私は以前動物病院に勤めていました。
その頃に実際にあった、飼い主さんが愛犬を大事にしないがために結果として犬を死なせてしまった悲しい出来事について体験談をお話ししたいと思います。
心臓の悪いキャバリア
飼い主さんがキャバリアの愛犬を連れて予防注射を受けに来院しました。
その時に聴診をすると、非常に酷い雑音が聞こえました。胸に手をあててみると心臓が異常な程ドキドキしているのが手に伝わり、心臓が確実に悪いのがみてとれました。
先生は心電図などの詳しい検査をすすめましたが、飼い主さんは「お金かかるでしょ?しなくていい」と言いました。
心臓の状態は聴診する限り非常に悪いから犬は苦しいはず。心臓に対する飲み薬を飲むことを勧めると先生は言いましたが、飼い主さんは頑なにお金を気にしていらないと拒否しました。
しかし、その飼い主さんは、全身ブランド物の服やバックを身に付け高級車に乗り病院に来ていた方なので、お金がなく払えない家庭とかそういう事情ではなさそうでした。この犬にお金をかけるつもりはない、そういう風に言っているようでした。
先生は、激しい運動や暑さは心臓の負担になるから気を付けるように、など様々な注意事項を飼い主さんに説明しましたが、ちゃんと実行してくれるかどうか微妙なリアクションでした。
その飼い主さんは元々、犬のこともあまり大事にしていない方で、犬は身体のあちこちに皮膚病を患っており、その他には外耳炎、爪や足裏の毛が伸び放題でいつも来院していました。酷い時には伸びすぎた爪が折れたり、肉球に刺さってしまっていることもありました。
私はいつもその子が来ると無料で耳掃除や爪切りや足裏の毛のカットをしていました。もう少しマメにお手入れしてあげて下さいと伝えましたが改善されることはありませんでした。
炎天下の中、走らせ続ける
そんなある日、恐れていた事態が起きました。
真夏の炎天下のある日、その飼い主さんから電話がかかってきました。
「犬が死にそうでヤバい」とのこと。
診察時間外でしたが、すぐに来院するように伝えました。
来院すると、その子は変わり果てた姿でぐったりと横たわり、舌は紫色になり目を見開いていました。
飼い主さんに事情を聞くと「真夏の炎天下の中、犬を連れてキャンプに行き、犬は子供達が連れ回してずっと走らされていた」そうです。
子供達がリードを引っ張り続け走っている最中に突然犬が倒れて動かなくなってしまったということでした。その後、様々な治療をし手を尽くしましたが、残念ながらその子は亡くなってしまいました。
動物を飼う前に考えてほしいこと
今回のような悲しい出来事を減らすにはどうしたらいいでしょうか。
安易に動物を飼わないために、動物を飼おうとしている方に以下の点をよく考えて頂きたいと思います。
- 犬も年をとり病気や怪我をします。そのためにお金や時間をかけてあげられるか。
- 一度飼ったなら最後まで愛情を注ぐ。
- トリミングや爪切りなど日頃のケアを怠らない。
- 一目惚れや衝動買いをしない。
- 家族全員で協力して世話が出来るか。
- 子供や孫が生まれても変わらずに愛情を注ぎ手間暇かけられるか。
- 家族全員の同意を得ていて生涯飼える環境が整っているか。
- 犬種ごとの性格やなりやすい病気をきちんと調べたか。
- 飼い主さんがしつけを学び実行出来るか。
- 定期的に健康診断を受ける。
- 治療が必要であればきちんと受ける。
- 最期の看取るまで大事にする。
まとめ
私たち人間は病気の早期発見のために、ある程度の年齢になると定期的に健康診断を受けている方がほとんどだと思います。
私は動物病院に勤めている頃、シニア期の犬を飼われている方に健康診断の説明をよくしていました。
きちんと愛犬の為に健康診断を受ける方もいれば、中には、
という飼い主さんもいました。
犬を大事に飼うということは可愛がるだけではありません。
健康診断の必要性は犬も同じであり、ましてや異常がみられる時は詳しい検査や薬が必要です。
犬が病気になれば、最善を尽くしなるべく苦しくないように治療をしてあげることが飼い主さんの勤めであり責任だと思います。
今回のケースでは、日頃の飼い方からみてもあまり大事にしておらず、医師からの注意も聞かず、飼い主さんの不注意から犬が亡くなってしまった悲しい出来事でした。
キャバリアはとても温厚な性格の子が多く、嫌がることをしてもじっと耐える性格の子でした。病気の犬の体調を考えずに無理をさせ、結果として亡くなってしまい、とても悔やまれます。
おもちゃやファッション感覚で安易に犬を飼い大事にされない方が少なからずいます。本当に大事に飼える方だけが動物を飼ってほしい、安易に飼う方が減る世の中になってほしいと思います。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 匿名
翌日、病院に連れて行きレントゲン撮影したところ、股関節形成不全がわかりました。「脱臼は、しばらくサプリで様子を見ましょう。」と言う事でしたが、状態が悪化してきたので手術を受けました。
それ以来、定期的に股関節と膝の具合を見てもらっています。(サプリも続けてます)そして、心音の聴診と体重測定それから、垂れ耳なので耳のチェックと、必要な際には耳の治療をしてもらっています。
言葉が話せない分、日頃から愛犬の様子は細かく見ています。
とても、無理なんてさせられる訳ありません。
女性 コブラ
40代 女性 シドアサ