飼い主が他人に配慮しなければならない理由
近年、分譲マンションや賃貸住宅を含めてペット可の物件は増えてきています。しかしその一方で、犬が原因の近隣トラブルや自治体へのクレームも後を絶ちません。
「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)」の中には、飼い主には「飼い犬を適正に飼養し、健康と安全を確保し、その動物を終生飼養する」だけではなく、「周囲への迷惑を防止する」責任も定められています。
愛犬の行動が原因で周囲との間にトラブルが生じた場合、気まずい思いをするだけではなく、訴訟にまで発展して法的措置が取られる場合もあり得ます。不要なトラブルを避けるためには、日頃から近隣住民等への配慮を忘れないことが大切になってくるのです。
犬の飼い主が注意すべき他人への配慮
1.基本のしつけを怠らない
飼い主さんには、愛犬に人間社会の中で暮らすためのルールを教え、さまざまな問題に落ち着いて対処できるように導く能力が求められます。そのために必要なのが、「マテ」「オスワリ」「コイ」「ハナセ」などの基本のしつけです。
いつでも愛犬の注意を自分に向けさせ、興奮している犬を落ち着かせられなければ、安心して外に出られません。散歩や公共の場、ペット同伴可の施設、ドッグランなど、あらゆる場所で飼い主さんの指示を聞ける犬に育てることが大前提です。
2.騒音問題の予防
飼い犬のトラブルで多いのは、騒音問題です。留守番時の鳴き声、夜中の遠吠え、帰宅した飼い主さんを歓迎する興奮した鳴き声などは、近隣の住民にとっては騒音でしかありません。
また集合住宅の場合は、室内を走り回る犬の足音もクレームになりやすいです。足音は下の階によく響くため、注意が必要です。
3.抜け毛の飛散防止
犬アレルギーの方にとって、空中に飛散する犬の抜け毛は大きな迷惑になります。マンションの場合、バルコニーは専有部分ではなく共用部分です。バルコニーも含め、廊下等の共用部分や公園などの屋外では、ブラッシングをすべきではありません。
4.散歩・外出時の汚物処理
散歩は犬のトイレタイムではありません。散歩の前に必ず家でトイレを済ませることを習慣づけましょう。しかし生理現象ですので、完全に止めることもできないでしょう。愛犬と出かける場合は、常に汚物をきれいに片付けるための準備を忘れず、周囲にニオイが漏れないようにきちんと自宅に持ち帰るようにしましょう。
5.逸走対策
ドアや窓の隙間から抜け出してしまったり、首輪やハーネス、リードなどが緩んでいて愛犬が逃げ出してしまわないよう、愛犬の逸走対策を行うのも、飼い主さんの役目です。逸走には、愛犬が事故に遭うリスクだけではなく、他人や動物を傷つける加害者になってしまう可能性もあるのです。
6.感染症予防
狂犬病や混合ワクチンによる愛犬の感染症対策には、近隣に住んでいる他の動物や人への感染を予防するという目的もあります。「日本では狂犬病が発症しなくなって久しいから」などという勝手な自己判断を行わずに、必要な感染症予防はしっかりと継続実施することも、大切な周囲への配慮の一つです。
7.近所との良好な付き合い
たとえ隣の住人が犬嫌いだったとしても、ご近所付き合いを大切にして良好な関係を築けていれば、大きなトラブルに発展することを妨げられるかもしれません。必要以上に深い親交を結ぶ必要はありませんが、挨拶をし、普段の気遣いで良好な関係を築いておくことも大切です。
飼い主としてトラブルを防ぐために心掛けておくべきこと
愛犬から目を離さない
どんなに基本的なしつけをしていても、何かあった時に飼い主さんが気付けなければ、トラブルを回避することはできません。愛犬と一緒に行動をする際には、「目を離さない」ことが大原則です。
そのためには、店先に繋いで待たせたまま買い物をするなどの寄り道は、厳禁です。散歩の途中で買い物をしたい場合は、一旦家に帰り、改めて飼い主さんだけで出直しましょう。
加害者になったときの対策
万が一加害者になってしまった場合、対応を間違えてしまうと、大問題に発展してしまうこともあり得ます。加害者となった場合の対応方法を、事前に整理しておきましょう。
まずは心を込めて謝罪をし、飼い主さんの連絡先と愛犬の鑑札、狂犬病ワクチン接種済票の番号を控えてもらいます。相手が怪我をした場合は、動物病院または病院に行ってもらい、その際はできるだけ付き添うようにします。なお、愛犬が相手を噛んでしまった場合は、管轄の保健所または動物愛護センターに連絡をして、指示を仰いでください。
万が一の場合に備え、ペットの賠償責任特約のある保険に入っておくのも、リスク対策の一つになります。
まとめ
さまざまな人と動物がたくさん暮らしている中で、愛犬が原因で起こるかもしれないトラブルを未然に回避するためには、日頃から飼い主さんが周囲への配慮を怠らないことが大切です。今回は、以下の7つの配慮をご紹介しました。
- 基本のしつけを怠らない
- 騒音問題の予防
- 抜け毛の飛散防止
- 散歩・外出時の汚物処理
- 逸走対策
- 感染症予防
- 近所との良好な付き合い
また、いざ愛犬が加害者となってしまったときの対応方法の確認や、保険の加入なども、不要なトラブルの回避に役立ちます。