犬が「片足を上げる」4つの理由

1.狩猟本能・集中
犬が散歩中や屋外で片足を上げて静止する行動は、「ポインティング」とも呼ばれ、狩猟本能と高い集中力の表れです。これは、獲物(小動物や鳥など)の存在を感じ取った際に、その気配を察知し、次に飛び出すための体勢を整える本能的な行動です。
獲物から視線を逸らさず、全身の神経を一点に集中させているため、まるで銅像のようにピタリと固まります。この行動は、特に鳥猟犬の血を引く犬種によく見られますが、全犬種で見られる可能性があり、犬が興奮しているわけではなく、むしろ極度に集中し冷静である証拠です。
このサインが見られたら、無理に動かさず、静かに見守るか、短い言葉で「よし」と声をかけて、次の指示を待ちましょう。
2.マーキング
主にオス犬に見られる片足上げは、縄張りを示すマーキング行為の際に排泄物を高い位置に付着させるためです。自分のニオイをより広範囲に、目立つ場所に残すための工夫であり、「ここは自分のテリトリーだ」と他の犬に主張する強い誇示の心理が働いています。
この行動は、犬同士のコミュニケーションの一環であり、心理的な安定にも繋がります。しかし、室内で頻繁に行ったり、排泄の姿勢が不安定で片足がグラついたりする場合は、泌尿器系の病気や足腰の痛みが隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
単なるマーキングであれば問題ありませんが、排泄時の様子には常に意識を向け、異常がないか確認する習慣を持ちましょう。
3.遊んでいる・興奮
犬が興奮したり、他の犬や飼い主を遊びに誘うときにも片足を上げることがあります。これは、前足を床につけたままお尻を高く持ち上げる「プレイバウ」の姿勢と併せて見られることが多く、「さあ、遊ぼうよ!」という社交的でポジティブな心理を表しています。
また、散歩中に大好きな人や犬に出会ったり、楽しい場所へ向かっている最中に喜びが抑えきれず、小刻みにスキップするような動作とともに片足を上げることもあります。この際の片足上げは、一瞬で終わることが多く、表情や全体の動きに喜びや興奮が見て取れます。
このサインは、愛犬の気持ちが上向いている証拠なので、短い言葉で褒めたり、一緒に楽しさを共有したりすることで、遊びの誘いに応えてあげましょう。
4.環境への配慮
歩行中に地面に足をつけずに片足を浮かせるのは、足裏への不快感を避けるための環境への配慮によるものです。
地面が熱すぎる(アスファルト)、冷たすぎる(雪や凍結)、濡れている、あるいは尖った小石や異物があるなど、肉球が不快感や痛みを感じているときに、その足を使わないように本能的にかばっています。
これは肉球や足の健康を守るための賢明な行動ですが、飼い主は肉球が傷ついていないか、異物が挟まっていないかをすぐに確認し、地面の温度や状態に配慮する必要があります。
特に夏場の散歩では、地面の熱さが火傷の原因にもなるため、散歩の時間を調整するなど、愛犬の足を守るための対策を最優先で行いましょう。
犬の「片足上げ」に隠れる病気のサイン

片足を上げる行動が一時的ではない場合、関節や骨、神経系の病気が隠れている重大なサインである可能性が非常に高いです。
特に、地面に足を全くつけようとしない、触られるのを嫌がる、あるいは歩き方が左右非対称でおかしいといった症状が見られる場合は注意が必要です。代表的な病気として、小型犬に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)や、大型犬に多い股関節形成不全などの慢性的な関節疾患が挙げられます。
これらは進行すると痛みが常に伴うようになり、生活の質を大きく低下させます。また、急に足を上げた場合は、捻挫、骨折、靭帯損傷といった急性的な外傷や、肉球の深い傷なども疑われます。
痛みを放置すると病状が悪化するため、早期発見と適切な治療が極めて重要になるでしょう。
飼い主がすべき確認と病院へ行くタイミング

犬が片足を上げるのを見たら、まず動作の持続性とその他の症状を冷静に確認する必要があります。
一時的で、すぐに足を地面につけ、その後も正常に歩けるようであれば、環境への配慮やマーキングの可能性が高いです。
しかし、足を地面につけようとしない時間が長かったり、触るとキャンと鳴くなど強い痛みを示す仕草が見られたりする場合は、すぐに以下のタイミングで動物病院を受診すべきです。
- 完全に足を浮かせた状態が15分〜30分以上続く場合
- 片足上げが翌日以降も継続している場合(慢性的な痛みや炎症)
- 足に腫れ、熱がある、あるいは変形が見られる場合
- 散歩を嫌がる、元気がないなど、普段と様子が明らかに異なる場合
飼い主はこれらの情報(いつから、どの足か、どんな症状か)を獣医師に正確に伝える準備をしておくことが、的確な診断に繋がります。
まとめ

犬の「片足上げ」は、遊びや集中といった可愛らしい行動から、関節炎や骨折といった重大な病気のサインまで、幅広い心理や状態を反映しています。
飼い主は、その場の状況や犬の様子をよく観察し、痛みのサインや持続性を見逃さないことが、愛犬の健康を守る上で最も大切です。
少しでも異常や違和感を感じたら、「気のせいかも」と自己判断せず、迷わず専門家である獣医師に相談する行動力が、愛犬の快適な生活を保証する鍵となります。



 
				 
					 
				 
		 
				 
				