犬の膀胱癌によって引き起こされる症状
犬の膀胱癌は、血尿等の分かりやすい症状がありますが同様の症状は膀胱炎でも起こります。しかし、繰り返す血尿、治りにくい血尿の場合はこの病気を疑い検査を行う必要があります。発見が遅れた場合治療が困難になることもあり、初期症状、中期症状、末期症状とそれぞれの特徴を知っておくことがとても大切になります。
初期症状
犬の膀胱癌の代表的な初期症状は、以下の3点です。
- 頻尿
- 血尿
- 排尿障害
膀胱癌の本当の初期症状段階では、腫瘍の膨らみも全くといってなく、外見の症状では判断ができません。これらの症状も少し腫瘍が大きくなり、進行が進み始めた頃に発生する症状です。
また、血尿の色が薄く判断しづらいこともありますので、陰部をいつもより明らかに気にしている時や、トイレの時間がいつもより長いと感じた際には、ペットシーツを白いものに変えて、トイレが終わった時にティッシュ等で陰部を拭き取ってみる等の対応が必要になります。
いつもの犬の様子を、しっかりと見ておくことが早期発見につながります。
中期症状
犬の膀胱癌の中期症状まで進んでくると、膀胱だけでなく、リンパ節等に癌が転移している可能性が高くなってきます。そのため、犬は明らかに元気がなくなってきます。
膀胱内の腫瘍の場所にもよりますが、残尿感がひどくなり何度も排尿姿勢をとったり、血尿がひどくなったりする場合もあります。尿の混濁がひどくなることもしばしばで臭いもきつくなることが多いです。
人のように、犬は言葉で痛みや症状を表せません。しっかりと病院で診てもらいましょう。
末期症状
犬の膀胱癌の末期症状段階になると、転移は膀胱付近だけでは治まらなくなります。その際の犬の症状として挙げられるのは以下の4点です。
- 明らかに元気がない
- 嘔吐
- 痙攣
- 意識混濁
もし犬がこのような症状に侵されていた場合、手術が不可能な状況になっていると考えてください。膀胱癌が発生している部位によっては排尿ができなくなってしまうこともあり、命にかかわります。最悪の場合は尿管の移設手術などが必要になることもあり治療が困難になります。
犬の膀胱癌は転移する
犬の膀胱癌のほとんどは、「移行上皮癌(いこうじょうひがん)」と呼ばれる悪性腫瘍です。
移行上皮癌は、膀胱内のどこからでも発症しますが、1番可能性が高いのは「膀胱三角」と呼ばれる場所での発症です。ここは尿管や尿道が膀胱に入る場所です。
悪性の腫瘍ですが、通常はゆっくり進行し、転移していきます。転移の場所として1番多いのは、リンパ節への転移です。他には、肺や骨、場合によっては腹壁にも転移することがあります。
症状としては、身体の痛みや、呼吸が苦しくなる等といったことが挙げられます。移行上皮癌は悪性腫瘍ではありますが、膀胱内にできる腫瘍には良性の腫瘍の場合等もないと言い切れませんので、しっかりと診察をしてもらいましょう。
転移してしまった場合、専門の病院でも手術できない状況になっている可能性が非常に高いため、転移する前に気付けるように犬の行動をしっかりと理解しておきましょう。
犬の膀胱癌が発症する原因
実は、犬の膀胱癌の原因は、現段階で突き止められていません。しかし今までの研究の結果、犬の膀胱癌の原因になる可能性が高い理由が5点あります。
- 性別
- 肥満
- 犬種
- 発がん性物質
- 抗がん剤
性別
雌犬は雄犬よりも、約2倍の可能性で膀胱癌にかかりやすいです。
というのも雄犬のように、雌犬は頻繁に排尿をしないため、尿中の発癌性物質の影響を受けやすい状況下にあります。また、人同様、雌犬は雄犬よりも比較的脂肪が多く、癌の原因になり得る化学物質を保存してしまう可能性もあります。
肥満
この項目に関しては、皆さんのご想像通りかと思われますが、犬がかわいいからといって高カロリーな食事ばかりさせていると、身体にはとても悪影響です。膀胱癌だけでなく、その他の癌やホルモン系の異常が発症することも十分にあり得ます。
犬種
今までの研究で膀胱癌になりやすいとされている犬種は以下の通りです。
- ビーグル
- テリア(ただしスコティッシュテリアなどの一部)
- シェットランドシープドッグ
- シェルティー
- ウェスティー
特にテリア系の犬種を飼っている方は、犬の様子を日頃からよく見てあげることが最良の方法になると言えるでしょう。
発がん性物質
これは犬のノミやダニの駆除剤、農薬に入っている可能性がとても高い物質です。
- フィプロニル
- ペルメトリン
フィプロニル、ペルメトリン、これらの物質はゴキブリの殺虫剤に使用される、毒性の強いものになります。また、価格帯が低いドッグフードには発がん性のある添加物が混入している恐れがありますので、先ほど挙げた犬種のご家族は特に気をつけて見てください。
犬の膀胱癌に対する治療法
犬の膀胱癌の治療法には大きく3つあります。
- 外科的治療
- 内科的治療
- 食事療法
外科的治療
外科的治療の場合、犬の癌がどこに発症しているかが重要になります。
膀胱癌が膀胱三角以外にできた場合
この場合は、手術が1番適切と言われています。膀胱は全体の7割~8割を切除し、一時的にサイズが小さくなります。そのため、しばらく犬は頻尿になりますがおよそ1ヶ月で元通りのサイズになります。
膀胱癌が膀胱三角にできた場合
膀胱三角というのは、尿道や尿管、膀胱内の血流や神経にも関係してくる大事な核とも言える場所です。そのため、膀胱を温存しつつ、犬の癌だけを切除することは不可能です。この場合、犬の膀胱全摘出術または内服薬や抗がん剤で治療する方法を選択できます。
治療費用としては、部分摘出術でも20万ほど、膀胱全摘出術になると50万は最低ラインとして見積もっておきましょう。動物病院によって治療費は異なりますので、金額面についてもよく話し合ってください。
内科的治療
内科的治療は、以下3つの治療を組み合わせて行います。
抗炎症薬(NSAID)
犬の癌の長期に渡るコントロールはできませんが、副作用が少なく移行上皮癌の増殖を抑える効果があります。治療費は、1ヶ月でおよそ1万弱かかります。
ミトキサントロン
抗がん剤の一種で、抗炎症薬と併用することによって抗腫瘍効果が期待できます。一時的に犬は食欲が低下する副作用があります。1回の投与につき、治療費は2万~3万程度かかります。
放射線治療
放射線を当てることで腫瘍細胞を直接的に破壊し、膀胱癌の進行を抑えます。一時的に犬は軟便になる副作用があります。計6回が一般的、治療費は1回の照射につき1万~5万程度かかります。
食事療法
上記2つの治療法とは他に、食事療法により犬の身体の免疫を、内から上げていくという方法があります。食事内容は免疫力を高めると言われているオメガ3を積極的に取り入れた食事になります。具体的に下記食品が挙げられます。
- 脂身の少ない牛肉や豚肉(上質な物に限る)
- 鶏肉
- ブロッコリー
- キノコ類
- 大根
これらの食品を少なめの炭水化物と混ぜる食事が、犬の膀胱癌の食餌療法としては有名です。しかしこれだけでは十分な効果が出ない可能性のほうが高いので食餌療法のみに頼ることは避けたほうが良いと思います。
犬の膀胱癌による痛みを緩和させる方法
犬の膀胱癌の初期症状は、痛みはほとんどないと言われていますが、進行していけばおのずと痛みは発生してきます。また、犬は痛み等の不調を少なからず隠そうとする本能があるため、食欲の程度や態度、行動等の犬の細かい様子で判断してあげる必要があります。
非オピオイド系鎮痛薬(非ステロイド性抗炎)
犬の膀胱癌による軽度の痛みや解熱にも効果があるとされています。
弱いオピオイド系鎮痛薬(犬の状態によって非オピオイド系鎮痛薬と併用)
犬の膀胱癌の強力な痛み止めです。一般的に投与される鎮痛剤が効かない場合や持続する鈍痛に効果が高いとされています。
強いオピオイド系鎮痛薬
このレベルになると、医療用麻酔薬になり、鎮痛効果はとても強力になります。「麻薬」扱いになりますので、必ず麻薬を取り扱うことのできる動物病院で処方してもらう必要があります。
これらが最大限に犬の膀胱癌による痛みを、緩和してあげられる方法になります。既に肺や骨、その他の臓器等に転移してしまっている場合は、摘出術が行えず、痛みを緩和させるという方法しかない場合もあります。
犬は言葉でどれくらいの痛みか伝えられない分、飼い主が敏感に感じとってあげること、できるだけのことをして痛みを少しでも軽くしてあげることが最善なのではないでしょうか。
犬の膀胱癌を予防する方法
犬の膀胱癌の予防方法は、「犬の膀胱癌の原因」項目でお伝たものが可能性として考えられます。お庭がある家庭では、除草剤等にも気を遣ってあげてください。
また、日頃より運動をよくさせて、肥満にならないように管理してあげることも家族として大切な責任です。犬の健康のためにも、おやつはある程度のラインをしっかりと決めておきましょう。
また、犬に手作りの食事を与えているご家庭では、可能な限り高タンパク、低炭水化物、高品質の食事を犬の栄養要求量を満たすように与えてください。くれぐれも犬が喜ぶ食材だけを与えることのないように注意しましょう。
まとめ
ここまで犬の膀胱癌について、症状、原因、治療法、予防法など細かくお伝えして参りました。
犬の膀胱癌は、癌の中でも比較的気付きやすく、発見しやすい癌です。つまり、私達家族がなるべく早く気付いてあげることができれば、初期段階で犬を救ってあげることができます。
是非この機会に、犬の膀胱癌の初期サインだけでも記憶していただき、犬のちょっとしたサインに気付いてあげてほしいと思います。そして、少しでも長く犬とともに過ごしてください。