COVID探知犬の研究を検証
特定の病気を匂いで探知する医療探知犬。COVID-19のパンデミック以降、この病気を嗅覚で探知する犬について多くの研究が行われて来ました。空港や学校などで実際に活躍しているCOVID探知犬もたくさんいます。
このたびアメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校と、バイオセントディテクションドッグズ社の研究者が、COVID-19を探知する犬についての29の査読済みの研究を検証した結果を発表しました。
検証の目的は、2019年12月から2023年4月までの期間中、COVID-19のスクリーニングにおける嗅覚探知犬の研究の進展についての情報を提供し、探知犬の長所と短所を系統的に評価することです。
研究結果が示した探知犬の能力
研究者が検証した29の研究は、30カ国以上400人以上の科学者が19犬種の犬と31,000以上のサンプルを用いて行われたものです。
これら29の研究のうち92.3%において探知犬の感度は80%を超えており、84%の研究において特異度が90%を超えていました。さらに32%の研究では特異度が97%を超えていました。
感度が高い検査では、偽陰性が少ないので陰性と出た時の信頼性が高く、特異度の高い検査では偽陽性が少ないので、陽性と出た時の信頼性が高くなります。
ほとんどの研究で、探知犬は標準的なPCR検査や抗原検査と同等か、より高い感度と特異度を示しました。
ある研究では、4頭の犬がオリンピックサイズのプール10.5杯分の水に溶けた1滴の臭気物質に相当する濃度のウイルスRNAを検出しました。
これらの犬は、症状あり、症状なし、コロナウイルス変異体やロングCOVIDも検出することができ、COVID-19と他の呼吸器ウイルスを区別することもできたそうです。
また、探知犬が嗅ぐサンプルは呼気、唾液、分泌物、尿の他にマスクや衣服も利用できることがわかっています。
正確なだけではない医療探知犬の有用性
29の研究は探知犬の有効性を示していましたが、COVID-19のスクリーニングに探知犬を採用することのもう1つの大きな利点はスピードです。数秒から数分で結果を出すことができるので、空港など公共の場でのスクリーニングでは非常に効率的です。
高価な実験装置を必要とせず、プラスチック廃棄物を出さないこともありがたい点です。これらの点で、探知犬は従来の検査方法よりも優れているともいえるでしょう。
研究者は医療探知犬について「実際の医療現場で使うには時期尚早であると考えられていましたが、29の研究の検証の結果から医療探知犬は有用であり、COVID-19以外の医療への応用の準備ができていると考えています」と述べています。
また検証された研究の数々についても、医療探知犬についての医学会と一般市民の知識や受け入れる気持ちを高めるのに役立つとしています。
まとめ
2019年から2023年に発表された29のCOVID-19探知犬研究を検証した結果から、探知犬はより迅速で効率的に病気を検出できる可能性があるという報告をご紹介しました。
COVID-19に限らず、病気の検査は痛みや不快を伴うことがあり、それが検査に向かう足を遠のかせている場合も少なくありません。探知犬によるスクリーニングは検査される人間にとっても簡単でありがたいのも魅力です。
働く犬の福祉に十分な配慮がされた上で、医療探知犬の活躍が広まって欲しいと思います。
《参考URL》
https://doi.org/10.1515/jom-2023-0104