愛犬に食欲がなく痩せてきた時に考えられる病気
口腔内の疾患
口の中が痛いせいで、食べたくても食べられないのは、人間もわんこも同じです。
わんこの食欲が落ちてきたときには、まずは口の中に異常がないかを確認してみてください。
口内炎
人間と同様に、口腔内の粘膜に外的な刺激を受けた場合や、他の病気等による体調不良で免疫力が落ちている場合に発症します。以下のような症状が見られた場合には、口内炎ができている可能性があります。
- 口の中を気にして触っている
- よだれが出る
- 性格が狂暴になった
- 食べたものを口からこぼす
歯周病
わんこの健康トラブルで多いものの1つが、この歯周病です。初期であれば歯みがきを徹底することで治療することができますが、重度になると元に戻すことはできず、歯が抜けてしまうだけでなく、下顎の骨折や骨髄炎といった症状や、歯周病の原因菌が全身に回った場合には敗血症等を引き起こす恐れがあります。気づいたときには重症化していることが多いのですが、食欲不振とあわせて以下の症状があった場合には歯周病を疑ってみて損はありません。
- 腐ったような口臭がある
- くしゃみ、鼻水が出る
- 目の下が腫れている、膿みが出る
- 噛み合わせがおかしい
また、歯周病は歯みがきで確実に予防できますから、早いうちから歯みがきの習慣を身につけたいですね。
心臓疾患
心臓の機能の低下により血圧や体内の血液量が下がってしまう病気で、一般的には心不全と呼ばれます。フィラリア等の寄生虫により発症するものもありますが、慢性的な心不全では進行が非常にゆっくりで、数年間は無症状の状態が続く場合もあります。食欲不振以外に見られる症状には、以下のようなものがあります。
- 疲れやすい、きびきび歩かない
- 咳(特に吐き出すような咳)が出る
- 呼吸が苦しそう
- 心臓の音に雑音がある
肥満傾向のわんこは心臓病を発症しやすいので、もし心臓病だった場合には、適切な食事療法を早めに開始することで、心不全の進行を少しでも遅らせることができます。
腎臓疾患
膀胱炎や尿石症といった腎臓疾患は、わんこだけでなく猫に非常に多い健康トラブルです。膀胱炎は女の子に、尿石症は男の子に発症しやすいとされています。わんこの場合にはどちらも細菌感染が原因であり、食欲不振の他、おしっこの際に特徴的な症状が見られます。
- 頻尿になる
- 血尿になる、おしっこが濁っている
- おしっこの際に痛がる
- おしっこの際に背中を曲げた姿勢をとる
発症した場合には、食事療法や内服薬をメインに治療していくことになります。
肝臓疾患
肝臓は消化管からの血管を全て引き入れており、栄養素を使いやすい形に変えると同時に有害物質を無毒化する重要な役割をもっています。そのため、再生能力が非常に高く、異常があっても症状が出にくい「沈黙の臓器」と呼ばれています。炎症性の肝臓疾患である肝炎の原因には、内臓疾病によるものや病原体によるものがありますが、わんこでは銅の蓄積や薬物によるものがよく見られます。肝臓疾患の場合は症状の発現が食事内容や時間に関連しやすいため、特に食後に以下のような症状が見られる場合には、かなりこじれた肝炎の可能性があります。
- 元気がなくなる
- よだれが出る
- 嘔吐、下痢がある
急性肝炎の場合には、嘔吐で食事がままならないことが多いため、初期治療では断食して輸液や投薬を行い集中的に治療をする場合があります。
食欲が回復してから、食事療法や内服薬の投与に移行していきます。
愛犬に食欲があるのに痩せてきた時に考えられる病気
一方で、いつも通りの食欲でごはんを食べているにもかかわらず、なぜか痩せてきてしまうという場合があります。その場合には、以下のような病気を疑ってみてください。
糖尿病
人間と同様、わんこにとっても内分泌疾患として注意が必要な病気です。肥満傾向の犬の発症率が高いと言われています。わんこの糖尿病の場合にはインスリンが分泌されていないため、以下の症状の他に食欲が増加する傾向があります。ただ、細胞内が飢餓状態となっているので、食べても痩せてしまうのが特徴です。
- おしっこの量や回数が増えた
- おしっこの色が薄い
- 水を飲む量が増えた
- 嘔吐、下痢がある
また、合併症を併発しやすいのが糖尿病の特徴です。白内障、歯周病等も合併症の1つです。
診断された場合には、食事療法をベースに、インスリン療法・運動療法で改善を図っていくことになります。
寄生虫
寄生虫にはさまざまな種類があり、感染しても症状が出ないものもあります。症状が発現するものとしては、回虫症や瓜実虫症、エキノコックス症等が有名です。寄生虫はわんこの消化管内に寄生し、わんこが食べたものを栄養源にして成長する他、消化管に噛み付いて血液を吸い取ります。このように、せっかく摂取した栄養が寄生虫に横取りされてしまうため、わんこは食べても痩せてしまうのです。寄生虫は一般に検便で発見されますが、以下のような症状も特徴です。
- 元気がなくなる
- 血便が出る
- 下痢、嘔吐がある
- 食べ物でないものを口にしたがる
ストレス(胃潰瘍)
身体的、精神的なストレスが主な原因となって胃の粘膜が傷つくと、その傷が深部にまで到達し、胃潰瘍を引き起こします。ただし、すでに別の病気を抱えていることが原因で胃潰瘍を併発する場合もありますので、注意が必要です。
- 元気がなくなる
- 嘔吐、下痢がある
内分泌疾患
わんこの発症例はまれではありますが、甲状腺機能亢進症という病気があります。甲状腺で生成される甲状腺ホルモンは、身体の代謝をコントロールしていますが、何らかの原因で甲状腺の働きが異常に活発化すると、甲状腺ホルモンが大量に分泌されてしまいます。代謝調節機能が正常に働かなくなるため、食べても食べても痩せていってしまいます。主な症状は以下のとおりです。
- おしっこの量や回数が増えた
- 下痢がある
- 心拍数が多い
- 呼吸数が多い
まとめ
わが家の愛犬も、以前、尿石症にかかったことがありました。
直前にフィラリア検査と同時に受けていた血液検査では何の異常も見られなかったのですが、食欲が落ちていたのとおしっこのときの様子がおかしかったため、詳しく検査をしてもらったところ、判明しました。
何かおかしいなと思ったら、「大丈夫だろう」と決めつけずに早めに受診することが大切です。
人と違って動物病院では保険がないので検査費用などを含め、通院費は想像以上に高額になります。
ペット保険に入っていれば、費用面を気にせず、ちょっと気になったことがあれば、気軽に病院に通えるようになりますので、検討してみてはいかかでしょうか。
どのわんこも太りすぎず痩せすぎず、健康的な姿が一番可愛いはず!
「何となく身体の調子がおかしいな」
「どこかが痛いな」
と思っても、わんこは言葉で訴えることができません。
可愛いわんこと一番望ましい姿で少しでも長く一緒にいられるように、飼い主さんは注意して見守ってあげたいですね。