犬の「皮膚が伸びる」理由
愛犬と触れ合っているとき、顔回りや首回りにタプタプとしたお肉を感じたことがあるのではないでしょうか。ハムスターの頬袋のようにも感じられますよね。
顔回りや首回りの皮膚を優しく持ち、ゆっくりと横に伸ばしてみてください。個体差はありますが、意外とよく伸びます。驚くほどよく伸びる犬もいます。「頬袋?」「皮下脂肪?」モチモチとして触り心地のいい、あのタプタプの正体は、実は「皮膚」なのです。
愛犬の皮膚の健康状態をチェックしていると、皮膚がよく伸びる部分と、ほとんど伸びない部分があります。部分によって、よく伸びたり、ほとんど伸びなかったりすると、伸びる部分の皮膚には特別な役割があるのでは…とも考えられるのではないでしょうか。
愛犬の皮膚の健康状態をチェックしつつ、「愛犬の皮膚はどの部分が伸びやすいのか?」ということもチェックしてみると、新しい発見が生まれるかもしれません。
1.致命傷を避けるため
犬の皮膚が伸びるのは、致命傷を避けるためであると言われています。
敵に襲われたとき、敵と争うときを想定してみてください。犬の皮膚には、敵の牙が食い込んだり、敵の爪が突き刺さったりするでしょう。
しかし、皮膚が伸びることで、血管や臓器を傷つけるなどの致命傷は避けられる可能性が高いのではないかと考えることができます。
野生動物が捕食する映像を観たことがあるのですが、まず首回りに咬みつくようです。頸動脈を狙っているのかもしれません。
犬の首回りの皮膚がよく伸びるのは、致命傷を避けるためであるということが言えるのではないでしょうか。
犬の首回りが二重顎のように見えたり、頬袋のように見えたりし、かわいいチャームポイントのように感じられますが、命を守るためのものなのですね。
2.母犬が子犬を運びやすくするため
犬の皮膚が伸びるのは、母犬が子犬を運びやすくするためなのではないかと考えることができます。
寝床から出て行ってしまった子犬を連れ戻すとき、場所を移動するとき、母犬は子犬を口にくわえて運びます。子犬の皮膚がよく伸びる首回りを口にくわえるようです。
見ている側は(痛くないのかな…)と心配になりますが、必要以上に皮膚を伸ばすことがなければ、痛みを感じることはないとされています。
3.皮膚無力症
犬の皮膚が伸びることに異常を感じるときは、「皮膚無力症」という病気である可能性を考えることができます。人間の場合では、「エーラス・ダンロス症候群」と呼ばれ、難病に指定されています。
犬や猫は「皮膚無力症」、人間は「エーラス・ダンロス症候群」、馬は「HERDA」、牛や羊は「皮膚脆弱症」と、呼び方が変わるようです。また、ウサギやミンクにも発症が確認されているようです。呼び方が変わるのは、発症因子に違いがあったり、症状に違いがあったりし、同じではないということが理由です。
原因は、遺伝子の変異によって、コラーゲンの生成に異常が起きることです。
コラーゲンの生成が不十分であったり、全く生成されなかったりすることで、皮膚が伸びたり、皮膚が脆くなったりすることがあります。
犬の皮膚が伸びやすい部位と日々のケア方法
犬の皮膚のなかで、とくに「頭」「顔」「首」の皮膚が伸びやすい傾向にあります。
伸びた皮膚がたるみのようになると、シワが作られ、皮膚と皮膚が触れ合うようになります。皮膚と皮膚が擦れて炎症を起こしたり、傷ができたりすることがあります。
触れ合った皮膚と皮膚の間には、汚れがたまったり、フケがたまったりすることがあります。触れ合った皮膚の間は蒸れやすく、細菌も繁殖しやすいでしょう。痒みが起こると、犬が執拗に掻いてしまうかもしれません。傷になり、膿んでしまうかもしれません。
対策として、こまめにブラッシングをし、抜け毛やフケや汚れをためこまないようにしましょう。
シワの多い部分は、ニオイの原因にもなります。やわらかいタオルで優しく拭いてケアするとよいと思います。月1回程度のシャンプーで清潔を保つことも大切です。
まとめ
犬の「皮膚が伸びる」理由を3つ解説しました。
- 致命傷を避けるため
- 母犬が子犬を運びやすくするため
- 皮膚無力症
皮膚をつまんで伸ばすことで、愛犬の健康状態をチェックすることができます。脱水状態であるときは、皮膚にハリがなく、背中や腰の皮膚をつまんで引っ張るように伸ばした後、手を放したときに戻りが遅くなります。
愛犬の顔回りや首回りのモチモチとしたよく伸びる皮膚は触り心地がよく、つまんでしまいたくなる可愛さですが、致命傷を避けるためなどの皮膚が伸びる理由を考えると、嫌がる犬もいると思います。
スキンシップやコミュニケーションとして優しく触れましょう。無理強いはしないことが大切です。