自衛隊基地の警備犬が災害救助犬に!
海上、陸空自衛隊基地に配備されている警備犬を、災害救助犬として育成する取り組みが広がりを見せています。
2007年から広島県呉市にある海自呉基地で本格的に始められ、2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、神奈川県横須賀市の海自横須賀基地や、埼玉県挟山市の空自入間基地でも災害救助犬の育成が始められました。
育成された災害救助犬は、将来的には爆発物探知能力を持つ多機能犬として活躍するとの期待が高まっています。
優れた嗅覚で倒壊家屋の下敷きになってしまった被災者を捜す災害救助犬は、1995年に起きた阪神大震災で、海外から派遣された救助犬たちの活躍によって注目されました。
72時間を境に被災者の生存確率は大きく下がってしまうため、震災発生直後の現地にて捜索をする自衛隊と共に、災害救助犬が捜索を行うことでより多くの命を救うことができると期待されています。
神奈川県藤沢市にあるNPO法人「救助犬訓練協会」の顧問を務める元海自呉地方総監の山田道雄さん(70)らが働きかけたことで、自衛隊での警備犬を、大規模災害時に活躍する災害救助犬として育成する訓練が始まりました。
今後期待される活動について
災害救助犬は、地震や雪崩などにより瓦礫に閉じ込められた人や、山歩きで行方不明になった不特定の人を、その嗅覚によって捜索する犬のことです。
警察犬との違いは、特定の人ではなく不特定の人を捜しだせること。警察犬はあらかじめ匂って覚えた特定の匂いを捜すのに対し、災害救助犬は空中に漂う浮遊臭を察知し、不特定の行方不明者を捜します。
風のない広い場所であれば10メートルほど、風のある場所では風下であれば数百メートルの匂いを嗅ぎ分けることが可能で、雪の中であれば、隙間があり匂いがとれる状況であれば、深さ2~3メートルまで嗅ぎ分けることができます。
災害救助犬は、かくれんぼでの鬼役が好きになるような訓練をしています。誰からかわからない匂いをたどって、その匂いの発生源である人を探し出します。隠れていたり、倒れていたり、しゃがんでいる人をかくれんぼの相手として認識するため、歩いていたり、作業中である人からはご褒美がもらえないため無視して、次の人を捜す訓練によって、行方不明者を発見することができます。
災害救助犬に犬種の制限はありませんが、狩猟本能のある子が向いています。現在では、シェパード、ラブラドール、ゴールデン、ボーダーコリーがほとんどで、ダックスやコーギーなどの小型犬や、柴犬や甲斐犬などの日本犬、雑種の子も災害救助犬として活躍しています。
地震などの倒壊家屋での捜索を行う災害救助犬たちは、指導手1名と共に行動し、3頭3名+隊長が1チームとして捜索をします。1匹の救助犬が行方不明者発見の反応を見せたら、別の救助犬にも同じ場所を確認させ、2匹が同じ場所で反応をしたら、消防・警察・自衛隊などにその位置を知らせ救助作業を要請します。
山での行方不明者捜索では、捜索範囲が広くなるため偵察班と確認班に分かれます。まず、偵察班が先に簡単な捜索を行い、救助犬が何かしらの反応を見せた場所に目印となるものを付けておき、その場は丹念に捜索せずどんどん先へ進みます。
その後、確認班が偵察班の残した印のある場所だけを集中して捜索します。
2班に分かれることで、救助犬の体力消耗を防ぎ効率的に捜索をすることができます。
人だけでは時間のかかる捜索を、災害救助犬と共に行うことで、短時間でより効率的に行方不明者を発見することが期待できます。雪山での遭難になると一刻を争う事態です。急を要する捜索であればあるほど、災害救助犬が活躍する場なのではないでしょうか。
まとめ
犬たちは家族としての存在だけでなく、人の命を救う存在として、なくてはならないものへと変わってきています。人と犬との共存の形が、より濃いものへと変わっていることは喜ばしいことではないでしょうか。
つい先日、センターから保護した犬たちを、災害救助犬として育成する団体の記事を読みました。
捨てられた子が人の命を救う犬として活躍する姿に、保護犬の大きな可能性を強く感じずにはいられませんでした。
災害救助犬が多くの人へ認知されることで、その育成にも注目が集まり、保護犬を災害救助犬として育成する取り組みも広がるのではないかと思います。
犬の可能性は無限大です!
今回の記事は自衛隊による災害救助犬の育成についてですが、民間の団体での育成ももちろんあります。
民間での育成として1つ気になることが、迅速な発見が期待できる救助犬ですが、民間の団体での現地捜索は早い段階ではできないことがほとんどだと予想されます。
足場が悪く、地震による震災の場合は余震にも備えなくてはいけないため、どうしてもある程度落ち着いてからでないと捜索ができません。これでは迅速な捜索どころか、現場入りもできないため災害救助犬の働きを生かすことができません。
そこで自衛隊と民間訓練団体との連携が必要になってきます。
自衛隊での訓練にも限りがありますし、そこへ民間の団体から訓練された犬たちが自衛隊と共に最前線へ行くことで、迅速な捜索活動を行うことができるのではないかと思います。
もちろん犬たちの安全を確保する仕組みも、今後しっかりとできることを期待したいです。