ペットによる火災事故
経済産業省が所管する独立行政法人で、さまざまな分野の工業製品に対する技術や安全性の評価、情報の収集・提供を行なっている、製品評価技術基盤機構(NITE)という機関があります。
そのNITEが、2024年3月28日に「ペットによる火災事故」に関して、注意喚起を行いました。
これによると、2013年から2022年までの10年間でNITEに通知された製品事故の内、ペットによる事故の発生は61件で、内9割を占める54件が火災に至っているということです。
54件の火災事故の内、猫によるものが32件、犬によるものが13件、犬と猫によるものが3件、その他または不明が6件となっています。
高い場所に上れる猫の件数が多いものの、犬による事故も多く、愛犬の命を守るためにも普段の対策が欠かせないことが分かります。
犬が起こす可能性のある火事の原因
1.ガスコンロのスイッチ押下
ガスコンロは高い場所にあるため、犬の飼い主さんはあまり意識していないかもしれません。
しかし犬によるガスコンロの火災は6件発生しており、犬による火災発生の最多原因となっています。
ガスコンロの上に興味を引く物があると犬は後ろ足で立ち上がり、スイッチを押してしまうことがあるため危険です。
またコンロの発火は大きな事故につながりやすく、ペットの死亡(2件)、飼い主さんの負傷(1件)の他、広範囲に及ぶ被害は22件も発生しています。
2.配線器具への噛みつき
電気製品の電源コード、延長コード、テーブルタップなどは床の上を這わせている場合が多く、犬による事故が起きやすいことは想像に難くありません。
実際、犬による火災が2件、犬と猫による火災が1件報告されています。
特に好奇心旺盛な子犬や歯が抜け替わる時期の子犬は、なんでもすぐに噛んでしまうことがあるため、特段の注意が必要です。
3.ストーブの転倒等
石油、ガス、電気などのストーブによる事故も、犬で1件、犬と猫で1件報告されています。
ストーブをつけているのは飼い主さんの在宅時がほとんどなので、火災になる前に食い止められているのかもしれません。
愛犬が可燃性のものをストーブに近づけ過ぎて引火したり、ストーブそのものを倒したりといった事故が挙げられます。
4.リチウムイオンバッテリー内蔵製品への噛みつき
NITEの報告では、リチウムイオンバッテリーを搭載した製品を噛むという事故も報告されています。
犬がモバイルWi-Fiルーターを噛み、それが原因で発火し、製品と床面が焦げたという事例が紹介されています。
製品が噛まれて変形し、ショートしたことが原因です。充電したスマホを置きっぱなしにするなども身近な事故原因になるため、注意が必要です。
5.電気製品への排尿
犬が床に置いてあった電気製品に排尿したことが原因の事故も多く、火災に至らなかったものも含めて4件が報告されています。
電気製品にかけられた尿が内部の基盤に付着すると、配線間で微小な火花放電が起こり、絶縁体が炭化します。これが繰り返されると炭化された部分がつながってショートし、発火するのです。
1度や2度の粗相では起きないかもしれませんが、犬は1度排尿をすると残っているニオイでその場所をトイレと認識してしまい排尿を繰り返すようになりますので、必ず対策が必要です。
愛犬に火事を起こさせないために注意すべきポイント
ガスコンロ
調理中以外はガスの元栓を閉める、IHコンロなどの電気製品は主電源を落とす、スイッチのロック機能がついている場合は必ずロックをかけるといった対策を習慣化しましょう。
また、コンロの周辺には犬の興味を引くようなものや可燃物を置きっぱなしにしない、愛犬がキッチンに入れないように柵を設置するといった対策もおすすめです。
配線器具
配線はできるだけばらけないようにまとめてコードカバーやコンセントカバーを利用する、使用していない電気製品はコードを抜いて手の届かない場所に片付けるといった対策を行いましょう。
ストーブ
ストーブを使用する時は、目を離さないのが大原則です。その上で、ストーブの周囲に侵入防止柵を設置して近寄れないようにするのも有効な対策です。
また飼い主さんの外出時は、ストーブを犬の手が届かない場所へ移動して、触れないようにしましょう。
リチウムイオンバッテリー内蔵製品
常設する製品は、犬の手が届かない場所に設置しましょう。また、充電中および充電後のスマホ等も、犬の手が届かない場所に置きましょう。
愛犬が自由に寝室に入れるようにしている場合、枕元にスマホを置いて就寝するのも危険です。
電気製品への排尿
まだトイレトレーニング中の子犬の場合、いろいろな場所で粗相をしてしまうことがあると思います。粗相した場所は必ずきれいに掃除し、しっかりと消臭してニオイを消しましょう。
また、愛犬のトイレの近くには電気製品を設置しないようにしましょう。
飼い主さん不在時の行動制限
飼い主さんの留守中は、愛犬をケージで過ごさせる、侵入防止柵等で危険な場所には入れないようにするといった、行動制限を行うことをおすすめします。
狭い場所に閉じ込めるのはかわいそうだと思うかもしれませんが、犬はケージの中で落ち着いて過ごすことができますし、何より愛犬の命を守るために必要なことです。
まとめ
愛犬の思いもよらない行動から、火災という命にも関わるような大きな事故につながることがあります。
飼い主さんが見ている時にはおとなしくて良い子でも、留守中には何が起こるか分かりません。また、犬には自分の行動が火事を引き起こす危険性を秘めていることを理解することはできません。
飼い主さんが普段から配慮をし、対策となる行動を習慣化することで、愛犬の大切な命を守りましょう。