ペットを飼っていることと飼い主の幸福度の関連を調査
一般的にペットを飼うことは、飼い主の幸せ度をアップさせると考えられています。この一般的な考えを裏付けるように、犬や猫と暮らすことで健康になったという研究結果や、パンデミック中の孤独が和らげられたという調査結果は数多く報告されています。
このたび、アメリカのミシガン州立大学、シラキュース大学、テキサス州立大学、ジョージア大学とオランダのアムステルダム自由大学の研究チームによって、ペットを飼っていることと幸福度の関連を調査した結果が発表されました。
その結果は意外と感じる人もいれば、「あ〜確かに」と納得する人もいるであろうと思われるものでした。
飼い主の性格や幸福度を定型化された質問票で測定
この研究のための調査はパンデミック中の2020年5月に行われました。調査への参加者は世界の複数の国から募集され、3度のスクリーニングを経て選ばれた767名でした。参加者の大多数はアメリカ(59%)、スペイン(19%)、カナダ(11%)からの人々です。
調査はアンケートの形で行われました。質問票はペットに関するものと参加者自身に関する項目があり、ペットについては「ペットを飼っているか」」「ペットの種類」「ペットの数」「ペットと回答者の関係性」などが調査されました。
参加者自身については、愛着スタイルを評価するための尺度、ビッグファイブ性格特性の尺度(外向性、神経症傾向、開放性、誠実性、協調性の5つの特性を数値化して性格を測定する方法)、幸福度を測定するための尺度(主観的幸福感、生きがい、肯定的/否定的感情、ストレス、孤独感、抑うつ感)の質問票が用いられました。
これら定型化された質問票を使うことで、参加者の性格や幸福度を数値化されたデータとして分析することができます。
アンケートとは別に「パンデミック中にペットを飼うことがどのように役に立ったか、または役に立たなかったか」について自由形式での回答も設定されました。自由形式での回答は数値ではなく、質的なデータとして分析評価されます。
ペットの存在と幸福度は数値的に関連していなかった
参加者の回答を分析した結果、ほとんどの場合ペットを飼っているかどうかは、飼い主の幸福度の数値的なデータと関連していませんでした。ペットの数、種類、関係性、飼い主の性格などもほとんどの場合、幸福度との関連が見られませんでした。
犬についてだけは、犬を飼っていることとが生活満足度、生きがい、ポジティブな感情、抑うつ感の低下とわずかに関連していました。
しかしこれらの関連は、飼い主の性格特性を加味して分析すると犬が人を幸福にするというよりも、外向性など特定の特性を持つ人ほど幸福度が高く、そのような人が犬を飼っている確率が高いという結果が見られたといいます。
自由回答から得られた質的なデータからは、ペットを飼うことに対して圧倒的にポジティブな結果が出ました。
参加者の多くはペットに対して肯定的な感情を表現し、愛情、目的意識、運動、ストレスの軽減、感情的なサポートなどがペットと暮らす利点として挙げられていました。
しかし自由回答に記入された少数の「ペットと暮らすことの負担」は、なぜペットを飼うことが数値的な幸福度と関連していなかったのかを理解するのに役立ちました。
負担として挙げられたのは、ペットのために十分な時間を取れない罪悪感、死や喪失、ペットの健康への心配、掃除などの負担、金銭的負担などがあり、これらがストレスになっている人もいたそうです。
研究者は「人々はペットが自分を幸せにしてくれると考えているが、必ずしもそうではない」と結論づけています。
これはペットを飼うことには長所も短所もあるというだけでなく、人の幸福度に関わる因子はペットのこと以外にもたくさんあるからです。
まとめ
複数の国の人へのアンケート調査を分析した結果、幸福度を測定する数値データはペットを飼っているかどうかと関連していなかったという報告をご紹介しました。
ペットと暮らすことの幸せが、その他のすべてのネガティブな要素を解決してくれるわけではないので、この結果はなるほどと思わせられます。
「ペットを飼うと幸せになる」という安易なアピールは、「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違う」という結果にもなりやすく、それは飼育放棄などにもつながるものです。今回のような冷静な研究結果は、社会にとって必要なものであると言えるでしょう。
《参考URL》
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/01461672231203417
https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-modern-heart/202311/why-pets-dont-always-make-us-happier