警察犬をテクノロジーに置き換える動き
警察犬はさまざまな任務でその役目を果たしていますが、仕事の性質上どうしても危険な目に遭う可能性が高いものです。また、警察犬の訓練と維持管理には莫大な時間と費用がかかります。
このような事情から近年アメリカの警察では、警察犬による追跡業務をドローンに置き換える動きも出ています。(※)
警察犬をテクノロジーに置き換える動きはさらに進み、ロボット犬の活躍も伝えられ始めました。先ごろアメリカで報道された、2つのロボット犬の話題をご紹介します。
(※)関連記事:ドローンは警察犬の代わりになるか?アメリカでの試み
https://wanchan.jp/column/detail/35623
爆発物・危険物処理班にロボット犬を配属
ペンシルベニア州のモンゴメリー郡保安官事務所は、2024年4月ロボット犬の”スポット”をチームに加えることを発表しました。
スポットはボストン・ダイナミクス社が開発し、RADeCO社によって改良された犬型検査ロボットで、同保安官事務所の爆発物・危険物処理班のメンバーとなるそうです。
スポットは足場の悪い困難な場所でも素早く移動できる機動性を持ち、階段の昇り降り、ドアの開閉、物体の操作などが可能です。
またスポットには高度な360°カメラシステムが搭載されており、危険物取扱の他にも、閉ざされた場所の調査や捜索救助活動での活躍が期待されているとのことです。
一方で、ロボット犬が市民に不安を与えないよう、スポットには兵器システムや顔認識ソフトウェアも搭載されていないことも明言されています。
スポットはロサンゼルスやマサチューセッツの警察署にもリースされており、今後活躍の場が広がっていくことが予想されます。
ロボット犬が銃撃された初めての事件
2024年3月には、マサチューセッツ州で任務中のロボット犬が銃撃されたというニュースが報じられました。ロボット犬が銃で撃たれたのはこれが初めてのことです。
ニュースの内容ですが、同州のSWATチーム(アメリカの法執行機関に設置されている特殊武装チーム)が武器を持って立てこもった容疑者を追跡するため、3台のロボット犬のスポットを現場となった建物に遠隔操作で送り込みました。
スポットたちは建物の最上階から地下室までを順に捜索し、容疑者が地下室に潜んでいるのを発見しましたが、容疑者はこのスポットに三発の銃弾を発砲し、この時点でスポットとオペレーターの交信は途切れてしまいました。
しかし建物内部の様子や、容疑者のいる場所が詳細に把握できていたため、催涙ガスを使って容疑者を逮捕することができました。内部の様子を把握するために警察官を投入する必要がなくなったことで、警察官が銃撃されることを防いだのは大きな功績です。
撃たれたスポットは製造元であるボストン・ダイナミクス社に持ち込まれ、ダメージの評価と今後の研究のために保管されるそうです。州警察には代わりのロボット犬が用意されました。
まとめ
アメリカのいくつかの州で警察犬に代わってロボット犬が活躍し始めたという話題をご紹介しました。
ボストン・ダイナミクス社はロボットを武器化することは禁じていますが、追跡や捜索でロボット犬が人間を追いかけることに恐怖を感じる方もいるかもしれません。実際、自分が追われる側だと考えると確かに怖いですね。
しかし爆発物の探知や武装した容疑者の追跡などで、人間や犬が怪我をしたり命を落とす可能性が低くなるのは素晴らしいことだとも感じます。
近い未来、空港や各種施設でロボット犬が働いているのを目にするのも珍しくなくなるかもしれませんね。
https://www.nbcboston.com/news/local/massachusetts-robot-dog-shot/3320889/