犬とどんなふうに触れ合うと、脳はどんなふうに反応するのだろうか?
犬と触れ合うことで幸せを感じたりストレスが緩和されることは、すでに多くの人がご存知のとおりです。そのためドッグセラピーなどの動物介在療法について多くの研究が行われて、実際に学校や病院などで広く活用されています。
今までの動物との触れ合いがもたらす効果に関する研究では、人々の血圧やホルモン値、気持ちの在り方などの生理的反応を比較することが主でした。
しかし一括りに「動物との触れ合い」と言っても、一緒に遊ぶことなのか動物を撫でたりブラッシングすることなのかなど、色々な関わり合い方があります。
韓国のコングク大学の研究チームは、どのような関わり合い方が人々の脳にどのような影響をもたらすのかを調査し、その結果が報告されました。
犬と遊んだり散歩したりしている時の脳波を測定
調査に参加したのは一般募集された30名の成人(男性15名、女性15名、20〜40代、平均年齢27.9歳)でした。
参加した犬は、主任研究者の愛犬であるアロマという名の4歳のメスのスタンダードプードル1頭です。アロマは社会化を含めたトレーニングを十分に受けた犬です。
参加者はアロマと対面する、遊ぶ、食べ物を与える、マッサージする、ブラッシングする、写真撮影する、ハグする、散歩するという8種類のアクティビティを行ないました。
犬が疲れないよう、一人当たりの活動時間は最高60分、セッションは1日に最大3回までと設定され、セッションには毎回プロのドッグハンドラーが同席したそうです。
アクティビティの間、参加者は脳波計の電極を装着し、アロマと関わり合っている間の脳の電気活動が記録されました。また各活動直後の主観的な感情の動きも併せて記録されました。
犬との特定の活動が、脳の特定の反応と結びついていた
参加者の脳波測定の結果、犬と遊んだり散歩したりする時には、脳のリラックス状態と安静状態を示すアルファ波帯が有意に増加することが示されました。これはリラックスした覚醒状態を反映しています。
また犬をマッサージする、ブラッシングする、犬と遊ぶことは注意力や集中力の高まりに関連するベータ波帯の増加につながりました。これはストレスのない集中力の向上を反映しています。特筆すべき点は、犬と遊ぶことはリラックスと集中力の両方にプラスの影響を与えたことです。
このように犬との特定の活動は、脳の活動を促進することによって、より強いリラックス、情緒の安定、注意力、集中力、創造性を活性化することが明らかになりました。
参加者による主観的な感情の動きについての報告では、疲労感、抑うつ感、ストレスのスコアが減少したことがわかりました。
犬との特定の活動と生理学的効果との間の関連は、より的を絞った動物介在プログラムを設計する際の参考にもなり得ると研究者は述べています。
まとめ
人が犬と8種類の違う触れ合い方をした時の脳波測定をしたところ、散歩や遊びはリラックスや安静を促し、マッサージやブラッシング、遊びは集中に関連していたことがわかったという調査結果をご紹介しました。
散歩の時の「リラックスした覚醒状態」や、マッサージの時の「ストレスのない集中」と言われると、犬と過ごしている時は確かにそうだ!と感じる方も多いのではないでしょうか。
このような研究結果が活かされて、犬にも人間にも優しく効果的な動物介在療法が設計されることが期待されます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0298384