犬が認知症になったときに見せる症状6選
犬の認知症(認知機能不全症候群)は、加齢によって認知機能が低下し、記憶力や学習能力、行動に変化が現れる病気です。一般的に、13歳くらいから発症しやすくなるとされています。
認知症は進行性の病気であるため、症状を見逃さず、早めに動物病院を受診することが非常に重要です。ここでは、犬が認知症になったときに見せる症状を6つご紹介します。
1.昼夜逆転や夜鳴き
犬が認知症になると、体内時計が乱れ、昼夜逆転の生活リズムになることがあります。そうなった場合、日中に眠り、夜に活動的になるだけでなく、寂しさや不安から夜鳴きをするケースも少なくありません。
夜鳴きは近所迷惑になるうえに、飼い主の睡眠不足にもつながります。そのため、生活リズムを整える工夫が必要です。日中の活動量を増やし、夜は疲れてぐっすり眠れるようにするなどの工夫をしましょう。
2.徘徊や旋回
徘徊や旋回は、認知症の犬によく見られる行動です。家の中を目的なく歩き回ったり、同じ場所をぐるぐる回ったりします。これは、認知症によって空間認識能力が低下しているためと考えられ、徘徊や旋回をやめさせるのは難しいでしょう。
しかし、ケガを防ぐための安全対策は必要です。障害物や段差をなくしたり、家具の角を保護したりするといった対策をしましょう。旋回をする犬には、柔らかい素材でできた円形のサークルを用意してあげると、安全にぐるぐると回ることができます。
3.トイレの失敗の増加
トイレの失敗が増えるのも、犬の認知症の症状のひとつです。認知機能の低下により、トイレの場所を忘れてしまったり、排泄のタイミングが分からなかったりすることが原因です。これまで完璧にトイレをこなしていた犬が、急に失敗するようになってきたら注意が必要です。
ただし、身体機能の低下や認知症以外の病気によって、トイレの失敗が増えることもあります。そのため、トイレの失敗が増えてきたら、ほかの行動の変化もよく観察し、獣医師に相談することが大切です。
原因が何であれ、トイレの失敗は叱らずに対策をしましょう。犬の行動範囲にペットシーツを敷き詰めたり、トイレの数を増やしたり、トイレの位置を変えたりすることを検討してください。また、犬が嫌がらなければ、オムツを使用するのも対策のひとつです。
4.無関心、無気力
犬が認知症になると、無関心や無気力な様子を見せるようになることがあります。例えば、これまで好きだった遊びや散歩に興味を示さなくなったり、飼い主の呼びかけに反応しなくなったりするかもしれません。
これは、認知機能の低下により、周囲への興味や意欲が失われているためと考えられます。愛犬の性格が変わったように感じ、戸惑う飼い主も多いですが、これまでと同じように愛情を持って接しましょう。
5.狭い場所に入り込んで出られない
認知症の犬は、狭い場所に入り込んで出られなくなることがあります。認知症になると、空間認識能力が低下し、さらに方向転換や後退も難しくなるため、家具などの隙間に入り込んで出られなくなっている姿が見られます。
狭い場所で身動きが取れずにパニックになって暴れてしまい、ケガをする可能性もあるため注意が必要です。家具の配置を工夫したり、家具の隙間に物を置いて塞いだりして、犬が入り込んでしまいそうなスペースを作らないようにしましょう。
6.異常な食欲
犬は年を取るにつれ食が細くなっていくことが多いですが、認知症になると食欲が増すことがあります。記憶力の低下や満腹中枢の異常により、食べたことを忘れてしまったり、満腹を感じにくくなったりするため、食べてもすぐにごはんを欲しがるのです。
認知症に伴う食欲増加の場合、たくさん食べても太ったり下痢をしたりしないことが多いですが、食べ過ぎると吐いてしまうことがあります。そのため、1日に与えるごはんの総量は変えず、1回に与える量を減らして回数を増やすことで満足感を与えるとよいでしょう。
また、認知症の犬は、口に入るものは何でも食べてしまう傾向があるため、誤食には十分注意してください。
犬の認知症の予防法は?
犬の認知症を完全に防ぐことは難しいものの、予防につながる可能性のある方法はあります。その重要なポイントは、脳に刺激を与え、脳を活性化することです。ここからは、日常生活で実践しやすい認知症の予防法を4つご紹介します。
1.DHAやEPAを摂取する
主に青魚に多く含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、脳を活性化する働きがあり、認知症の予防や改善に効果があると言われています。
DHAやEPAの犬用サプリメントや、これらの成分を含むドッグフードを与えることは、認知症予防の一助となるでしょう。ただし、体質との相性もあるため、与える前に獣医師に相談することをおすすめします。
2.スキンシップやコミュニケーションを取る
飼い主とのスキンシップやコミュニケーションは、犬の脳に刺激を与えるだけでなく、精神的な安定にもつながります。撫でたり、話しかけたり、遊んだりする時間を毎日意識的に作ることで、犬の認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。
とはいえ、構い過ぎは犬のストレスになることもあるため、過度にならないように注意しましょう。
3.日光浴をする
日光には体内時計を調整する作用があり、朝や昼に日光を浴びることで、昼夜の区別がつきやすくなります。認知症の犬によく見られる昼夜逆転を防ぐためにも、ベランダや庭、窓際などでの日光浴を習慣にするとよいでしょう。朝日を浴びながらの散歩もおすすめです。
また、日光浴はビタミンDの生成を促し、骨の健康維持にも役立ちます。さらに近年の研究では、ビタミンDは認知症予防に効果がある可能性が示唆されています。
日光浴の時間は、1日15〜30分が目安です。夏場は熱中症のリスクがあるため、日差しの強い時間帯や長時間の日光浴は避けましょう。
4.散歩や遊びで脳に刺激を与える
散歩や遊びを通して脳に刺激を与え、脳を活性化させることも、犬の認知症予防には非常に重要です。たまに散歩コースを変えたり、ノーズワーク(嗅覚を使い、隠された食べ物を探す遊び)を取り入れたりすることで、脳を活性化できます。
また、知育玩具で遊ばせたり、簡単な芸を教えたりするのも、脳へのよい刺激になります。
歩行が困難になった犬は、カートや抱っこで散歩するのがおすすめです。外のさまざまな音やにおいが、脳に適度な刺激を与えてくれます。
まとめ
認知症は、高齢になったら、どの犬にも起こりうる病気です。愛犬の行動の変化に早く気づき、動物病院を受診することで、進行を遅らせられる可能性が高まります。日頃から愛犬をよく観察し、今回ご紹介した症状を見逃さないようにしましょう。
残念ながら、現時点で犬の認知症を完治させる治療法はありません。だからこそ、予防が非常に大切になります。DHAやEPAの摂取、スキンシップやコミュニケーション、日光浴、散歩や遊びを通して、愛犬の認知症予防に努めましょう。
もし愛犬が認知症になっても、変わらぬ愛情を注ぎ、適切なケアをしてあげてくださいね。