犬の肛門腺絞りは必要?しないとどうなる?
犬の「肛門腺」とは、動物同士の個体識別やマーキングに使われることのある、強烈なにおいのする肛門腺液を分泌する腺です。
肛門の左右には、肛門腺液が溜まる小さな袋状の肛門嚢があり、それを絞って不要な肛門腺液を出すことを「肛門腺絞り」と呼んでいます。
野生動物の場合、スカンクのように外敵に襲われたときに肛門腺液を噴射して身を守ったり、テリトリーを示すためのマーキングに使用したりします。しかし、一般家庭の犬は利用する機会があまりないでしょう。
肛門嚢に溜まった液は、ウンチをするときに一緒に排出されることもありますが、小型犬や老犬など力の弱い犬の場合はしっかり排出されないことも少なくありません。
自力で排出できずに溜まりすぎてしまうと、「肛門嚢炎」「肛門腺炎」などを引き起こして、肛門付近が赤く腫れたり出血したりします。排泄時に痛みを感じることもありますし、悪化すると肛門嚢が破裂して縫合手術が必要になることもあります。
そのようなトラブルを防ぐためにも、定期的に肛門腺絞りをすることが必要とされています。
犬の肛門腺絞りを自宅でする正しい方法
犬の肛門腺絞りは、コツをつかめば自宅でも十分にできます。
「肛門嚢炎」「肛門腺炎」にさせないために、自宅でも定期的に肛門腺絞りができるよう、正しい方法について確認しておきましょう。
肛門腺絞りをすべき頻度
犬の肛門腺絞りは、一般的に月に1回程度の頻度でおこなうといいでしょう。
あまりに頻繁にやっても、肛門腺液が溜まっていませんし、溜めすぎてしまうと炎症を起こす可能性があるので注意してください。
また、犬がお尻を床にこすりつけるような仕草をしたり、お尻を気にして舐めることが増えたりしたら、溜まってきていることが考えられるのでチェックしてあげてください。
犬の肛門腺絞りの正しい方法
まずは、愛犬の肛門を痛めないように、飼い主さんの爪は事前に切って整えておきましょう。
犬の肛門嚢は、肛門の左右やや下部あたりにあります。時計で考えたときに、4時・8時の位置に人差し指と親指を下から押し当てたあとに、肛門を絞り上げるようにつまんでみましょう。
肛門嚢を絞って肛門から液を出すイメージです。
肛門腺液が溜まっている場合は、あまり力を入れなくてもきちんと出てくるので、グリグリと無理につまむ必要はありません。指の腹で優しく押し上げるようにして絞ってください。
これを1〜2回くり返せばOKです。
この分泌液はとてもにおいが強く、付着してしまった場合なかなかとれないので注意してください。部屋や犬の体を汚さないように、シャンプーをするタイミングでお風呂場でするのがおすすめです。
そうでないタイミングでおこなうときは、ティッシュを畳んで何重かにしたものを肛門に押し当てた状態で絞るといいでしょう。
犬の肛門腺絞りを無理にやってはいけないサイン
正しい方法で行えば自宅でも可能な犬の肛門腺絞りですが、無理にやってはいけない場合があるので注意が必要です。
以下のようなサインを目にしたら、無理に肛門腺絞りをやってしまわないように気を付けましょう。
座り込んだり逃げようとする、痛がっている
肛門腺絞りは、犬の健康管理のためにとても大切なケアです。しかし、犬が嫌がっていたり、やり方がわからなかったりする場合は、無理におこなう必要はありません。
特に肛門はとてもデリケートな部分なので、触られるのを嫌がる犬は多いと思います。
ケアしようとすると座り込んだり、逃げようとしたりする様子が見られたら、無理やり押さえつけてやるようなことは避けてください。また、触ったときに痛がるようであれば、肛門付近に何らかの怪我や病気が隠れている可能性もあります。
スムーズにできない場合は、動物病院やトリミングサロンで対応をお願いしましょう。
なかなか液が出てこない
肛門腺絞りをしても、なかなか液が出てこないとぐいぐり押したりつまんだりとしつこくやり続けてしまう飼い主さんもいます。
しかし、ウンチの排泄時などに出ているなど、あまり溜まっていないときもあるので、出ないときはしつこくおこなう必要はありません。無理にやりすぎると、肛門や肛門嚢を痛めてしまいますし、犬にも嫌な思いをさせてしまうでしょう。
どうしても気になる場合は数日後に改めてチェックするなど、少し時間を置いてください。
分泌液に赤い血や緑色の膿のようなものが混ざっている
肛門腺絞りがきちんとできたら、出てきた液の色や状態をチェックしてみてください。
通常は茶色や灰色に近いものが出ますが、そこに赤い血や緑色の膿のようなものが混ざっていたら、すぐに動物病院で診てもらうようにしましょう。
まとめ
犬の肛門腺絞りは一見難しいように感じるかもしれませんが、コツを掴めば比較的簡単にできるようになるものです。
しかし、自宅でやることに不安を感じる場合は、無理やりおこなう必要はありません。動物病院やトリミングサロンに行ったときに相談してみるといいでしょう。
とはいえ、放っておくと思わぬトラブルを招く恐れもあるので、定期的なケアをして愛犬の健康を守ってあげましょう。