念願の「私の犬」そして試練の日々
小さな頃から犬が大好きでしたが、両親の反対もあり犬を飼うことはできませんでした。
「大人になったら絶対飼うんだ!」と、わずかなお小遣いを貯めて<世界の犬図鑑>を手に入れて、毎晩ベットの中でこっそりと眺めていたのを思い出します。
大人になり生活も安定した頃に、とうとう念願の「マイファーストドッグ」を迎え入れることに。その頃は、「犬を飼う=ペットショップかブリーダーから」という認識しかなく、ペットショップで誰にも負けないくらいに元気一杯にアピールしてくれたジャックラッセルテリアの男の子(トロン)を家族として迎え入れることになりました。
ジャックラッセルテリアの飼育の難しさは理解し、覚悟していたつもりでしたが、私の想像をはるかに超える破天荒っぷり!犬の飼育初心者だった私は、しつけの本を読み漁り、書いてある通りに実行するもなかなかうまく行かず、時にはお風呂に浸かりながら「思いが伝わらない・・・」と涙を流す日もありました。
2番目に迎え入れたのは、当時のパートナーが飼っていたパグの男の子(ジゴロウ)です。
とってもマイペースで食いしん坊。のんびりとしながらも、気がつくと常に膝に乗ってきてくれるような上手な甘え方に驚きました。それまで全く興味のなかった、鼻ペチャ犬に夢中になったのもこの子がきっかけです。
当時、皮膚の状態があまり良くなく病院通いを続けていましたが、薬が切れてしまうとあっという間に元どおり。「なんとかしてあげたい!」と、犬のご飯について必死に勉強し始めたのもこの頃です。今では薬を飲むこともなく良い状態が続いています。
一緒に暮らし始めたのはジゴロウが3歳、トロンが1歳の時でした。2頭とも男の子、しかも成犬でしたが、2頭とも穏やかな男の子ですので、一緒に暮らし始めることへの不安や心配はほとんどなく、とてもスムーズに迎え入れることができました。
その後、パートナーとは別々の道を進むことになりましたが、犬たちの今後の幸せを考え、2頭とも私が引き取ることになりました。
今となってはどれも愛しい思い出ですが、これらの飼育上の不安を乗り越えられた達成感が、犬の飼育に関すること、犬の健康に関することに夢中になるきっかけとなりました。
その流れで「保護犬」「殺処分」という、心苦しい問題に目を向ける機会ができ、保護犬たちの為に出来ることはないかと考えていました。
保護犬の新しい家族探しのお手伝いを開始!
しつけや健康上の減り、いわゆる「シニア期」に差し掛かった2頭と1人の生活は穏やかに過ぎていました。気持ちにも余裕ができてきた頃に、
「保護犬たちのために何かしたい」
そう考えるようになりました。
自分には何が出来るか?どうしたらいいのか?と考え、保護犬たちの新しい家族探しのお手伝いを始めることにしました。
犬が大好きな私は、新たな子が保護されるたびに「連れて帰りたい!でも3頭目は無理!だから別の人に幸せにしてもらってね」という気持ちで活動をしていました。その日、その子に出会うまでは本当にそう思っていたのです。
初めての感情「胸のドキドキが止まらない!」
予想に反した驚きの初対面
2016年の2月末、その日は新たに3頭が保護されてきました。様子を見ながら、順番にご飯をあげたり、健康チェックを進めていきます。
1頭目、2頭目共に、周りを警戒しているようでした。ほとんどが最初はなかなか自分から出てきてはくれません。その場合は無理強いをせずにゆっくりと時間をかけていきます。
「この子も緊張してるかな?」と最後のクレート開けると、予想に反して小さな犬が元気よく飛び出してきました。尻尾も全開でブンブン!狆(チン)の「つくね」との衝撃の初対面です。
見た目と性格のギャップ
たくさんの保護犬たちと触れ合ってきましたが、それまで、最初からこんなにご機嫌な保護犬には出会ったことはありませんでした。おやつを出してみると、迷うことなくパクパク。私が歩くとトコトコと後をついて回ります。
見た目はとても痩せており、ツヤのないバサバサの毛、目は濁り、耳の中は真っ黒。いつも舌を出しているためご機嫌な様子に見えますが、表情自体は無表情。健康チェックをしたところ、いくつかの問題を抱えていることもわかりました。
「胸が苦しい!だから連れて帰ります!」
それでも嬉しそうにトコトコと後をついてくるその姿を見るたびに胸が苦しくなりました。しかし、今まで保護されてきた子たちに対して感じていた「苦しさ」と違うことに気づきます。
今まで感じていたのは「大変だったね」「幸せになってね」という胸の苦しさ。今回は、それとは違う胸の苦しさ。とにかく、全く別のことをしていてもすぐにあの「無表情で笑っている姿」を想像し、胸が苦しくなるのです。自分でもどういう感情だったのか今でもうまく説明ができません!
「治療費はどのくらいかかるだろうか。」
「先住犬たちにストレスをかけてしまわないだろうか。」
「何よりも、この小さな命を最後までしっかりと責任を持って守れるだろうか。」
吐いてしまいそうなほど悩み、やっぱりダメ。そう考えても、説明できない胸のドキドキは止まりません。きっと私の中では「この子を迎え入れる」以外の選択肢は最初からなかったのだと思います。
「仲良くできるだろうか?」心配だった先住犬との相性
緊張の初対面
「本当に連れて帰ってきてしまった・・・」と、別の意味でのドキドキを抱えながら帰宅、先住犬は2頭ともオス。元々穏やかな性格ではあるものの、緊張の初対面です。先住犬がいる家に新たな犬を迎え入れる場合、この初対面がとても重要なのです。
まずはクレートのまま、先住犬に自分たちの意思で自由に確認をさせました。2頭とも、クレートの周りをグルグルと回りながら臭いを嗅ぎ確認していきます。吠えることも唸ることもなく、5分ほどで「もういいや」と、クレートの周りから離れていきました。
次は新しく参加する保護犬の番。
初対面の時に元気一杯にクレートを飛び出しては来たけれど、さすがに犬がいる場所では緊張して出てこないかな?と思い、自分から出てくるのを待つつもりでクレートの扉を開けました。ところがご機嫌に元気よく飛び出して、怖がるそぶりもなく、我が家の犬用トイレに直行、あたり前のようにトイレを済ませ、早速家の中の探検を始めたのです。2頭の先住犬もボーゼンとしている様子でした。
家族になることを決めたのは3頭の犬たち
最初は少し距離を置いていた先住犬たちも、おおらかで、積極的な「肉食系女子」のおかげか、すぐに馴染んでくれました。
迎え入れてから3日ほど経った頃、ふと見ると、つくねがトロンにくっついて眠っていました。トロンは怒りもせず、つくねの背中に顎を乗せ眠っています。「ああ、この子たちはもう家族なんだな」そう思った瞬間でした。
日に日に変化する<行動><体調><表情><容姿>
トイレのしつけなどはゆっくりのんびりと
先住犬との相性の心配は解消されましたが、以前の生活環境がわからないため、生活習慣、健康上のいくつかの不安は続きます。
迎え入れ後、つくねがすぐに風邪をひき、風邪がジゴロウに移ってしまったり、食糞(ウンチを食べてしまう)のクセがあったり、トイレがなかなか覚えられなかったり。
迎え入れたのは推定3歳前後だったため、食糞のクセやトイレなど、約3年で身についた生活習慣を変更するには、子犬から買い始めるよりも時間がかかります。1年経過した現在、トイレの失敗はほぼなくなりましたが、食糞のクセはまだまだ直りません。どうしたら覚えてくれるか?しつけは、犬と飼い主の知恵比べ。飼い主の誘導次第です。これは保護犬に限ったことではないと思っています。
一番の変化「毛並みの違い」
生活をする上で、一番変化がわかりやすかったのは「毛並み」です。
ゴワゴワでパサパサ、黄ばんでいた毛並みが、どんどんと柔らかくなり艶やかになっていきました。犬の飼育をする上で生活環境、栄養状態がとても重要なんだな、ということを改めて実感させられました。
おもちゃを追いかけ回してはしゃいだり、おすわりを覚えて褒められて嬉しくて部屋中を駆け回ったりと、それまで見たことない姿を徐々に見せてくれるようになってきました。元々、いつもご機嫌な子ではありましたが、より一層、表情が豊かになりキラキラとした笑顔が見られるようになりました。
まとめ
どこから迎えても、何歳からでも家族になれます!
私が迎えた子が特別に飼育しやすい子だったのかもしれません。中には人間が怖くて噛んでしまったり、トイレがなかなか覚えられない子もいます。しかし、それは飼育者の向き合い方一つで、子犬から迎えたとしても同じことが起きうると思います。
保護犬の中でも、子犬はすぐに家族が決まり「子犬待ち」の方々が多い地域もあるようです。
「もうこの歳になっていると、この先長く一緒にいられないから」
「病気があるから」
シニア世代の保護犬たちは、このような理由で家族が決まらないケースもあります。
しかし、私が迎えたつくねも、元々いる先住犬も、明日大病を患ってしまうかもしれません。人間と一緒です。
1日1日を大切に、特に辛い思いをしてきた保護犬たちには、最後は人間の愛情を感じて生活することを実感してほしい!そう願っています。
ユーザーのコメント
30代 女性 みい
周りからはあと数年しか生きられないのに寂しくない?少ししか居れないじゃない、と言われますが、私には1年って長いと思います。その間家族も居なく死んでいくよりは1年でも愛情持って育てれば死ぬときも寂しくないかなぁ、と思います。
うちの先住犬もペットショップで子犬で買いましたが、成犬にはいいところもたくさんあることを皆さんに知ってほしいですね。
40代 女性 匿名
40代 女性 さちこ