中高齢の犬が咳をする主な理由
犬も人間と同じように、たまに咳をすることは珍しくありません。しかし、咳が頻繁に出る場合、重い咳が続く場合、特に中高齢の犬に咳が見られる場合には、重篤な病気のサインである可能性があります。
咳の原因を把握するためには、以下の点を日頃からよく観察しておくことが大切です。
- どのくらいの頻度で咳をするのか(例:1日数回)
- どんなときに咳をするのか(例:食後、安静時など)
- どのような咳をするのか(例:「カッカッ」「ゼェゼェ」など)
「これは普通の咳ではないかも…」と思ったら、咳の様子を動画に撮って動物病院で獣医師に見せると診断の助けになります。
1.心臓病
中高齢の犬に多い咳の原因のひとつが心臓病です。
代表的なものに、僧帽弁閉鎖不全症、心不全などが挙げられます。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁がしっかり閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気です。進行すると肺に水がたまり(肺水腫)、呼吸困難を引き起こすこともあります。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下して全身に血液を送り出せなくなる病気です。急性心不全では短時間で重篤な症状に陥ることがあり、慢性心不全では軽度の症状が続きながら少しずつ進行していきます。
2.気管虚脱
気管虚脱も、中高齢犬に多く見られる病気です。
通常、気管は丸い筒状をしていますが、気管虚脱になるとその形がつぶれてしまい、空気の通り道が狭くなります。
典型的な症状は「ガーガー」「カッカッ」といった独特な咳です。軽度では興奮したときに咳が出やすく、重度になると呼吸困難や酸素不足からチアノーゼ(舌が青紫色になる症状)を起こすこともあります。
重症化すると、酸素室なしでは命をつなぐのが難しくなることもあります。
3.呼吸器の感染症
呼吸器の感染症も、咳の原因として考えられます。
中高齢になると免疫力が低下し、細菌やウイルスに感染しやすくなります。軽度であれば一時的な咳で終わることもありますが、重症化しやすい点には注意が必要です。
4.肺腫瘍
中高齢になると、肺に腫瘍ができることもあります。
その場合、長期間にわたって咳が続き、痰が出たり、その痰に血が混じったりすることもあります。進行性の病気であるため、早期発見・早期治療が重要です。
犬が咳をするときの危険なサインと動物病院へ行くタイミング
以下の症状が見られたら、早めに動物病院を受診してください。
- 数日間、咳が続いている
- 安静にしているときにも咳が出る
- お散歩中に咳きこむことがある
- お水を飲んだ後に咳きこむことがある
- 興奮すると咳がひどくなる(咳が止まらなくなる)
- 咳をしている最中に舌が青くなっている(チアノーゼという症状)
- 咳と同時に吐くような仕草をする
これらは重大な病気のサインである可能性が高いため、放置は危険です。
まとめ
中高齢の犬が咳をする主な理由を4つ解説しました。
- 心臓病
- 気管虚脱
- 呼吸器の感染症
- 肺腫瘍
筆者の愛犬のポメラニアンも、9歳のときに咳が出て受診したところ、心不全と気管虚脱が見つかりました。現在14歳ですが、投薬と経過観察を続けながら暮らしています。
犬の咳には命に関わる病気が隠れていることもありますが、病気と上手く付き合っていけば長生きできる可能性も十分にあります。
ただし、検査や治療で通院が増えたり、経済的な負担がかかったり、急に症状が悪化するリスクがあるため、飼い主としての覚悟も必要です。
愛犬に咳の症状が見られたときは、たとえ軽度で元気そうにしていても自己判断せず、なるべく早めに動物病院で診てもらいましょう。