犬に苦痛を与える『飼い主からの虐待』5選 愛犬をネグレクトする人の心理とは?

犬に苦痛を与える『飼い主からの虐待』5選 愛犬をネグレクトする人の心理とは?

犬を飼うということは、その小さな命のすべてに責任を持つということです。しかし残念ながら、飼い主からの虐待に苦しむ犬たちが存在します。この記事では、犬に苦痛を与える飼い主からの虐待5つと、愛犬をネグレクトする人の心理についてご紹介します。

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記事の監修

めのうアニマルクリニック院長。猫が大好きなあまり、犬と猫を分けた動物病院を開院。「犬にも猫にも優しい動物病院」をコンセプトにしています。腫瘍学を得意分野としていますが、しつけに対しても力を入れており、パピークラスを開校して子犬のトレーニングを行っています。

犬に苦痛を与える飼い主からの虐待5選

悲しそうな犬の顔

犬は飼い主を頼りに生きています。その無垢な信頼を踏みにじる飼い主からの虐待は、犬の心と体に深刻なダメージを与えます。虐待というと身体への加害を想像しがちですが、必要な世話を放棄するネグレクトもまた虐待です。ここでは、犬の心身に苦痛を与える飼い主からの虐待を5つご紹介します。

1.暴力をふるう

叩く、蹴る、物を投げつけるといった暴力行為は、紛れもない身体的虐待です。感情的に暴力をふるうことはもちろんですが、犬がいたずらをした、言うことを聞かないなどを理由に体罰を与えるのも虐待にあたります。「しつけ」と称しても、暴力は決して正当化されません。

身体的な暴力は、犬に激しい痛みと恐怖を与え、骨折や内臓損傷など命に関わる重傷を負わせる可能性があります。また、犬は痛みや恐怖を伴う経験を強く記憶するため、飼い主に対する信頼関係が完全に崩壊し、人間不信や攻撃性に発展することもあります。

2.大声で怒鳴る

日常的に大声で怒鳴ったり、罵倒したりする行為は、犬に強い恐怖心と精神的苦痛を与える精神的虐待です。常に怒鳴られてばかりいる犬は、慢性的な恐怖や不安から情緒不安定になりやすく、異常に怯えたり、反対に攻撃的になったりすることがあります。

たとえしつけとしてでも、怒鳴るのは適切ではありません。よくない行動を叱るときは、怒鳴らなくても低い声で「ダメ」「ノー」などと言えば犬に伝わります。

3.食事や水を適切に与えない

犬の健康を維持できるだけの適切な量と質の食事や新鮮な水を与えない行為は、ネグレクト(世話の放棄)の中でも生命に関わる深刻な虐待です。食事や水を適切に与えないことにより、犬は飢餓、脱水、栄養失調に陥り、衰弱死に至る可能性もあります。

犬の年齢や健康状態に合った食事を適量与え、いつでも新鮮で清潔な水を飲めるようにしておくのは、基本的かつ必須の世話であり、これを怠ることはネグレクトに他なりません。

4.必要な医療を受けさせない

病気やケガを認識しているにもかかわらず、獣医師の診察や治療を受けさせず放置するのは、犬の苦しみや痛みを長引かせる重大なネグレクトです。治療の遅れは、病状の悪化や命の危険につながります。

また、ワクチン接種やフィラリア予防などの予防医療も、犬の健康と命を守るために必要な医療の一環です。これらを怠り、結果として犬が病気になったり苦痛を感じたりする状況は、ネグレクトに該当する可能性があります。

5.劣悪な環境で飼育する

居住空間に排泄物が放置されたままであったり、適切な温度管理が行われていなかったりするなど、劣悪な環境で犬を飼育するのもネグレクトによる虐待です。

不衛生な環境は犬に皮膚病、寄生虫、感染症などの健康被害をもたらし、温度管理がされていない環境は熱中症や低体温症のリスクを高めます。また、劣悪な環境での飼育は、犬に精神的なストレスと身体的な不快感を与え続け、異常行動や攻撃性を引き起こす要因となります。

愛犬をネグレクトする人の心理

キッチンで座る女性と犬

必要な世話を放棄するネグレクトは、暴力を伴わないものの、犬の健康と命を脅かす深刻な虐待の一形態として問題視されています。この問題を解決するためには、なぜ飼い主が愛犬をネグレクトしてしまうのかという心理的背景を深く理解することが重要です。ここからは、愛犬をネグレクトする人の心理について掘り下げていきます。

1.「面倒」

「可愛い」という一時的な感情だけで安易に犬を飼い始めた人は、犬を飼うことの責任や手間を深く考えていないことが多いため、ネグレクトに至るケースが少なくありません。

最初は「可愛い」という感情が先行しますが、世話の手間や費用、しつけといった現実的な負担に直面するにつれて、徐々に犬への関心と愛情が失われていきます。その結果、犬に関わることを「面倒」だと感じ、世話を後回しにするようになり、最終的に放棄してしまうことがあります。

犬はおもちゃではなく、生涯の責任を伴う家族であるという認識が欠けていることが根源にあると言えるでしょう。

2.「自分には無理」

犬に関する問題に直面し、「自分には問題を解決する力はない」という無力感に苛まれると、「自分には無理」だと感じ、犬を無視したり放置したりしてしまうことがあります。犬の存在をなかったことにし、現実から目を背けて責任を回避しようとするのです。

このようなネグレクトは、主に犬のしつけの問題(無駄吠えや破壊行動など)や、経済的な問題(予期せぬ高額な医療費など)が発生した際に起こりがちです。

3.「これで十分」

周囲から見れば明らかなネグレクトであっても、飼い主自身は「自分はちゃんと世話をしている」と思っていることがあります。「食事は1日1回で大丈夫」「犬は多少汚い環境でも平気」といった誤った認識を持ち、本人は「これで十分」と思い込んでいます。

飼い主に悪意はないものの、認識にズレが生じているために、犬が適切な世話を受けられず、苦痛を強いられている状況です。

4.「自分のことで精一杯」

飼い主自身が心身の病や重度のストレス、経済的な困窮など、困難な状況下にある場合、犬の世話まで手が回らないことがあります。

この場合、犬への愛情や責任感が完全に失われたわけではありませんが、飼い主は「自分のことで精一杯」で、犬の世話をする物理的・精神的余裕がありません。その余裕のなさが、ネグレクトという結果を招きます。

まとめ

ケージに入れられた子犬

犬に苦痛を与える虐待は、暴力をふるう身体的虐待だけでなく、大声で怒鳴って恐怖心を与えるなどの精神的虐待も含まれます。また、食事や水を適切に与えない、必要な医療を受けさせない、不衛生な環境で飼育するといったネグレクトも虐待にあたります。

ネグレクトをしてしまう人の心理は、「面倒」「自分には無理」などさまざまです。問題に直面したり、世話が困難になったりした場合は、周囲に助けを求めたり、保健所や動物愛護センターに相談したりしましょう。それが、愛犬の命と福祉を守る飼い主としての責任ある行動です。

なお、ネグレクトを含む動物虐待は、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)により、厳しく罰せられます。

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