愛犬同士の相性が悪いときに考えられる理由
1.相手に対する強い警戒心
先住犬や新入り犬(新しく迎えた犬)の一方または双方が、相手に対して強い警戒心を抱いていると、なかなかよい関係を築けません。
社会化期(生後3〜14週齢ごろ)に社会性を身につけられなかった犬や、過去の過酷な経験でトラウマを抱えている犬は、警戒心が特に強い傾向があります。
2.飼い主の犬への接し方に問題がある
飼い主さんは無意識でも、迎えたばかりの新入り犬に関心が集中してしまうと、先住犬は飼い主さんという大切な存在(資源)を奪われたように感じ、不安になります。そして新入り犬から飼い主さんを守るための行動(緊張・介入・威嚇など)をするようになりがちです。
また、飼い主さんがどちらか一方の犬を明らかにえこひいきしている場合も、そうではない方の犬が相手に対して資源ガードの行動をとり、不仲になることがあります。
3.どちらかが多頭飼育に不向きな犬である
警戒心や独占欲、独立心が強い、攻撃性が高い、細かなことにも過剰に反応するといった性格の犬は、多頭飼育には向いていません。特に先住犬がこのタイプの場合、時間がかかるでしょう。
4.お互いの違いが大きすぎる
体格、体力、必要とする運動量、年齢などが大きくかけ離れている場合は、どちらかが振り回されたり疲れたりしてストレスが溜まり、うまくいかないことが多いです。
ただし、老犬のいるご家庭に子犬を迎え入れた場合、遊ぶ時間を短く、こまめにクールダウンをさせるなどの配慮で、老犬が元気を取り戻したという例もあります。
なお、未去勢のオス同士や未避妊のメス同士が衝突するリスクを減らすために、去勢・避妊手術をする対策もおすすめします。
関係改善のために飼い主が意識したいポイント
それぞれのパーソナルスペースを確保する
どんなに仲の良い犬同士でも、必ず必要になるのがそれぞれの独立したパーソナルスペースです。スペースだけではなく、資源(食器・水・トイレ・おもちゃ)も個別管理したり、食事中はお互いが見えないようにすると効果的です。
カーミングシグナルを早期に察知する
あくび、鼻先をなめる、硬直する、白目が見える(ホエールアイ)、しっぽの位置など、ストレスを示す犬のサインを早期に察知し、本気のけんかが始まる前にお互いを引き離して大事に至らないように対処しましょう。
関係改善を急がせない
相性が悪い愛犬同士の関係を改善しようとする場合、決して急がせないでください。不仲の原因をきちんと見極め、不安要素を排除するなどの対処を、地道に時間をかけて行うことが大切です。
下記のような段階を踏んで、関係を深めていきましょう。
- 寝具やタオルを使ってにおいを交換する
- ケージやゲートを使ってバリア越しに対面させる
- パラレルウォーク(2頭の間に一定の距離をあけて並行に歩かせ、存在とにおいに慣らす)
- 犬同士を短時間だけ直接対面させる
先住犬に不安を与えない
先住犬が新入り犬を受け入れられない原因の多くが、「飼い主さんを奪われた」という不安です。新入り犬を受け入れてからしばらくは、給餌や散歩、遊びなどの順番はすべて今まで通りに先住犬を優先してください。
先住犬への飼い主さんの愛情が減っていないことを示し、不安な気持ちを与えないようにしましょう。なお、新入り犬への態度を大声で叱る・体罰を与えるといった行為や、関係改善の無理強いは逆効果です。
どの犬にも平等に愛情を注ぐ
先住犬を優先するのは、不安にさせないためです。大切なのは、どの犬にも平等に愛情を注ぐことです。
しかし、今まで先住犬に注いでいた愛情を100とした場合、先住犬と新入り犬への愛情を50:50に分けるのではなく、総量を倍にして100:100にしましょう。
解決が難しい場合
どうしても仲良くさせられない場合は、居住空間の分離、食事や散歩時間の調整で、お互いが接触する機会をできるだけ減らせるようにする方針への切り替えも必要です。
なお、体調不良や体の痛みが原因で攻撃的になっている場合もありますので、原因がわからないまま不仲が続いている場合は、動物病院の受診をおすすめします。
また、本気噛みや流血するほどのけんかなど、飼い主さんが制御できないような場合は、最新の行動学をベースにした陽性強化法を取り入れているドッグトレーナー、獣医行動診療を専門とする獣医師など、専門家に相談することも検討しましょう。
まとめ
愛犬同士の相性が悪い場合、犬の性格だけではなく、飼い主さんの犬への接し方に起因していることも多いです。飼い主さんは無意識なことが多いため、「不安を与えないように先住犬を優先する」とか「愛情はそれぞれに平等に注ぐ」といったことは、意識しなければできません。
今回ご紹介した方法を参考に、ぜひ愛犬の不仲の原因を見極め、関係改善を図ってください。不仲な関係は、焦らずに時間をかけて修復していくことが大切です。