犬が人に噛みつく理由

犬が人に噛みつく理由は、さまざまですが、大きく「親愛の表現」「無感情」「対立感情」の3つに分類できます。この分類を意識しながら、噛みつく理由や引き金となる要因などをご紹介します。
1.親愛の表現:しゃぶり噛み
子犬によく見られる行動で、母犬の乳首に吸い付いてお乳を飲むときのように、人の指や手を軽く噛みます。
2.親愛の表現:毛づくろい噛み
犬は、自分の体や群れの仲間の体の被毛を、前歯で梳くようにして毛づくろいをします。飼い主さんの髪の毛や体毛にも、前歯を使って毛づくろいをすることがあります。
3.親愛の表現:じゃれ噛み
犬は、遊びの一環としてじゃれながら噛むことがよくあります。犬同士はもちろんですが、人に行うことも多いです。ただし、気を許している人にしか行いません。犬が元々持っている自然な行動ですが、社会化ができなかった犬は力の入れ加減がよく分からないことが多く、興奮すると血が出るほど強く噛んでしまう可能性もあります。
4.親愛の表現:要求噛み
犬は、言葉で飼い主さんに自分の要求を伝えられません。そのため、かまってほしい、お腹がすいたなど、飼い主さんへのアピールとして噛むことがあります。
5.無感情:誤認噛み
犬は、驚き慌てふためいたときに、とっさに噛んでしまうことがあります。飼い主さんと一緒におもちゃで遊んでいたり、おやつをもらうときなどにうっかり指を噛んでしまい、噛んだ犬自身が気付いていないことさえあります。
6.無感情:払いのけ噛み
犬は、人の手などを払いのけようとしてかじるように噛むことがあります。嫌なタイミングで抱き上げられたときなどで、これも噛む行為に感情は伴っていません。
7.対立感情:身体制御の噛みつき
犬は、自分の身を守るために相手に噛みつくことがあります。不審者に触られたり、信頼している人でも痛みなどがある部位を触られたり、不意打ちのように抱きつかれたり、長時間押さえつけられたりした場合に起こりやすいです。
これらはとっさの行動に見えますが、自分の身を守るため、相手への対立感情から引き出されている行動です。
8.対立感情:物や場所を守る噛みつき
犬は自分のものを守ろうとする傾向が強いため、ご飯やおやつ、お気に入りのおもちゃや居場所などを取られまいとして、近づいてきた人に噛みつくことがあります。
9.対立感情:衝動制御障害による攻撃
中には、遺伝・発達・脳機能の問題や病気が原因で、自分の感情や衝動をコントロールできない犬もいます。ちょっとした不安や不満でも感情が爆発して全力で噛みつき、犬歯が突き刺さり、流血するほどのケガをさせるケースなどが該当します。
愛犬の噛みつきを止めさせる方法

ここでは、愛犬の噛みつきをやめさせるための、一般的な方法をご紹介します。
しゃぶりがみ、毛づくろいがみの場合
愛情表現の一種なので、必ず止めさせなければならないわけではありません。しかし、噛む力が強くなってきた、成長しても止める気配がないなどで心配な場合は、噛もうとした瞬間に立ち上がり、犬から離れることで予防しましょう。
じゃれがみの場合
噛み癖として定着させないために、じゃれがみをするたびに下記の行動を繰り返します。
1.噛まれたらすぐに立ち上がりその場を離れる
2.犬の前から姿を消す
3.数分後、犬の元に戻る
隠れられない場合は、遊びを中断して直立不動になり、噛むのを止めたら遊びを再開します。これらの行動から、犬は「噛むと嫌なこと・つまらないことになる」と学習し、次第に噛まなくなります。
要求がみの場合
要求に応えると、「噛めばなんでも要求が通る」と学習してしまいます。噛んでいる間は要求に応えず、「伏せ」などの指示語で落ち着かせます。落ち着いたらご褒美として要求に応えましょう。
誤認がみの場合
やめさせたい場合は、「痛い!」と少し大袈裟に声を上げ、遊びを中断したりおやつを渡さないようにします。そして「伏せ」などの指示語に従えたら、ご褒美として遊びやおやつを再開しましょう。
払いのけがみ、身体制御の噛みつきの場合
日々のケアなどに必要な保定や接触に馴らしましょう。引き金となる行為の間はご褒美を与え、まだ食べたがっているうちに放します。これを根気よく繰り返せば、成犬でも社会化できます。
身体制御の噛みつきの場合も、個々の状況ごとに身の危険がないことを教えていきます。引き金となる飼い主さん自身の行動も、変える必要があります。
物や場所を守る噛みつきの場合
「頂戴」や「放せ」などの指示語で、咥えている物を手放させるトレーニングをします。ソファなど、共有している場所を飼い主さんが使う場合は、「座るよ」などと声をかけて近づき、飼い主さんに譲った際にご褒美を与えます。
固執してどうしても共有できない場合、犬専用エリアで過ごさせて居住空間を分けるなどの工夫も必要です。
しつけだけでは解決できないケースも

実際には、個々のケースごとに状況が異なります。複数の理由が関連していることも多く、飼い主さんだけでは手に負えないケースも多いでしょう。また衝動制御障害による攻撃は、治療が必要です。
決して飼い主さん一人で抱え込まず、最新の行動科学に基づいたプロのドッグトレーナーや獣医行動診療科の認定医や研修医のいる動物病院などに相談しながら、適切なトレーニングや治療を進めましょう。
まとめ

犬の噛みつきは、重大な事故に発展することも多い行動の一つです。しかし犬にとっては、ごく自然な行動の一つです。愛犬と一緒に暮らすためには、人間社会でのルールを教えなければなりません。
今回ご紹介した内容を参考に、愛犬が噛みつく理由やタイミングを把握し、個々の状況に応じたルールを教えてあげましょう。ただし手に負えない場合は、衝動制御障害である可能性も考慮しながら、専門家に相談して安全に対応しましょう。



