注意したい「共通感染症」とは?
狂犬病
狂犬病は、毎年予防接種を受けさせることが飼い主に義務付けられているため、その名を知っている人は多い疾患だと思います。しかし、現在は日本国内での発生がないため、具体的なことは知らないという人もいるのではないでしょうか。
狂犬病はその名の通り、神経障害を引き起こす病気のため、「狂ったような行動を起こす」とされています。また、発症後の致死率はほぼ100%と非常に恐ろしい病気で、日本ではその根絶のために1950年以降予防接種が義務付けられています。
食欲不振などの初期症状から、神経障害によって凶暴化して周囲の人や動物に噛みつくなど攻撃行動を起こすようになります。さらに進行すると、昏睡状態となり死に至ります。
狂犬病は発症している犬に噛まれることで感染します。日本国外では狂犬病が蔓延している地域も数多くあるため、海外旅行などに行く際は犬に不用意に近づかないようにしたり、出発前にワクチン接種をしたりと対策を行いましょう。
日本国内での発生がないため、狂犬病ワクチンは不要だと考える人もいるようですが、海外で感染した人が入国することなどはあるので、日本でも必ず犬の狂犬病予防接種を行うようにしてください。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、近年話題に上がることが増えている人獣共通感染症のひとつです。SFTSウイルスを保有するマダニに噛まれることで感染するもので、発熱や嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。
さらに、SFTSウイルスに感染し、発症している犬の唾液などの体液に触れることで人間も感染してしまいます。飼い主さん自身がマダニに刺されないことはもちろん、愛犬のマダニ対策もしっかりと行うようにしましょう。
レプトスピラ症
レプトスピラ症は、ネズミなどの尿に触れることで感染する共通感染症です。発熱や出血、黄疸、腎障害などの症状が起こるもので、犬の混合ワクチンにも含まれています。
ネズミの尿から直接感染するだけでなく、犬を媒介して人間が感染することもあるため、犬の散歩時はドブネズミなどがいるような場所は避けるようにしましょう。また、野生動物も多い自然豊かな地域で暮らしている場合は、混合ワクチンを接種して感染予防につとめましょう。
カプノサイトファーガ感染症
犬や猫の口腔内の常在菌である3種類の細菌(カプノサイトファーガ・カニモルサス、カプノサイトファーガ・カニス、カプノサイトファーガ・サイノデグミ)による感染症です。
犬や猫に噛まれることで感染することがあり、なかには傷口をなめられたことで感染した例もあります。ただし、噛まれた場合に必ず感染するわけではなく、感染しても発症しないことも多いため、症例はそれほど多くありません。
ただし、高齢者や乳幼児、病中病後の人など免疫力が低下している人の場合は、感染後発症する可能性も考えられるので注意が必要です。
人獣共通感染症を予防する対策
犬から人に感染する病気は様々あり、なかには重篤な症状を引き起こすものもあります。そのような人獣共通感染症にかからないためには、愛犬の健康管理と関わり方が大切なポイントとなります。
犬から人に感染する際の経路には、唾液や尿などの体液が多く関わっています。そのため、犬とキスをしたり、傷のある手足をなめられたりすることは、感染リスクが大きいと考えられています。
また、犬にひっかかれてできた傷をそのまま放置したり、犬の体を触った手を洗わずに食事をしたりすることもできるだけやめましょう。
「犬を汚いもののように扱いたくない」と考える飼い主さんもいると思いますが、人間のように毎日お風呂に入ったり、手洗いをしたりできない犬は、どうしても雑菌や細菌を保有してしまいやすいのです。
可愛がることとは別に、接し方などに線引きが必要なこともある、と覚えておきましょう。
まとめ
犬から人にうつる感染症のなかには、最悪の場合死に至るような重大な疾病もあります。そのため、人獣共通感染症とはどのようなものか、感染経路はなにか、どのように予防すればいいかということをしっかりと把握しておく必要があります。
適切な予防対策をして、愛犬と一緒に楽しく健康に暮らしていきましょう。