近年、広く周知されるようになった『犬の認知症』
一昔前に比べて、犬の平均寿命が一気に延びたことで周知されるようになった『犬の認知症』。一般的に7〜8歳からシニア期に突入する犬が多いとされており、11歳を超えた頃から少しずつ認知症の症状が見られるシニア犬が増えてきます。
日本犬に発症リスクが高いと言われていますが、犬種によって大きな差はなく、どの犬種でも発症するリスクは同じようにあると考えるべきでしょう。
犬の認知症って?症状や必要な治療を解説
では、広く知られるようになった『犬の認知症』は、どのような症状が見られるのでしょうか。ここでは犬の認知症で見られる主な症状や治療方法などを紹介します。
1.犬の認知症でよく見られる症状
犬の認知症は段階を踏んで症状が進行していきますが、主な症状として以下のような変化が見られます。
- 目的もなく徘徊する時間が増える
- 歩いている最中、物にぶつかる頻度が増える
- 夜中に歩き回ったり吠え出したりする
- 日中に眠る時間が増えて夜に覚醒する昼夜逆転症状
- 同じ行動を繰り返す(ぐるぐると回る、同じところを徘徊し続けるなど)
- 食欲はあるのに痩せていく
- 排泄が自力で上手にできなくなる
- 声をかけても反応しなくなる、反応が薄くなる
以上のような症状が少しずつ見られ始めたら、認知症が徐々に進行しているサインかもしれません。早めに動物病院を受診し、生活におけるアドバイスや治療を受けましょう。
2.『食事療法』や『生活習慣の改善』で症状改善に期待
認知症は完治させる方法はありません。しかし、食事療法や生活習慣の改善によって、症状の改善が期待できたり、症状の進行を止めることは可能です。
食事療法では、認知症に効果があるとされているDHAやEPA、抗酸化作用のあるビタミンEが多く含まれたドッグフードに切り替えることも多くあります。この場合、かかりつけの動物病院でおすすめの高齢犬用のドッグフードを尋ねてみると良いでしょう。
3.初期段階では『薬物療法』で改善が見られることも
初期段階では食事療法や生活習慣の改善に加えて、サプリメントなどの薬物療法を取り入れることで、改善が見られるケースも報告されています。
ただし先ほど紹介したように、現段階では認知症を完治させる確実な治療法は見つかっていないため、サプリメントを使っても特効性はないと言われています。あくまで補助的な役割で症状の改善を「期待する」方法として考えましょう。
4.認知症による問題症状を鎮静剤で軽減
認知症になると夜間に家の中を徘徊したり、夜鳴きがひどくなる犬も多く見られます。場合によっては、飼い主が気付かぬ間に家具にぶつかったり階段を転げ落ちてしまうなど、怪我を負う危険性もあるでしょう。
このように症状が重症化してしまったり、認知症の症状によって危険性が高いと判断された場合は、鎮静剤を使う方法も検討されます。
しかし、安易に鎮静剤に頼ってしまうと認知症の症状の改善の妨げとなり、かえって症状が進行してしまうケースもあるため、投薬は相談の上、慎重に検討するべきです。
犬の認知症…予防に効果的な方法は?
犬の認知症を確実に予防する方法は残念ながらありません。しかし、生活リズムを整えてあげたり、栄養バランスの良い食事を与えたり、日常的に脳に良い刺激を与えてあげることで予防に効果があると考えられています。
- 日光浴も兼ねて無理のない範囲で散歩させる
- 脳を使った簡単な知育遊びやコマンドトレーニングを取り入れる
- 昼間は活動して夜に眠るよう生活リズムをコントロールする
- 可能な範囲で体を動かす遊びを積極的に行う
- スキンシップや声かけなどのコミュニケーションで脳に刺激を与える
このように生活の中に小さな工夫を散りばめることで、シニア犬に良い刺激を与えながら健康的な生活習慣を整えることが可能です。
健康的で脳に良い刺激のある生活は、認知症を防ぐ効果的な手段の1つです。ぜひ積極的に取り入れましょう。
まとめ
犬の認知症はすべての犬にとって他人事ではありません。シニア期に入っている犬の飼い主さんたちは、日頃から愛犬の様子を注意深く観察し、認知症予防に効果的な生活習慣を意識的に取り入れましょう。