一緒に暮らすワンコを探す日々。
母、そして愛犬…続けて家族を亡くした父は電話をしても元気がなく、声を聴いていても心配になるほどでした。「犬が居ないと寂しい」と言うものの、愛犬を亡くしてすぐに次の子を迎える気にはなれないようで、自分でもどうしたいのか分かっていないようでした。
私と妹は、「高齢の父に幼犬を育てる事は無理。お世話の面だけでなく、父にも犬にも事故の危険がある」と考えていたため「保護犬を探そう」そう考えました。そこで、お付き合いのあった保護団体さんや、個人で保護活動をしている方に相談をしました。
- 父の慣れた犬種が良いと考えて「ヨーキーの女の子」
- 「できれば2~5歳くらいの子」
という条件で探し始めたのですが、妹は日中は仕事に出てしまっているため、高齢の父がほぼ一人でお世話をすることになります。そのため、良いお返事はいただけませんでした。
だからと言って、子犬を買ってくる選択肢はありませんでした。いろんな方々に相談して、情報を頂き、紹介を頂いてお話が進んでも、やはり条件の良い家庭があれば、そちらへ決まってしまう。当たり前の事なのですが、何度か続くと、
「もう無理なんじゃないかな」
「うちになんて くれる人はいないよ」
そんな風に考えてしまうようになりました。
そんなある日、知人がお話を持ってきてくれました。
父と妹に話すと、「どうせまたダメになるさ」と言う返事が返ってきました。
「欲しいの?要らないの?」と強く聞くと、悩んだ妹が「あ、今日は亡くなったお母さんの誕生日だね、お母さんが繋いでくれたのかもしれない」そんな事を言い出しました。
「ダメかもしれない」と思いつつ、お話を進めてもらう事にしました。
すると、トントン拍子に話が進み、「繁殖犬」として3年間生きてきたヨーキーを迎える当日がやってきました。
何も情報がありませんでした。
「ヨーキー・♀・3歳くらい・皮膚病あり・写真なし」
分かっていたのは、それだけの情報でした。
それでも、母が繋いでくれた「縁」を信じて迎えに行きました。
繁殖犬として生きてきた「えんちゃん」
迎え入れた子は、繁殖犬として約3年間を生きてきた子で、お腹には大きな帝王切開の跡が何本もあり、雑に縫い合わされて、とても痛々しいお腹でした。
口の中は酷い状態で、出して欲しくてゲージを噛んでいたのか、歯も削れたりボロボロになっていました。背中は皮膚炎を起こしており、大きく毛の無い状態の場所もありました。
そんな子でしたが、たくさんの方が「縁」を繋いでくださった子だったので、父と妹は感謝を込めて「えんちゃん」と名付けました。
父と一緒に迎えに行った時には、「え?ヨーキーなの?」と思いました。
そして、近づいただけで、何か異臭がするほど汚れ、怯えていました。
車に乗せ、父が抱っこすると、父に抱かれ ただただずっと震えて怯えていました。
「大人しいね、鳴かないね」
後日獣医さんで診察していただくと、お腹の帝王切開の傷は痛々しく、歯もほぼ抜かなくてはいけない状態で、歩くことなく長く閉じ込められていたせいか、関節もガクガクでした。
でも、あんな劣悪な状態で生きていたにもかかわらず、人懐っこく、無駄吠えもなく、素直な性格の子でした。
シャンプーをすると、りっぱなヨークシャテリアに戻りました。父を慕い「お父さん大好き!」な娘に。
そんなえんちゃんは、同じヨーキーが苦手なんです。
父の所には先住犬のヨーキーたちの写真が飾られているのですが、その写真を見ても「こっちに来ないで!」とばかりに吠えて嫌がるのです。他の子は大丈夫なのに、、、
それは「無理やり繁殖をさせられていたから」とトレーナーの先生がおっしゃっていて、とても納得しました。
無理やり繁殖させられ、子犬を産めば引き離される。そんな仕打ちを繰り返しされていた記憶だったのです。「ブリーダー」ではなく、「繁殖屋」での経験なのです。
でも他のワンコとは、仲良く出来ます。
お散歩だって一緒に行けます。
新しい生活
外の世界を知らず、お散歩に出かける事も知らず、抱っこされていてもお外に出ると震えていたえんちゃんですが、父とドライブに行ったり、近くの堤防をお散歩したり、ワンコと触れ合ったりしています。
お留守番も苦手でしたが、最近は少しずつ時間を延ばしてお留守番も安心してできるようになりました。今年の春は、みんな揃ってお花見にも行きました。
こうして家族としての暮らしが始まっています。
まとめ
ペットショップで犬を購入することすべてを否定しているわけではありません。しかし、ペットショップに並ぶ子たちの中には、こうして親犬の犠牲があって並んでいる子も少なくないと聞いています。
えんちゃんは救いだしてくださる人とのご縁があり、「繁殖犬」を3歳と言う若さで離脱することが出来ました。
しかし肉体は既にボロボロ・精神面もたくさんのトラウマを抱えています。そして多くの子は5歳7歳くらいまで、「子犬を産むためだけ」に劣悪な環境で生きていくことがあります。
真面目なブリーダーさんもいらっしゃいますが、「繁殖屋」「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれる場所で生きている子もいる現実があります。そして過剰に産まされている現実と、安易に捨てられ殺処分されている現実があります。
どうか、全ての子が家庭で幸せな暮らしを、最後の瞬間までしていける日が来ますように。
ユーザーのコメント
40代 女性 匿名
2回お産をして引退したとか。
真面目な、ブリーダーだった様で、2回のお産をしても帝王切開の跡はなく、散歩大好き、お座りもお手も得意です。
同じ繁殖犬で、極悪な環境で育ったワンコ達が1匹でも、幸せになってくれたらと思うばかりです。