大好きな初代愛犬との別れ
中学2年生の時から飼い始めた初代愛犬"クリン"は、ミニチュアダックスにしては大きい子でした。一生懸命しつけをし、何より可愛がっていました。
私が1人で部屋にいるときは押しかけてきて足元で丸まり、親に怒られてるときはそばに寄り添ってくれるクリンが大好きで、いつしかなくてはならない存在になっていきました。
そんなクリンもいつしか白髪だらけになり、癌を患ってしまいました。半年の闘病の末、天国へ旅立ちました。
きちんと看取り、お骨になるまで心を込めてお別れしたので悔いはありませんが、寂しくて悲しくて体がぐちゃぐちゃになる程辛かったです。
ペットロスから里親立候補
それからは、クリンの骨壺を抱きしめては泣きじゃくる日々を送ってました。
クリンが旅立ってから3週間くらいたったある日、動物好きな同僚との話しの中で保護犬のことを詳しく知りました。
新しい犬を迎えるつもりはなくても「保護犬」というワードが頭から離れませんでした。何日経っても気になるので調べてみようと思い、インターネットで見つけた里親募集サイトを覗いてみました。そのサイトには驚くほどいろんな境遇の犬がたくさん掲載されており、様々な想いが込められていました。
すると、その中で1匹だけひときわ輝いて見える写真が…。
クリン!?
いや、クリンにそっくりなダックス君の写真。
その子の詳細を見ると、飼育放棄されたこと、今は保護団体に保護されてること等がわかりました。
すぐに保護団体のホームページとブログを読み漁りました。「なんでこんな可愛い子が捨てられなきゃいけないの?」そればかり考えていました。
その反面、クリンそっくりな子を迎えても比較しそうで可愛がれる自信がありませんでした。
その保護団体は主にブログで保護犬の様子を発信していて、そのダックス君がどんな子か詳しく知ることができました。
この子は、どんなおもちゃも破壊するほどやんちゃなこと、お散歩が大好きで他の犬とも仲良くできること、病院もへっちゃらで、とにかく甘えん坊なことなどが何記事にもわたって紹介されていました。
甘えん坊なところ以外、クリンと正反対でした。その正反対なところがとても可愛く思えてしまい、ついに里親に立候補することを決意しました。
太陽のような犬
里親立候補後、まずダックス君と直接会いました。保護団体の人に連れられたダックス君の姿は本当にクリンそっくり!そっくり過ぎて辛くなることを心配してましたが、その心配はすぐに吹き飛びます。
好奇心が旺盛なのか、バネのようにピョンピョン動き回ってる姿が、クリンの面影を容赦なく打ち消しました。あまりに元気で力強い動きが、まるで太陽のようで、「私がこのダックス君を幸せにする」と決意しました。
ダックス君の名前は「ライ」にしました。
実はクリンが亡くなり一晩中亡骸に寄り添って死を悲しんでいた時、突然「ラ」「イ」とカタカナがくっきりと頭に浮かんできたんです。
「次の犬の名前。」よくわからないけど、直感的にそう思いました。
この話しは誰も信じてくれませんが、私が前に進めるようにクリンがくれた名前だと信じています。だっていつでも私を気遣ってくれた優しい子ですから。
ライの自由な振る舞い
ライは初めて我が家に来た時から自由でした。
家に入った瞬間から物怖じすることなく部屋中を駆け回り、おもちゃを見つけて夢中で遊んだかと思えば撫でろと言わんばかりにお腹を見せてきます。
あまりに無遠慮で堂々としているので、うちに馴染んでくれるかと心配していた気持ちが吹き飛んで大笑いしました。
しかし、この日からライとの戦いが始まったのです。
ライの問題点は「パワーがありすぎること」
保護団体の人からライを引き取る前に、問題があることは聞いていました。
- 屋根なしのケージはすぐに脱走する
- ケージに屋根をつけても簡単な鍵は自力で開け脱走すること
- 甘えん坊すぎてお留守番は難しいかもしれないこと
- 力が強すぎてコングでさえ噛みちぎること
- 寂しがり屋なのでお留守番が難しいかもしれないこと
事前に会ったときからパワフルなのはわかっていましたし、全てを承知の上で引き取ったのですが、実際一緒に暮らすと上記以外にも保護施設では現れなかった問題行動がたくさんありました。
ライに振り回される日々
引き取ってしばらくは休みを取って一緒に過ごしましたが、どうしても仕事があるのでお留守番は避けられません。
保護団体の人が言っていたように、ケージあっさり攻略されました。ゴミ捨てに行くほんの少しの間でも、1人になると吠え狂い部屋のものを荒らしました。私がトイレに行ってるわずかな時間に部屋を荒らしていたこともありました。
私がいないと不安なのか、部屋中どこへでもついてきて、私がソファーでくつろいでいても部屋の中をせわしなく歩きまわります。寝ている時以外は常に動き回っている状態でした。私がお風呂に入っているときは、常にドアの前でクンクン鳴き続けていました。
お散歩のときは真逆で、外にあるものすべてに興味を持ちます。鳥を見つければ追いかけ、のら猫に飛びかかり、気になるニオイにはリードぐいぐい引っ張りながら猛進します。目はランランと輝き、私の言葉は一切届かなくなります。
そのくせ人前ではトイレをせず、目を離した隙に物陰に粗相します。根気よくしつけを続けていましたが、なかなか問題行動の改善には繋がりませんでした。
ライが粗相をしては掃除をし、掃除をしている側から粗相をされ、荒らされたものは手の届かないところに片付けたり処分したり後片付けに追われていました。
しばらくしてトイレトレーニングがうまくいき粗相は改善されたものの、仕事から帰ってきてきたらライが吠え狂い、部屋の中がひっくり返っている状態が何か月も毎日続くと、さすがに私も気が滅入ってきました。
飼育放棄されたライを受け入れるつもりが、心の中では問題を起こし続けるライと戦っている気分でした。
お医者さんの言葉でライとの向き合い方がかわった
あるとき、ライの歩き方が少しおかしいことに気がつきました。おすわりも床にお尻をべったりつけていて不自然…。
ヘルニアが怖かったので、すぐに病院に連れていきました。
レントゲンを撮ったところ、ヘルニアの心配はありませんでした。しかし、骨盤と太ももの骨の間にあるクッションがほとんどなく、骨と骨をゴリゴリさせながら動いている状態でした。
さらに足の左右で筋肉の発達具合が違うこともわかりました。"左足の方が筋肉が薄い"のです。ライは全体的に筋肉ムキムキなので、指摘されるまで左右の違いに気がつきませんでした。
ついでにずっと気になっていた左耳の耳垢について相談をしてみました。保護施設でも耳垢については把握していて、耳垢が出やすい体質と説明されていました。しかし、詳しく見てもらうと、耳の奥に大量の耳垢が詰まっていて炎症を起こしていました。
レントゲンの説明を受けている間、ライは診察室で飼っているインコに興奮し飛びかかろうと必死になっていました。その様子を見て先生は、こう仰ってくださいました。
この言葉を聞いてはっとしました。
飼育放棄されたとわかって引き取ったものの、ライが過去どのような状態だったか考えもしませんでした。私は今のライしか知らないけれど、ライにも過去があり、「その過去が今のライを作っているんだ」と心の底から理解しました。
そして、それならとことん今を楽しんでもらおうと決意しました。
目に見える問題より信頼関係
お医者さんとお話ししてから、しつけは最低限の「オスワリ・マテ・フセ」だけに。お散歩の時はお行儀よく歩くより、本能と好奇心を発散させることに重点をおきました。
においをかぎたがる時は満足するまでじっくりかがせ、一緒に鳥を追いかけ、野良猫とも積極的に関わらせました。一度思いっきり猫パンチをくらってから猫には接近しなくなりましたが、ライにとっては猫パンチもいい経験だと思っています。
そして、1番効果があったのは、「大好きだよ」「ずっと一緒だよ」とライの目を見て話しかけることでした。スキンシップは今までもしていましたが、愛情をこめて話しかけることを増やしたのです。
すると、効果はテキメン。
常に部屋中を動き回ることがなくなり、おとなしく寝転がることが増えました。
お留守番も上手にできるようになり、吠え狂うこともしなくなったのです。
ゴミ箱をひっくり返す癖は治りませんでしたが、ゴミ箱におもしを仕込んで倒せないようにしたらあっさり解決しました。
集中力がないので、聞いているかどうかわかりませんでしたが、言葉はちゃんと届いていることがわかってすごく嬉しかったです。
まだまだやんちゃですが、うちに迎えた時からは想像がつかないほど落ち着いて生活できるようになりました。ライが落ち着いてごろごろしている。こんなたわいないことが、すごく幸せです。
まとめ
- 犬にも過去があり、今がある。
- 問題行動の奥には必ず原因がある。
私はライからはこの2つを学びました。
私の都合で頭ごなしにしつけするのではなく、ライの何が満たされていないのかを考えて心ゆくまで満たしてあげることが大切でした。また、愛犬の問題の原因がわからずに、ライのように飼育放棄されている犬がいると思うと心が痛いです。
飼い主から寄り添えば愛犬は必ず応えてくれます。私がお医者さんの言葉で気づけたように、愛犬の問題行動で悩んでいる飼い主さんにこのことが少しでも届けばいいなと思っています。