犬と猫の飼育頭数
ペットブームといわれる昨今ですが、実際には犬の飼育頭数は減少、猫は横ばいだといわれています。一般社団法人ペットフード協会が毎年調査、発表しているデータによると2017年10月時点での飼育頭数は約892万頭と2014年以降は1000万頭を切っています。猫は約952万6千頭となっており、2017年に猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回ったことでも話題になりましたよね。
犬の飼育頭数が減少している理由とは?
犬の飼育頭数が大幅に減少している理由はいったいどういったものがあるのでしょうか。
自然現象と日本の高齢化
まずは自然現象です。これまでに飼育されてきた犬もやがて寿命が尽きます。単純に今いる犬の寿命が尽きれば頭数も減っていきますよね。同時に新たに飼育する人がいれば頭数の減少は起こりませんが、この頭数が増える要因である「新たに飼育する人」が日本の少子高齢化の加速によって減少していることが考えられます。
犬を新たに飼育するには、飼い主自身の寿命と犬の寿命を考慮しなくてはなりません。毎日の散歩やお世話のことを考えると高齢者が一人で飼育するのは難しい点が多くあります。そんな中で日本の人口が高齢化に向かうことで、飼い主の寿命や体力が原因で犬を飼育することが難しいと判断する人が増えているのです。
実際に飼い主の高齢化のため、現状飼育していた犬の飼育ができなくなったという例も発生しています。そのため動物愛護センターなどの譲渡会においても、高齢者のみの世帯には譲渡できないといった決まりもできています。これは犬が幸せに終身飼育されるためには必要なことでもあります。
犬の世話による負担
先に紹介した一般社団法人ペットフード協会による報告では、犬の飼育頭数が減少している理由として次のような要因が挙げられています。
- 十分にお世話ができない
- 集合住宅のため飼育できない
- お金がかかる
- 別れがつらい
- 最後まで世話をする自信がない
- 死ぬとかわいそう
犬を飼育する場合、大きく分けると「住環境」「費用」「時間」の負担が発生します。これらは犬の寿命が尽きるまで続きます。こういった要素を「負担」だと捉えることで、犬の飼育が難しいと判断する人が増えているようです。同時に、飼育する上では必ず発生する「別れ」のつらさを認識している人も多いようですね。
大切なのは犬が幸せに長生きできる環境を整えることでは?
高齢化やお世話の負担の影響で犬の飼育頭数が減少しているということが分かりました。それでは同時に不幸なペットも減少しているかというと、そうではないようです。
例えば繁殖からペットショップなどで売られる流通過程における死亡数について、ある調査によると2015年度に流通の過程で死んでしまった犬は1万9866頭に上るという結果が示されています。流通量の3%が産まれたものの、飼育されないままに死亡しているのです。
また、飼い主に捨てられることや、迷子で飼い主に見つけられないまま殺処分される犬も毎年発生しています。2016年度の殺処分数は1万424頭。徐々にその数が減っているとはいえ、猫とあわせると毎年5万頭以上のペットが殺処分されているのです。その他にもペットショップで売れ残った犬猫の闇に消えた命も少なくないといわれています。
これらの流通過程での死、流通前の死、流通後の死を考えると、今必要なことは飼育頭数を増やすための取り組みではなく「今この世にいる」そして「これから産まれてくる」犬や猫が幸せに長生きできるような環境を作っていくことなのではないでしょうか。
まとめ
飼育頭数が減少している理由を見ると、安易な気持ちで飼育する人が減っていることも伺えます。犬の飼育頭数が減ることは必ずしも残念なことではありません。適切に繁殖されて、適切に増加していく命を大切にすることが何よりも大事なのかもしれません。
《参照:一般社団法人ペットフード協会》
http://www.petfood.or.jp/data/index.html