犬にNGな「ご飯の与え方」6選

1.人間の食べ物や与えてはいけない食品を与える
人間の食べ物は、犬にとって高カロリー、高塩分、高脂肪であることが多く、継続的に与えることで肥満や心臓病、腎臓病などの深刻な健康問題を引き起こす原因となります。
特に、高脂肪な加工食品や味付けが濃いものは、犬の消化器官に大きな負担をかけ、膵炎などの急性疾患を誘発するリスクを高めます。
さらに、ネギ類(玉ねぎ、ニンニクなど)、ブドウ、キシリトール、チョコレートなどは、犬にとって中毒症状や命の危険に関わる毒性を持つため、絶対に与えてはいけません。
飼い主の「少しだけなら大丈夫」という安易な考えが、愛犬の寿命を縮めたり、苦痛を与えたりする結果につながるため、犬の健康を第一に考え、ドッグフードや犬用の安全なおやつ以外は与えないようにしましょう。
2.食事の時間を決めずにダラダラと与える
食事の時間を固定せずに、愛犬が好きな時に食べられるように常にフードを置いておく「ダラダラ食い」は、健康管理としつけの両面で多くの問題を引き起こします。
まず、食事量の正確な把握が難しくなり、特に多頭飼いの場合は、どの犬がどれだけ食べたかの管理ができません。また、犬の空腹時間が一定しないため、消化器官が常に稼働している状態になり、消化器系の負担が増大します。
さらに、食事へのありがたみが薄れ、食への執着が生まれにくい、あるいは偏食につながる可能性があります。
決まった時間に食事を与えることは、体内時計を整え、健康維持に役立つだけでなく、「待て」などの基本的なしつけの機会にもなり、飼い主と犬との間に生活のリズムと信頼関係を築く重要な要素となります。
3.熱すぎる、または冷たすぎる食べ物を与える
愛犬に与える食べ物の温度に配慮を欠くことは、消化器系への直接的な負担や怪我につながります。熱すぎる食べ物(例えば、加熱直後のフードや温めすぎたウェットフード)は、犬の口内や食道に火傷を負わせる危険性があります。
犬は人間より熱さを認識しにくい場合があるため、特に注意が必要です。逆に、冷凍庫から出したばかりの冷たすぎるフードや水も、胃腸を急激に冷やし、消化不良や腹痛、下痢を引き起こす原因になります。
理想的なフードの温度は、人肌程度の「35℃~40℃」前後とされており、これは犬が獲物を捕食した時の体温に近い温度で、最も消化に良いとされています。適切な温度で提供することで、犬の食いつきも良くなり、体への負担を最小限に抑えながら栄養を摂取させることができるでしょう。
4.ドッグフードを水でふやかしすぎた状態で放置する
ドッグフードを水やぬるま湯でふやかすことは、特に子犬や老犬、歯が弱い犬の消化を助ける有効な方法ですが、ふやかした状態で長時間放置することは非常に危険です。
水で湿ったフードは、温度や湿度によって数時間で細菌が急激に繁殖しやすくなり、愛犬がそれを食べると食中毒や消化器系の感染症を引き起こすリスクが高まります。特に夏場や暖房の効いた室内では、このリスクはさらに増大するので注意してください。
そのため、ふやかしたフードは与える直前に準備し、犬が食べ残した場合はすぐに処分する必要があります。ふやかしを与える際は、一度の食事で食べきれる量だけを準備し、衛生面への細心の注意を払うようにしましょう。
5.食器の高さが合っていない
愛犬の体格に対して食器の高さが不適切な場合、特に大型犬や首や関節に問題を抱える犬、また老犬にとって、食事の際に大きな負担をかけることになります。
低すぎる食器で食事をすると、首を曲げる姿勢が続き、首や背骨に負担がかかるだけでなく、飲み込みにくさから食道に入りにくい(誤嚥のリスク)可能性があるので注意が必要です。
一方、高すぎると肩や前足に負担がかかることがあります。適切な食器の高さは、犬が前足を床につけた状態で、首を下げすぎず、ほぼ水平に保てる位置とされています。
特に大型犬や胸の深い犬種は、食道が曲がりにくく、胃捻転のリスクが高まるため、高さを調整できる食器台を使用することが、消化を助け、食後の体への負担を軽減するための重要な配慮となります。
6.食べ残しをすぐに片付けない
食事を終えた後の食べ残しを食器に入れっぱなしにしておくことは、衛生面だけでなく、犬の食に対する意識や飼い主との関係性にも悪影響を及ぼします。
食べ残しを放置すると、前述のようにフードが腐敗し、雑菌が繁殖する原因となります。また、食事後も食器が置きっぱなしになっていると、犬はいつでも食べられると認識し、食事への集中力や貴重さが薄れ、ダラダラ食いや偏食の原因にも繋がるでしょう。
さらに、食器を片付ける行為は、「食事の時間は終わり」という明確な区切りを犬に教えるしつけの一環です。
食事から10分~15分程度経過したら、犬が食べきっていなくても食器を片付けるルールを徹底することで、食事への集中を促し、「食事は飼い主が提供するもの」という認識を植え付け、フードガード(食事中の威嚇)の予防にもつながります。
意外と知らない食事のしつけの重要性

食事のしつけは、愛犬の健康管理だけでなく、社会性や飼い主との信頼関係を築く上で欠かせない要素です。単に「ご飯を食べる」という行為にルールを設けることで、犬は「食事は飼い主が管理し、許可があって初めて口にできるもの」と認識します。
この認識が、フードガード(食事中の威嚇)といった問題行動の予防につながるのです。具体的なしつけとして、「待て」をさせてから「ヨシ」で食べさせることは、犬の自己制御能力を養い、興奮しやすい場面での冷静さを保つ訓練になります。
また、食器に飼い主が手を添えたり、食べ物を取り上げる練習をしたりすることで、「飼い主の行動は安全である」という信頼を深め、万が一の際の誤飲対処にも役立ちます。
食事の時間が、愛犬の心と体の健康を育み、飼い主との良好な関係を強化する貴重な学習機会であることを理解するようにしましょう。
愛犬の体に負担をかけないためにすべき配慮

愛犬の体に負担をかけずに食事をさせるためには、「消化器系の負荷軽減と安全の確保」を最優先に考える必要があります。
まず、食事の回数と量を適切に管理し、特に早食いの傾向がある犬には、早食い防止用の食器や知育玩具を利用して、食事時間を意図的に延長し、一気に飲み込むことを防ぐ配慮が必要です。
また、食後の急激な運動を避けることは、特に大型犬や胸の深い犬種において致死的な病気である胃捻転(いねんてん)を予防するための最も重要な配慮のひとつです。食後1時間~2時間は安静にさせましょう。
さらに、フードの温度を人肌程度に保つことで、消化を助け、胃腸への負担を和らげます。高齢犬や病気の犬に対しては、消化しやすいようにフードをふやかすか、ウェットフードに切り替えるなど、犬の年齢や健康状態に合わせた柔軟な食事形態の調整を行うことも、負担をかけないための大切な配慮です。
まとめ

犬の食事の与え方は、単なる栄養補給ではなく、愛犬の健康、しつけ、そして飼い主との信頼関係を築くための最重要事項です。
人間の食べ物を与えたり、時間を決めずに放置したりといったNG行為は、愛犬の体に深刻な負担をかけ、問題行動の原因にもなり得ます。
適切な温度、量、時間、そしてしつけをもって食事を提供することは、犬の心と体の両方を健全に保つための飼い主の責任であり、愛情の具体的な表現です。正しい知識と配慮をもって食事管理を行うことが、愛犬の健やかで長寿な生活を支える土台となるでしょう。



