生まれてすぐから始める子犬の社会化の重要性
『子犬の社会化期』というと、一般的に知られているのは生後2〜4ヶ月前後の期間を指していますが、イギリスの盲導犬繁殖センターの獣医学博士によって、生後0週齢〜6週齢という超早期の社会化プログラムが開発されました。盲導犬候補の子犬の繁殖と育成に携わる施設ならではのきめ細かい観察によって、超早期からの社会化の重要性が明らかになりました。
その内容と、一般の飼い主にとっても参考になるポイントをご紹介します。
子犬のための新しい超早期社会化プログラム
盲導犬という難易度の高い能力が要求される犬を育成するために、研究者はより効果的な方法の研究を続けています。
従来の社会化プログラムでは生後0週齢〜6週齢では、母犬や兄弟犬と遊ぶ、ハンドラーと遊ぶなど、他の犬や人間と一緒に過ごすことがメインになっていました。
開発された新プログラムでは、従来のプログラムに加えて1日に5分〜15分、人間の手で優しい刺激を与えるという過程が加わりました。
具体的には、指・タオル・歯ブラシ・ゴム手袋など感触の違うもので子犬の体を優しく撫でる、携帯電話の着信音を聞かせる、耳や歯を優しく点検する、といったことを行います。少し週齢が進むと簡単な障害物を乗り越えたりくぐったりする行動もプラスします。これらのことは子犬たちが常に楽しく快適であることを第一に考えて実施されます。
研究の対象になったのは6頭の母犬から生まれた6組の子犬たちです。それぞれの組の兄弟を、従来の社会化プログラムを受けるチームと新プログラムを受けるチームの半々に分けて、8ヶ月齢に達するまで、何度かの査定を受けました。
早期社会化の新プログラムの成果は?
最後の査定が完了した8ヶ月齢の時点で、新プログラムを受けた子犬たちは「分離不安に関連する行動」「注意散漫の度合い」「身体的な過敏性」「一般的な不安心理」において良い成績を示しました。つまり不安心理が少なくて、集中力が高く、身体を触られることに対して過敏ではないという結果でした。訓練を受ける能力やエネルギーレベルについては、従来のプログラムを受けた子犬との違いはありませんでした。
新プログラムにおいて子犬たちが受けた刺激は、ごくごくマイルドなストレス要因だと考えられるため、早い段階でポジティブな環境でこのような刺激を受けたことで、精神的な強さを得ることができたと考えられるそうです。
早期社会化の新プログラムが作る可能性
このように、0週齢〜6週齢というごく早い段階で子犬にポジティブな刺激を与える社会化プログラムは、優れた盲導犬を育成するために有効である可能性が示されました。センターの獣医学博士たちは、さらなる調査や作業を進める予定だそうです。
心理的な不安が少なく自信を持つことは盲導犬などの働く犬だけでなく、ごく普通の家庭犬であっても犬自身が快適に生きるために大切なことです。この新プログラムはペット犬のブリーダーや動物保護施設においても活用できると考えられています。
まとめ
イギリスの盲導犬繁殖センターにおいて、ごく早い時期からの子犬の社会化プログラムが新しく開発されました。1日のうちの短時間、子犬にとって楽しく快適な状態で刺激を与えることで、心理的な不安が低く気持ちの安定した犬を育成することができるというものです。この新プログラムはペットや保護犬にも応用することができると期待されています。
この研究のポイントは、生まれた子犬のごくごく早い段階でのポジティブな刺激が成犬になってからも大きな違いを作ると証明されたことです。全く逆の視点からのリサーチでパピーミルで生まれた犬は恐怖や不安の傾向が強いという報告もあります。
今回紹介したようなプログラムに近い育成の仕方は、家庭的で良心的なブリーダーなどでなくてはまず無理です。もしも初めて子犬を家庭に迎えようと考えているなら、どこを訪ねれば良いかの大きなヒントになるのではないでしょうか。
《参考》
https://www.companionanimalpsychology.com/2017/11/extra-early-socialization-for-puppies.html