犬の寿命
犬はチワワなどの超小型犬からグレート・ピレニーズなどの大型犬、グレート・デンなどの超大型犬まで、体の大きさは様々であり、平均寿命もその体の大きさによって変動します。
サイズ別の平均寿命をみると、小型犬・中型犬で12~15歳、大型犬で10~12歳、超大型犬で7~10歳となっています。一般に、大型犬よりも小型犬のほうが長生きする傾向にあるといわれています。
大型犬・超大型犬は体が大きい分、出生時の約100倍もの成長をとげるため、骨や関節にかかる負担も大きく、体のサイズに対する臓器の割合が小さいため臓器にかかる負担が大きいと言われ、それが体の老化を早める要因となってしまうと考えられています。ちなみに、日本全国の犬全体の平均寿命では、一般社団法人ペットフード協会の平成24年度の調査で13.9歳という結果が出ています。この結果は、1990年の日本小動物獣医師会の調査結果の、犬の平均寿命は8.6歳であったという結果から1.5倍も伸びたことになります。
この平均寿命の延びの要因として、”室内飼いの増加””ドッグフードの質の向上””病気の予防薬やワクチンの普及”といったものがあげられています。
ご長寿犬!
2016年4月17日、世界最高齢の犬だと考えられていたオーストラリアン・ケルピーのマギーが、オーストラリア南東部の街ウールズソープの自宅で息を引き取りました。なんと30年も生きたのだそうです!
犬の30歳は、人間に換算すると160歳以上だといわれています。(200歳以上という説もありますが、どっちにしてもスゴイ…!)約10~13年と言われている犬の平均寿命。マギーは、その約2、3倍も生きたことになります。
しかし残念ながら、マギーの年齢を証明できるものは残っておらず、世界最高齢犬としてギネス世界記録への登録はできませんでした。
現在ギネス世界記録では、1939年に亡くなったオーストラリアン・キャトル・ドッグのブルーイーという29歳5か月の犬が、世界最高齢犬として登録されています。なので、もし30年も生きたという証明が残っていたならば、マギーがこのブルーイーの記録を塗り替えていたかもしれません。
夢の薬!?「ラパマイシン」とは
ラパマイシンとは、主に臓器移植の際に体に起こる拒絶反応を防ぐために使用される、免疫抑制剤の一種です。またそれだけでなく、このラパマイシンには他にも、抗がん作用、寿命延長効果があることが知られています。
中でも、このラパマイシンの寿命延長効果には、「夢の不老長寿が実現できるのではないか」と多くの研究者が期待の眼差しを向けています。現時点の研究では酵母菌、ショウジョウバエ、線虫、マウスを使った実験において、寿命延長効果が認められたと報告されています。
しかし、肝心の人に対しては、この研究結果と同様の効果を得るためにはどの程度服用すればいいのか、などの研究は未だほとんど行われていません。人間に対して明確な効果があると実証するためには、大規模な研究が必要であり、期間として数十年の年月を要するといわれています。
犬にも効果はあるの?
ワシントン大学のダニエル・プロミスロウ教授、マット・カバーライン教授が中心となって行われているプロジェクト「Dog Aging Project」では、動物に対するラパマイシンの寿命延長効果が調査されています。
3つの段階で計画されている研究の最初の実験の結果が公表されました。この実験は、シアトルとその近郊に住む6歳以上の犬24頭を研究対象として集め、そのうち16頭に対して、ラパマイシン10週間を飲ませるという内容でした。
最初の段階であるこの実験の最大の目的は、ラパマイシンの投与が犬にとって悪影響のないものであることを確かめることであり、血液検査と行動観察などの結果からは副作用は全く見られませんでした。 また実験開始前と実験終了時に心エコー検査も行われました。心エコー検査では、心室の収縮力にかかわる3つの数値が計測されました。心臓の収縮力は老化と共に低下するのですが、ラパマイシンを投与された犬では3つの数値全てが改善傾向にあり、そのうちの2つでは明らかな改善が認められたそうです。その結果、多くの犬の心肺機能の向上がみられました。特に、心臓に疾患を持つ犬に著しい効果がみられたのだとか。また、このラパマイシンを服用したことによる重大な副作用は見られなかったそうです。
まとめ
ラパマイシンが持っているとされる寿命延長効果の発見は、人類が長年夢見てきた「不老長寿」の実現に一歩近づいたといわれています。これから研究がどんどん進み、明確な効果が証明されれば、その不老長寿も夢ではないかもしれません。
近い将来、このラパマイシンがこれまで以上に犬と人間の絆を深めてくれる存在になればいいなと思います。
ユーザーのコメント
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40代 男性 ビーグルパパ
なぜ寿命を伸ばそうとするのか。
変なことをすると、必ずひずみが出てくる。 -
20代 男性 匿名
本間先生みたいなことを言いますね(笑)
自然の一部である人間が発展させている医学もこれまた自然。
医学の進歩によって人間五十年から八十年まで伸びました。
古くから人類と共存してきた犬にも順番が回ってきたのだと思います。 -
50代以上 男性 匿名
健康で長生きできるのなら、良いと思います。
長生き出来ても、呆けてしまったり、不健康な状態で生き長らえるだけなら、意味が無いと思います。 -
20代 男性 匿名
そもそも歪んでもいいんですよ
生物ってそうやって進化してきたんです
生き残ったもの勝ちですから(誤解を招くような言い方ですが) -
30代 女性 しろわんこすまいる
うちの2頭も、シニア期に入りました。
いつかは別れなくてはならないと思いつつ、現状は受け入れられない( 笑 )
食が細くなったり、以前よりお散歩距離短くても満足するし、耳遠くなったかな……って思う時もたまーにあります。
でも、彼女達が私の側で居て良かったっと思ってくれれば。虹の橋のたもとで待っててね。
人間じゃないから、下手な延命はしないつもりでおります。 -
女性 匿名
家族といつまでも一緒にいたいと思うのはエゴでも何でもないと思います。
日本人だって明治大正時代の平均寿命が44歳しかなく2倍弱になってるので、技術の進化が人の願いをかなえてくれるようになったと思えば素敵なことですよ。 -
20代 男性 匿名
1日でも長く居たいから延命する、苦しめたくないから延命せず緩和する、残りを家で過ごしたいから余計な事をしない。人それぞれ願望があるでしょう。愛犬にとって何が最善なのか、それは愛犬自身に聞かなければ解りません。一緒に居たいから苦しくても延命するか残りの時を家で過ごすか若しくは安楽死を望む者も居るかもしれません。最後は絶対したくない飼い主が大勢居るはず。しかしどうです?一緒に居たいのは解ります、でも苦しんで踠いてる愛犬を観てられますか?延命した良かったと思えますか?ただ苦しんで踠いてる命の灯火が消えるのを待つのですか?苦しめるくらいなら安楽死を選んだ方が良かったと思うかもしれません。
健康に元気で幸せに暮らすことが人犬共々思っていることです。時を経て死期が近づく愛犬を観てどう決断するのか、安楽死か延命か、自宅療養かまたは別の方法か。
俺はまだ愛犬を看取ったことがありません。でももう既にシニア、高齢化に入ってます。最後に何が出来るか、俺が愛犬の為にに出来るか考えてます。最後までバディとしての責務を果たす。これが俺の考えてる愛犬のための選択です。余計な事をしない。自然の摂理に従い自由にさせる。
Dog Aging Projectでのラパマイシンを犬に投与する研究については、本記事で紹介された第一段階の結果が発表されており、第二段階が現在行われています。
第二段階の実験の目的は、ラパマイシンが犬の健康と寿命に与える効果を調べること(第一段階で見られたものと同じ心機能向上効果が見られるのか?他に持続的な効果が見られるのか?)で、より広い地域から集められた50頭の犬で一年間かけてラパマイシンの投与と評価を行うことになっているそうです。
その後には、600頭の犬を使った3年間ラパマイシンを投与してその後その犬が死亡するまでずっと追跡調査をする第三段階目の実験が計画されているそうです。
犬での研究が犬に有益な結果をもたらすことを期待するのはもちろんですが、寿命がマウスやハエよりは長いが人間よりは短い犬、また生理的にも行動面から考えてもマウスやハエより人間に近い動物である犬を研究対象とすることで、より人間にあてはめやすい結果を得られるかもしれない、という点も犬で研究を行うメリットの一つになります。
参考:Dog Aging Projets