犬の『認知症』はどんな症状?日頃からできる予防策やケア方法まで解説

犬の『認知症』はどんな症状?日頃からできる予防策やケア方法まで解説

犬の平均寿命が延びるにつれて、老化に伴う病気や認知症の発症が増加しています。この記事では、犬の認知症の症状や予防・ケア方法について解説しているので、ぜひ知っておいてください。

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記事の監修

大阪府立大学生命環境科学部獣医学科卒業。その後、約10年に渡り臨床獣医師として動物病院に勤務。予防医療、行動学、老犬の介護問題に興味を持っています。正しい知識と情報を多くの方に伝えたいという思いからWEBライターとして動物関係の記事を執筆しています。

犬の認知症の症状

レトリバーの老犬

犬は認知症を発症すると、段階を踏みながら様々な様子を見せるようになります。ここからは、犬の認知症で見られることが多い症状を紹介します。

1.今までできていたことができなくなる

認知症はその名の通り認知機能に関わる疾患で、認知機能が低下することから、これまで理解していたことがわからなくなったり、できなくなったりすることがあります。

しつけで教えたことが少しずつできなくなっていったり、親しかった人や犬を認識できなくなってしまうなど、これまでと違った様子を見せるようになることがあります。

この時点では認知症だと気づかずに、「いうことを聞かなくなった」「知人や飼い主を無視した」と思われて、叱られてしまうことも珍しくありません。

また、空間認知能力や視力などが低下することもあわさって、障害物をよけられずに壁や家具にぶつかったり、つまずいたりすることも増えてきます。

さらに、完璧に覚えていたはずのトイレの失敗が増えることもあります。これは尿意や便意を感じてから動き出すまでに時間がかかったり、体の動きをうまくコントロールできなくなったりすることが原因で、決して故意に失敗しているわけではありません。

2.周囲のことに興味がなくなる、意欲が低下する

犬が認知症になると、無気力になったように感じることもあるでしょう。一日中ぼーっとしていることが増えたり、これまでは喜んでいた散歩や遊びに喜ばなくなったりします。

飼い主さんの呼びかけに反応しなくなったり、帰宅時に喜ばなくなったりといった行動の変化が見られることも少なくありません。

高齢になると聴覚などの五感も衰えていくこともあり、周囲の様子に対して鈍感になる傾向もあります。

3.徘徊・旋回

目的もなくただウロウロと歩き回る「徘徊」は、認知症を患った人にも多く見られる症状ですが、犬にも同じように現れるものです。

家の中をアテもなく歩き続けるだけでなく、同じ場所をグルグルと回り続ける「旋回」という行動をすることもあります。

こうした行動は、犬が意思を持っておこなっているわけではないので、飼い主さんに「やめなさい」と言われても、犬自身が疲れても止まることができない場合もあるでしょう。

また、空間の認知機能や体をコントロールする能力が低下することもあり、障害物を上手に避けられなかったり、行き止まりで後退できなかったりといった様子も見られます。

4.睡眠障害

犬は年齢を重ねると活動量が減っていき、一日の中で寝ている時間が長くなります。体を休めたり眠ったりしている時間が長くなるだけであれば問題ありませんが、認知症の症状として睡眠障害が出ることもあるので注意しましょう。

具体的には、昼間にぐっすりと眠って夜中に起きる「昼夜逆転」の睡眠リズムになってしまったり、夜中に起きているだけでなく吠えたり鳴いたりする「夜鳴き」をしたりする犬もいます。

犬の認知症の予防方法

散歩しているジャックラッセル

犬の認知症は、いくつかのポイントを抑えることで発症や進行を遅らせられると考えられています。

1.適度な運動と規則正しい生活を心がける

年齢を重ねると体力は少しずつ低下しますが、運動がまったく必要なくなるわけではありません。いくつになっても年齢に合わせた適度な運動は必要で、それが心身の健康を保つために欠かせないことだと考えられています。

体を動かすことで体力や筋力を維持し、脳の働きも活性化させるため、認知症の発症や進行を遅らせることにも役立ちます。

また、明るい時間帯に散歩をして夜には熟睡できる環境を作るなどして、規則正しい生活を送ることもとても大切です。ただし、日々が単調になりすぎるとぼんやりする時間が増えて、認知症が進んでしまうこともあるので注意しましょう。

2.遊びを通して脳に刺激を与える

認知症の予防には、脳への適度な刺激が有効だと考えられています。散歩で外に出て、様々な刺激を受けることも効果的ですし、「頭を使う遊び」をおこなうことも大変おすすめです。

家の中でもかくれんぼや宝探しなどのゲームをしたり、知育玩具を使って脳の活性化を図ったりするといいでしょう。

3.こまめなスキンシップやコミュニケーション

日々の生活の中で刺激が少なく、ぼんやり過ごすことが増えると、認知症の発症や進行が早くなく傾向があります。

そのため、こまめに声掛けをしたりスキンシップをするなど、コミュニケーションをしっかりととることもとても大切です。健康管理にも役立つので、若い頃からブラッシングやマッサージを習慣化しておくといいでしょう。

4.食事やサプリメントをとり入れる

食生活は健康的な体作りのためにとても重要な要素です。認知症には脳の働きが関わっているため、食事やサプリメントで脳神経・脳細胞のダメージや酸化を防ぐことも必要だと考えられています。

脳細胞の酸化予防のためには、抗酸化作用や抗炎症作用のある成分を含んだ食べ物やサプリメントを摂取させることを意識しましょう。

抗酸化作用を持つ成分として、身近で有名なものがビタミンCやビタミンEです。これらは生の野菜や果物などに多く含まれますが、ドッグフードや加熱した食事にはあまり含まれていないため、サプリメントなどで積極的にとり入れるといいでしょう。

また、オメガ3脂肪酸と呼ばれるDHA・EPAには抗炎症作用があり、犬の認知機能の改善に効果があったという症例報告もあります。

犬の認知症のケア方法

昼寝している柴犬

認知症の症状があらわれ始めたら、予防法として紹介したことを意識しながら、愛犬の安全と快適な生活を守るために生活環境を整えるようにしてください。

認知機能の低下によって物にぶつかりやすくなったり、徘徊や旋回をしたりすることが増えるので、犬が過ごす場所にはあまりものを置かないようにして広いスペースを確保しましょう。

また、隅に入り込んで出られなくなることも多いので、狭い場所に入り込めないようにサークルを用意するのをおすすめです。

さらに、怪我を防ぐために滑りにくくなるようにカーペットを敷いたり、家具や建具の角に保護クッションを取り付けたりする配慮もしておきましょう。

また、認知症が進行して攻撃性が見られるようになったり、夜鳴きがひどくなったりした場合は、危険回避や飼い主さんの負担軽減のために、動物病院で薬を処方してもらうことも考えてください。

まとめ

なでられて寝ているトイプードル

犬たちの寿命が長くなり一緒に過ごせる時間が増えたことは、私たち人間にとって幸せなことだと思います。その一方、認知症を発症する犬も増えて、介護問題など飼い主さんの負担が重くなっているのも事実です。

認知症を完全に防ぐことはむずかしいかもしれませんが、日々の関わりやちょっとした工夫で発症や進行を遅らせることができるので、若いうちからぜひ意識してみてください。

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