日本での犬猫の飼育と喘息リスクを調査
子どもの頃に犬や猫と暮らしていたことと、アレルギーや喘息との関連については数多くの研究が発表されています。しかし喘息については、一貫した知見が得られていませんでした。
これは研究が実施された国や地域によって、気候や生活環境などが違うことによる可能性があります。とりわけ日本の気候や居住環境は欧米とはかなり違っています。また犬や猫の室内飼育についても、欧米諸国とは認識が違う可能性があります。
このたび日本の国立環境研究所の研究チームによって、日本人における犬や猫と飼育と、喘息の発症との関連性を調査した結果が報告されました。
この調査では犬や猫の飼育を開始した年齢によって、喘息の発症リスクをより効果的に低下させる時期があるのかどうかについても検討されました。
4,000名以上の人を対象にアンケート調査
この研究には、2021年に日本ペットフード協会が実施した調査でのデータが使用されました。日本ペットフード協会は、2004年から毎年インターネットを通じて各家庭の飼育頭数や生活環境を調査しています。
2021年の同協会の調査では、20〜79歳の個人4,317名が対象となりました。4,317名のうち犬か猫(または両方)を飼ったことがある人は2,030名、犬や猫を飼ったことがない人は2,287名でした。
飼ったことがある人は飼い始めた年齢と飼い終わった年齢にも回答し、それぞれの参加者について飼育を開始した最も若い年齢が算出されました。
犬や猫に関する質問とは別に、参加者全員に医師から喘息とアレルギーの診断を受けたことがあるかどうかも質問され、診断されたことがある場合は、症状が始まった年齢と終わった年齢も質問されたそうです。
犬や猫との暮らしは喘息発症のリスクを低下させる!
研究参加者のうち、犬を飼ったことがある人は41.2%、猫を飼ったことがある人は26.5%でした。
医師から喘息の診断を受けたことがある人は、犬を飼ったことがある人では5.7%、猫を飼ったことがある人では5.6%、犬を飼ったことがない人は14.8%、猫を飼ったことがない人は13.5%と、犬や猫を飼ったことがある人の喘息の発症率は、有意に低くなっていました。
犬を飼い始めた時期については、若年期に犬を飼っていなかった参加者は喘息発症のオッズが高かったことから、日本では犬と触れ合うことで喘息を効果的に予防できるのは、乳幼児期など人生の初期だと考えられます。
一方で、猫を飼い始めた時期と喘息発祥との関連は犬の場合とは違っていました。
猫の場合、10歳まで猫を飼ったことがなかった参加者は喘息発症のオッズがやや低かったものの、それ以外では猫との触れ合いで喘息発症を予防する効果は、全年齢で一定でした。つまり日本での猫の飼育は、あらゆる年齢で喘息発症を低下させていました。
犬や猫との接触の喘息発症の関連について、正確なメカニズムは今のところは不明です。しかし過去の研究では、犬や猫との暮らしが生活環境の微生物の変化と関連していることが報告されています。
犬や猫との暮らしが人間の腸内細菌叢の多様化にも影響を与え、喘息やアレルギーを発症させにくくなっている可能性があります。
まとめ
日本において犬や猫の飼育が、喘息発症の予防に関連しているという研究結果をご紹介しました。日本でのペットと喘息の関連調査はこれが初めてのものだそうです。
犬との暮らしが、喘息発症を予防するのは生後間もない時期であるのに対し、猫との暮らしによる予防効果は、すべての年齢で一定であるというのも興味深いですね。
これは日本に特化された研究結果でもあり、このような情報が広まることで「子どもが生まれるので犬や猫を手放す」という人が少なくなることを望みます。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0282184