっています。国内にはこの犬種の専門的なブリーダーがほとんど存在しないため、海外から子犬を輸入するケースが一般的です。
その結果、子犬自体の価格だけでなく、空輸費用や検疫手続きなどを含めると、合計で100万円以上の費用がかかることも珍しくありません。価格以上に重要なのは、健全で信頼できるブリーダーから子犬を迎えることです。
サセックススパニエルを飼う際の注意点
サセックススパニエルは家庭犬としての優れた資質を備えていますが、飼育に際しては犬種特有の頑固さや吠え癖への理解が不可欠です。適切なトレーニングや日常的なケアを行い、犬の健康と幸福を保つことが重要になります。
トレーニングは一貫性を持って行う
この犬種は自立心が強く頑固な性格を持っているため、しつけの際には家族全員で統一したルールを設け、根気強く穏やかに接することが必要です。褒めて伸ばすポジティブなトレーニングが効果的です。
吠え声への理解と適切な対処
元来、猟の際に吠えて獲物の位置を知らせていたため、よく響く特徴的な吠え声を持っています。無駄吠えを防ぐためには幼犬のうちから社会化と適切なしつけを徹底しましょう。
嗅覚を刺激する遊びや運動の工夫
元猟犬としての習性を満たすため、散歩に加えて嗅覚を使った遊び（ノーズワークなど）を日課に取り入れると、ストレス解消と健康維持に役立ちます。
徹底した体重管理と健康ケア
胴長短足という体型は肥満が大敵であり、椎間板ヘルニアなどのリスクが高まります。定期的な運動と食事管理を徹底し、理想的な体重を維持することが健康寿命を延ばす鍵となります。
孤独な環境は避ける
家族への深い愛情が特徴のため、長時間の孤独にはストレスを感じやすいです。可能な限り共に過ごす時間を確保し、家庭の一員としてコミュニケーションを密に取ることを心がけましょう。
まとめ
サセックススパニエルは、希少で魅力的な外見と穏やかな性格を兼ね備え、家庭犬として大変優れた犬種です。英国原産の純粋な歴史を持ち、その特徴的な「ローリング・ギャイト」や豪華な「リッチ・ゴールデン・レバー」の毛色は、この犬種ならではの魅力を際立たせています。
一方で、頑固な性格や吠え声への理解、肥満や外耳炎、椎間板ヘルニアなど特定の疾患への配慮が欠かせません。これらの特性や注意点を十分に理解し、日常的なケアやトレーニングを徹底できる飼い主にとって、サセックススパニエルは生涯を通じて忠実で心温かいパートナーとなってくれるでしょう。
