犬のクッシング症候群とは?

クッシング症候群は「副腎皮質機能亢進症」とも呼ばれ、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される病気です。主に5歳以上(多くは8歳以上)の中高齢の犬に見られます。
副腎は、腎臓のすぐそばに左右に一つずつあり、落花生のような形をしています。外側の副腎皮質からはコルチゾールとアルドステロンというホルモンを分泌し、内側の副腎髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンを分泌します。
コルチゾールは炎症や免疫の抑制、肝臓での糖新生(糖以外の物質からブドウ糖を作る働き)の促進、血圧の維持など、さまざまな働きを担っていますが、分泌が過剰になると、全身に悪影響を及ぼします。
犬のクッシング症候群の約8〜9割は、脳の下垂体に原因がある「下垂体性」です。下垂体性の場合、下垂体に腫瘍ができることで、副腎皮質に指令を出す副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、副腎皮質がコルチゾールを作り続けてしまいます。
そのほか、副腎に腫瘍ができてコルチゾールをどんどん生成してしまう「副腎腫瘍性」と、ステロイド薬の過剰または長期間使用による「医原性」があります。
診断には血液検査やACTH刺激試験、超音波検査などが行われ、治療法には内科療法(投薬)、外科療法(手術)、放射線療法があります。医原性の場合は、獣医師の指示のもとステロイド薬を段階的に減らしていくことで、完治を目指すことが可能です。
犬のクッシング症候群の危険な6つの症状

クッシング症候群は、老化現象と飼い主さんが思い込んでしまい、見過ごされがちな病気です。「年のせい」と思っている愛犬の変化が、実はクッシング症候群の症状かもしれません。ここでは、犬のクッシング症候群の危険な6つの症状をご紹介します。
1.多飲多尿
多飲多尿は、犬のクッシング症候群において最も顕著に見られる症状です。
通常、体内の水分は抗利尿ホルモンの働きによって腎臓で再吸収され、尿が濃縮されています。しかし、コルチゾールが過剰になると、この抗利尿ホルモンの働きが妨げられ、腎臓での水分の再吸収がうまく行われなくなってしまいます。
その結果、薄まった尿が大量に体外へ排出されて水分不足になり、それを補うために水をたくさん飲むようになるのです。
犬の場合、1日の飲水量が体重1kgあたり100ml以上なら多飲、排尿量が体重1kgあたり50ml以上なら多尿と判断されます。例えば、体重5kgの犬であれば、1日に500ml以上のお水を飲むと多飲になります。
2.食欲増進
「食欲があるのは元気な証拠」と考えてしまいがちですが、実は食欲増進もクッシング症候群の代表的な症状の一つです。過剰なコルチゾールは、血糖値を乱高下させたり、食欲に関わるホルモンのバランスを乱したりするため、空腹感や過食をもたらします。
愛犬がゴミ箱をあさったり、食べ物を探し回ったりするなど、食べ物への異常な執着を見せるようになったら注意が必要です。
3.筋肉の減少
コルチゾールは、筋肉のタンパク質を分解して糖を作る働き(糖新生)を促します。そのため、クッシング症候群によってコルチゾールの分泌が過剰になると、筋肉が減少していきます。
筋肉の減少に伴って筋力が低下するため、散歩を嫌がったり、段差につまずくといった様子が見られるようになります。筋肉の減少や筋力の低下を「老化」と思い込んでしまいがちですので、多飲多尿などのほかの症状を伴っていないか注意深く観察することが大切です。
4.腹部の膨らみ
クッシング症候群になると筋肉が減少していきますが、お腹だけはポッコリと膨らみます。食欲増進によって脂肪が蓄積することに加え、過剰なコルチゾールによって肝臓が大きく腫れたり、お腹の内臓を支える腹筋が萎縮したりしてしまうために、このような体型になるのです。
このお腹だけがぽっこりと膨らんだ体型は、「ポットベリー」と呼ばれ、クッシング症候群の重要なサインです。
5.皮膚や被毛のトラブル
クッシング症候群は、さまざまな皮膚や被毛のトラブルを引き起こします。
コルチゾールにはコラーゲンの生成を抑制する働きがあるため、過剰になると皮膚が薄くなる菲薄化が起こります。それに伴って、皮膚にカルシウムが沈着する皮膚石灰沈着症を引き起こすことが多いです。皮膚石灰沈着症になると、皮膚に白っぽいザラザラした塊ができます。
また、過剰なコルチゾールは脱毛や色素沈着も引き起こします。クッシング症候群による脱毛は、左右対称に毛が抜け、かゆみはないのが特徴です。
6.パンティング
犬が舌を出して「ハァハァ」と荒い息をすることをパンティングといいます。犬は暑いときや興奮したときなどにパンティングをしますが、クッシング症候群の症状としてパンティングが見られることがあります。
クッシング症候群によるパンティングは、横隔膜の筋力が低下することで呼吸がしづらくなったり、脂肪の蓄積や肝臓の腫大によって胸腔が圧迫されたりするために起こります。
暑くない場所や安静時にも頻繁にパンティングをしている場合は、病気のサインかもしれません。早めに動物病院を受診しましょう。
犬のクッシング症候群を早期発見する方法

クッシング症候群は、放置すると糖尿病、高血圧、血栓症などの深刻な合併症を引き起こし、寿命を縮めてしまう恐れがあります。また、医原性を除いては予防法がないうえに、進行性の病気でもあるからこそ、早期発見と早期治療が重要になります。
ここからは、犬のクッシング症候群を早期発見する方法をご紹介します。
1.飲水量や食欲などの変化を見逃さず、早めに受診
クッシング症候群を早期発見するには、まず日々愛犬をよく観察し、飲水量や排尿量、食欲などの変化を見逃さないことが大切です。体型や被毛などの見た目、呼吸の変化にも注意しましょう。
具体的には、以下のようなことをチェックしてください。
- 多飲多尿になっていないか
- 異常に食欲旺盛になっていないか
- 筋肉が減少し、お腹だけがぽっこり出ていないか
- 左右対称に脱毛していないか
- 苦しそうに呼吸をしていないか
もし、該当することがあったり、「何かおかしい」と感じたりする場合は、早めに動物病院を受診しましょう。愛犬の小さな変化を見逃さず、早めに動物病院を受診することが、早期発見と早期治療につながります。
2.定期的な健康診断
病気の早期発見には、定期的な健康診断が欠かせません。定期的に健康診断を受けることによって、目に見える症状が出る前に病気の兆候を見つけることができます。クッシング症候群の早期発見においては、血液検査、尿検査、腹部超音波検査が特に重要な検査になります。
成犬期は1年に1回、シニア期(7歳頃〜)以降は半年に1回(年に2回)の健康診断が理想的です。
まとめ

クッシング症候群は、放置すると糖尿病などの合併症を引き起こし、愛犬の寿命を縮める恐れのある病気です。この病気になると、コルチゾールが過剰に分泌されて、さまざまな症状が現れます。
しかし、食欲増進や筋肉の減少など、「食欲があるから元気」「年のせい」と見過ごしてしまいやすい症状が多いです。だからこそ、日頃から愛犬をよく観察して小さな変化を見逃さないようにしながら、定期的に健康診断を受けて早期発見につなげましょう。



