訴えかける「子犬の目」を持つのは犬だけではないかもしれないという研究結果 ミッドウエスタン大学の研究チームが発表

訴えかける「子犬の目」を持つのは犬だけではないかもしれないという研究結果 ミッドウエスタン大学の研究チームが発表

子犬が何かを訴えかけるようにこちらを見つめる目には誰もが心を溶かされてしまうものですが、あの目は飼い犬だけでなくアフリカの野生の犬にも共通する可能性があるという研究結果が発表されました。

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あの「子犬のような目」は飼い犬だけのものではない?

哀しげな表情のボーダーコリー

子犬がおねだりするように見つめる目には誰しも弱いものです。大きく成長した成犬でも子犬の頃と同じような目で私たちを見つめてくることがあり、それは私たちが犬に心を奪われる理由のひとつでもあります。

あの訴えかけるような目は、人間との生活の中で目の周りの筋肉が発達して、戦略的に進化した結果だと言われています。同じイヌ科動物である野生のオオカミでは、犬よりも目周りの筋肉が動きにくいことも報告されています。

犬とオオカミの目周りの筋肉についての研究は以下で紹介しています。

関連記事:「犬の表情が豊かなのは筋繊維と家畜化がキーだった!【研究結果】」
https://wanchan.jp/column/detail/32781

上記の犬とオオカミを比較した研究は、アメリカのデュケイン大学の理学療法学の研究者によるものですが、このたびミッドウエスタン大学の比較解剖学の研究チームが、あの「子犬の目」が飼い犬だけのものではない可能性があることを発表しました。

リカオンの目周りの筋肉は犬とよく似ていた

リカオンのクローズアップ

この研究では、アフリカの野生のイヌ科動物であるリカオンが研究対象となっています。リカオンは社会性の高いイヌ科動物のひとつです。

2019年の研究では、人間と犬との社会的な関わり合いが、犬の眉の筋肉の進化を促したとしています。

だとすれば社会性の高いリカオンも、犬のような表情豊かな眉周りの筋肉を持つのではないかと研究者は考えました。

この仮説を検証するため、研究チームはアリゾナ州のフェニックス動物園で最近亡くなったリカオンを解剖したといいます。

その結果、子犬のような表情を作る筋肉として知られる内側眼角挙筋(LAOM)と外側眼角後引筋(RAOL)は、リカオンと家庭犬種では同じような大きさであることがわかりました。

コミュニケーションのための豊かな表情は犬だけのものではないかもしれない

見上げる子犬

リカオンの目周りの筋肉は非常に顕著で、頑丈ではっきりとした繊維を見ることができたといいます。この研究では1頭のリカオンしか調査していませんが、これほど大きく発達した筋肉が1頭だけにしか存在しないということはあり得ないとも研究者は述べています。

全体としてリカオンはよく発達した顔面筋と耳介筋を持っており、内側眼角挙筋(LAOM)と外側眼角後引筋(RAOL)は眼輪筋と同様に犬と同程度に発達していることがわかりました。

これら目周りの筋肉は、犬と人間との非言語的コミュニケーションに重要であると考えられています。

リカオンは集団での狩りの際の声によるコミュニケーションと取ることが知られていましたが、アイコンタクトについては今まで研究されてきませんでした。

この研究でわかった目周りの筋肉の形態は、眼球の表情がリカオンの群れ内でのコミュニケーションに役立っていることを示しています。このことはまた、犬の表情の特異性についての今までの解釈を覆すものだと研究者は結論づけています。

まとめ

アフリカの野生の犬リカオン

アフリカのイヌ科動物であるリカオンの顔面筋を調査したところ、目周りの筋肉が犬と同程度に発達していたことがわかったという研究結果をご紹介しました。

研究者は犬やリカオンと同じように発達した表情筋を持つイヌ科動物は他にもいるかもしれないとも述べています。

今後さらに研究が進められ、イヌ科動物と犬との共通点や相違点が明らかになっていくのが楽しみですね。

《参考URL》
https://www.nature.com/articles/d41586-024-01315-x
https://doi.org/10.1002/ar.25441

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