私とタロロの4年間
タロロとの出会い
「もう、1ヶ月以上いると思う。」と、祖父から迷子の犬の話を聞いていたのですが、2012年12月25日、タロロと初めて会ったのはクリスマスの寒い日でした。
祖父母の家の近所を放浪していたようで、不安そうな顔をして近づいてきたのですが、飼い主ではないと分かったのか離れていきました。
保護したいとは思ったものの近づけば逃げて行ってしまうし、私は覚悟を決めなければなりませんでした。
99%の確率で捨て犬だろう…そう感じていたからです。
もし、保護して飼い主を探したとしても見つかる確率はとても低いし、飼い主が見つからなければ私が責任を持ってこの子と暮らさなければならない、そう思いました。
また2日後に用事があって祖父母の家へ来なければならない。
その時にまだタロロがいれば、その時は必ず保護しよう!そう決めて、この日は帰りました。
次の日、祖父へ連絡をしてタロロのことを確認したのですが「いなくなったよ」と言うのです。
そしてさらに次の日、12月27日。
用事があって祖父母の家へ行く予定だったのですが、私は行くことができませんでした。
代わりに、祖父母の家へ行く母に「タロロのことを探してみてね」と、お願いしました。
母は「いなかったよ」と帰って来たのです。
どうしても自分の目で確かめなければ納得できなかった私は、すぐに祖父母の家へ向かいました。
車を降りてすぐタロロを呼びました。
すると、私の方へ走ってくるタロロの姿がありました。
どこかに隠れていたのでしょうか。
私が迎えに来てくれることを待っていてくれたのでしょうか。
誰が呼んでも姿を現さなかったタロロが私の呼びかけによって駆け寄って来てくれたのです。
タロロを保護した1年
99%の確率で捨て犬だろう…そう感じながらも、1年間は飼い主を探そうと決めました。
その1年間、何ひとつとして情報を得ることはできませんでした。
あっという間に1年が過ぎ、タロロは保護犬を卒業し、私の愛犬となったのです。
タロロが放浪していた1ヶ月
タロロが放浪していた場所は祖父母の家の近所でした。
その1ヶ月、タロロがどのように過ごしていたのか、祖父母が教えてくれたことがあります。
- 「こっちへ来るな!」と石を投げつけられていた
- 夕方になると山の方へ行って遠吠えをしていた
これを聞いて、「どんなに寂しくて不安で怖かったか…」と切なくなりました。
12月の真冬に1ヶ月も放浪し、雨の日が続いていたし、食べるものは何もない。
田んぼと山に囲まれた田舎町の知らない土地で独りぼっちだったのです。
タロロが克服したこと
うちへ来たばかりの頃、タロロはお散歩をすることができませんでした。
人とすれ違うこと、車とすれ違うこと、道路を横断することを極度に怖がったのです。
人を見ると、車を見ると、すぐに家に引き返そうとするのです。
近所にある芝生の上でおトイレを済ませたら帰る。
タロロのお散歩時間はいつもたったの5分でした。
少しずつ少しずつ、歩ける距離を延ばしていきました。
近所の公園まで行けるようになり、さらにその先にある公園まで行けるようになり、お散歩コースも増えていきました。
でも、問題もたくさんありました。
- 人とすれ違うだけでギャンギャン吠えて飛びかかろうとする。
- 遠くにいる犬が目に入るだけでギャンギャン吠えて飛びかかろうとする。
- 猫に飛びかかろうとする。
この度にものすごい力で引っ張るので、私は何度も転倒し、ケガをすることもありました。
歩くだけで激痛が走るくらい膝を痛めたこともありました。
- 人とすれ違うこと。
- 犬や猫とすれ違うこと。
- 車とすれ違うこと。
- 道路を渡ること。
この4年間でタロロが克服した主な4つです。
現在のタロロ
タロロはお散歩が大好きです。
朝と夕、1時間ずつ歩きます。
雨の日も風の日も安全であればお散歩しちゃいます。
大好きなお散歩コースは海です。
タロロの日課は自宅の警備をすること。
ベランダにいる時はこのようにして警備しています。
人とすれ違うことはできるようになったのですが、声をかけられたり触ろうとされるとギャンギャン吠えて飛びかかろうとします。
私と家族以外、タロロに触れることができる人間はいません。
近づくことさえできません。
でも、実はたったひとり、タロロが心を許す、知り合いのおばちゃんがいます。
犬が大好きでタロロと仲良くなりたいと言って何度も会いに来てくれた人です。
タロロには犬のお友達がいません。
お散歩の時、犬とすれ違うことはできるようになったのですが、ギャンギャン吠えて飛びかかろうとします。
猫とすれ違うこともできるようになりました。でも、噛みついてしまうかもしれないので決して近づくことはさせません。
この4年間で私もタロロが引っ張る力に慣れたので上手く制御することができます。
それでも相手の犬が大型犬であったり、すれ違うことさえ困難な相手である場合には、タロロを抱きかかえてコースを変えます。
でも、そんなタロロが唯一、心を許す犬がいます。
うちの三代目わんこ、ポメラニアンの姉貴分です。
(ちなみにタロロは名前ではなく愛称で、うちの四代目で初めての男の子です。)
ポメ姉貴には一切威嚇することもなく、ごはんやおやつを奪われても怒りません。
鼻をガブッとされても怒りません。
仲良しというよりもラブラブな雰囲気です。
車とすれ違うことには慣れましたが、トラックなど大きな車は怖がります。とくに救急車や消防車が苦手です。
でも、車が通り過ぎるのを待って、またお散歩を再開することができます。
ただ、車に乗ることは大嫌いです。
病院へ行くときなど、どうしても車に乗って出掛けなければならないことがあります。
そんな日は、とっても疲れてしまうようです。
道路を渡ることはできるようになりましたが、自宅近くにある国道は未だに渡ることを嫌がります。
大きなトラックもたくさん通りますし、車がひっきりなしに通るからです。
タロロはお家の中が苦手でした。
真冬や真夏や大雨の日など、お家の中で過ごしてもらいたくても「外に出せー!出してくれー!」と鳴いていました。
今でもフローリングが苦手です。フローリングの上は歩きません。
お外で育ったのかなと感じています。
タロロは抱っこが大嫌いです。私の隣にはいてくれるのですが、抱きしめようとすると全力で拒否されます。
あまり触れられたり抱っこされた経験がなかったのかなと感じています。
タロロのママになった私
抱っこやハグが大嫌いなタロロ。
私のハグやキスを全力で拒否していましたが、最近はとーっても甘えん坊なんです。
上の写真は甘えているお顔なんですよ。
お腹を見せてゴローンしてくれるようになったのも最近のことです。
お散歩の時、あまりにも強い力で引っ張るからお互いに疲れてしまっていたし、転倒してケガをすることもあった私ですが、最近はゆったりと歩くことができています。
タロロが引っ張るタイミングや引っ張る力にも慣れたし、咄嗟のことでも対応できるようになったからです。
歩きながらたまにタロロが私の方を振り返って、鼻で私の膝にチョンッと触れるのですが、これは何のサインなのかな。
「ちゃんと僕について来てる?」「ママ、いる?」「いなくならない?」そんな風に確認しているのかな、なんて考えてしまいます。
私、ちゃんとタロロのママになれたかな?って不安になることもあります。
でも、この4年間で確実に信頼関係を築けたのではないかと思っています。
まとめ
みなさんは迷子の犬を見てどう思うでしょうか。
どのような行動をするでしょうか。
保護して、警察や愛護センターへ引き渡す人はたくさんいると思います。
飼い主と再会できる子もいます。
里親が見つかる子もいます。
でも、飼い主や里親が見つからなかった犬たちは保健所へ行き、殺処分されてしまうのでしょう。
タロロと出会ったこと。
タロロを保護したこと。
タロロを家族に迎えたこと。
タロロのママになって4年間、大変なことがたくさんありました。
でも私にとってはとても幸せなことです。
タロロも「幸せだ。ママの子になって良かった。」そう思ってくれていたら嬉しいです。
私は20年以上、犬と暮らしてきました。
頭の中で考えていることよりもずっとずっと大変なことばかりです。
いつまでも元気に走り回っていてくれるわけではありません。
壮絶な介護生活も経験しました。
犬を飼うこと、犬を保護すること、保護犬を家族に迎えること。
それは「命を預かること」です。
タロロは放浪していた1ヶ月間、寂しくて不安で怖くて、夕方になると山の方へ行って遠吠えをしていました。
これを書いている今も、寂しくて不安で怖い思いをしている子がどこかにいるのだと思うと切なくなります。
最後にこんな言葉を思い出しました。
『助けが必要なとき、助ける側が相手を選ぶのではなく、助けられる側が相手を選ぶのだ。』
タロロが私を選んでくれたのかな?もしそうなのであれば最高に幸せなことです。