人間からの犬への愛情表現は彼らに伝わっているのだろうか?
愛犬をギュッと抱きしめることは愛情の表現でもあり、私たちにとっては喜びでもありますよね。
しかし2016年の研究では、ハグされている犬たちの画像の8割以上が犬が不快を感じていることを示しているという報告もあります。人間にとってハグは愛情表現のひとつですが、犬にとっては不自然な行動です。
このたびアイルランドのコーク・ペット行動センター、ベルギーのBIAAT基金、アメリカのハンター大学、スペインのハエン大学、イタリアの国立動物介在療法リファレンスセンター、イタリアのパドヴァ大学の研究チームによって、人間からの愛情表現と犬がそれをどのように受け取っているかについての新しい研究結果が報告されました。
人間的な愛情表現は犬にはどのように伝わっているのでしょうか。
遊ぶ、撫でる、ハグに対する犬の反応を動画から観察
この研究では「遊ぶ」「撫でる」「ハグする」という行動において、人間が犬に対して示す行動やコミュニケーション方法と、犬が人間に対して示す行動やコミュニケーション方法が比較されました。
分析の方法はインターネット上で人気を博している、犬が遊ぶ動画30種類、犬を撫でる動画80種類、犬をハグする動画80種類を選び、犬の行動を分析するというものです。
過去の研究では静止画が分析されたのですが、動画を分析することで犬の行動をより詳しく観察することができます。写真では見逃されがちな、噛みつき、あくび、まばたきなどの行動が調査されました。
合計190の動画から観察された犬たちの行動は、どのようなものだったのでしょうか。
多くの犬がハグに対して不快を示す行動をしていた
動画の分析結果は、人間は必ずしも犬が示すボディランゲージや発声を理解していないという傾向を示していました。犬と遊ぶ、撫でる、ハグするという愛情表現は犬には伝わっておらず、ストレス行動が多くの犬に観察されたということです。
中でもインターネット上でも人気がある、犬がハグされている80の動画でその傾向が顕著でした。
80のハグ動画の検証結果は次のようなものでした。これらは全て犬が不快を感じていることを示しています。
- 68%の犬がアイコンタクトを避け、首をかしげていた
- 44%の犬がハグされている間、自分の口元や鼻を舐めていた
- 81%の犬が頻繁にまばたきをしていた
- 43%の犬がパンティング(あえぐ)していた
- 68%の犬が人間に噛みついていた
この結果について研究の主執筆者は、「人間は犬が示すボディランゲージや発声を必ずしも理解していないという傾向を示しており、多くの人間の行動が問題となる可能性を示しています」と述べています。
あくびや口をパクパクする行動は、犬が自分の心を落ち着かせるシグナルでもあります。一見可愛らしく見える行動なので誤解されがちですが、度を過ぎると犬に不快感、不安、恐怖、苦痛、混乱を引き起こす可能性があります。
その結果、人間と犬の絆が損なわれたり、犬の福祉に問題を生じることもあります。さらに悪いことには、これがエスカレートすると犬は人間に対して、敵対的な行動をとる可能性があると研究者は警告しています。
まとめ
インターネット上の犬の動画を検証したところ、人間は犬に愛情表現をしているつもりでも犬は不快を示している例が多く、特に犬へのハグでその傾向が強かったという結果をご紹介しました。
このような研究結果は「私の犬は違う」という反発を招きがちなのですが、全ての飼い主は犬のストレスの兆候について、しっかりと勉強しておいて損はありません。
犬との正しいコミュニケーションについて、研究者は大人と子ども両方に対する教育の強化を勧めています。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2024.106206