犬にとって飼い主は特別な存在
飼い主さんと飼い犬の関係はとても特殊です。言葉も通じず、全く異なる習性を持っていますし五感の精度も異なるため、同じ景色を前にしているときも、見えているものや聞こえている音、ニオイは決して同じではありません。
それでも飼い主さんは犬を自分の子どものように愛し、犬は飼い主さんを自分の親のように信頼するようになります。子どもにとって親が特別な存在であるのと同じように、犬にとっても飼い主さんは特別な存在なのです。
そのため、犬は飼い主さんとできるだけ一緒にいたいと思っています。だからといって、飼い主さんが常に犬と一緒にいることはできません。
また常に一緒にいることで犬の依存心が強くなりすぎると、飼い主さんの姿がちょっと見えないだけで、居ても立ってもいられないほどの不安を感じるようになってしまうこともあります。
愛犬とよりよい関係を築くためには、愛犬と適度な距離感で過ごすことも大切なのです。犬が安心してひとりで過ごせるスペースを用意しつつ、犬が飼い主さんと一緒にしたいと望んでいることを積極的に行えば、よりよい関係を築いていくことができるでしょう。
犬が飼い主と一緒にしたいと思っていること
1.散歩
家の中は安全で落ち着ける空間です。しかし四六時中家の中にいたのでは、思いきり体を動かすこともできず、ほとんど刺激のない退屈な毎日を過ごすことになります。そんな生活では、犬にとってストレスが溜まるだけの日々になってしまいます。
草や土などのニオイ、小鳥のさえずり、行き交う車や見知らぬ人・犬など、外の世界はさまざまな刺激にあふれています。そんな刺激的な世界を信頼できる飼い主さんと一緒に散歩することで、愛犬は安心してあちこちを探索し、さまざまな刺激を楽しめるのです。
2.遊び
犬は楽しいことが大好きです。本能の奥深くに組み込まれた狩猟欲求を満たせる遊びは、犬にとって必要不可欠なものです。
飼い主さんが一緒に引っ張り合いっこ、追いかけっこ、持ってこい、宝探しなどをして遊ぶことは、愛犬と共同で狩りをしたことと同じ効果を発揮して、より深い絆を結ぶことにつながるでしょう。
3.トレーニング
楽しいことが大好きなのと同じくらい、犬は褒められることが大好きです。
犬に「オスワリ」や「フセ」「コイ」などのトレーニングを行う場合、必ずうまくできると愛犬のことを褒めるはずです。それが嬉しくて愛犬は必死に学習し、基本の指示に対する正しい行動を身につけるのです。
つまり、愛犬は飼い主さんからたくさん褒められるトレーニングが大好きです。飼い主さんと一緒に新しいことを学べるトレーニングも、犬が飼い主さんと一緒に行いたいと思っていることの一つです。
4.不安な時は一緒にいてほしい
2017年の「Journal of the Experimental Analysis of Behavior」という学術誌に、「不慣れな場所にいるとき、犬は人と接した時間の80%近くを飼い主さんと一緒に過ごし、慣れている場所にいるときは約70%の時間を見知らぬ人に費やした」というアメリカの研究が発表されました。
慣れた場所で過ごすときには、犬も安心して見知らぬ人とコミュニケーションを図れますが、慣れていない場所にいるときには、不安で飼い主さんと一緒に過ごしたいという気持ちが表れるということなのでしょう。
病院などの苦手な場所や嫌なことをされる時こそ、愛犬は飼い主さんに一緒にいてほしいと望んでいるのです。
愛犬とより良い関係を築くためのポイント
愛犬との仲をもっとよい関係に深めたいと考えているのであれば、下記のことを意識して愛犬と接するようにしてみてください。
- 毎日必ず一緒に過ごす時間を作る
- 愛犬と接するときには真剣に向き合う
- 愛犬を叱らずにすむような環境を整え、良いことをしたときはすぐに褒める
- 叱るときには名前を呼ばず、褒めるときにだけ名前を呼ぶようにする
- 愛犬が嫌がることや不安になるようなシーンには積極的に立ち会う
- 愛犬がひとりで穏やかに過ごせるスペースと時間も作る
まとめ
飼い主さんと愛犬との関係は、親子関係と非常によく似ています。人間の子どもは成長すると独立していきますが、犬はどんなに成長しても独立できません。
犬は、飼い主さんのことを一生涯をかけて信頼して過ごすのです。その信頼を裏切ることなく、程よい距離感で健全に過ごすためには、一緒に楽しい時間や嬉しい時間を過ごすことが大切です。
そして、愛犬が嫌な思いをしたり不安になるときにこそ、飼い主さんが近くで寄り添ってあげることが大切なのです。